短編2
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肉だるま

 『猟奇エロチカ 肉だるま』というやらせスナッフビデオに出演している女優がいた。その名を大場加奈子、25歳だった。本職はコンピュータプログラマーで、酒が大好きで下北沢を一人で飲み歩くのが日課だったという。

 そのビデオ内容は、彼女が普通のAVに出演するという設定の撮影現場のドキュメントを描くシナリオになっている。だが、初めてのAV出演にSMとスカトロを要求されてしまう。彼女はこれを強く拒否したため男優達にバットで殴り倒されてしまう。頭が割れて血まみれになり、虫の息のままレイプされる。そして男優達は、瀕死の彼女の手首や足首をナタで切断していく。

絶叫と骨が折れる音があいまって頭がおかしくなりそうになる。肌が切り裂かれ血が噴き出し。内蔵があらわになった。彼女は、昏倒状態から目を覚まし、「どうして? どうして?」と、切断されて、存在しない手足をばたつかせる。男優達は、彼女の絶望を無視して、舌を切り落とし腹をかっさばいて内臓をぶちまけた。そして、最後に彼女の顔面を真っ二つに切り裂いてビデオは終わる。

 さて、こんな凄惨なビデオに出た大場加奈子だが、1999年3月6日深夜、ビデオが発売される前夜に、下北沢駅の踏切で電車にはねられ、文字通り、肉だるまのようにバラバラになって死んでしまったのだ。

 関係者の誰もが彼女の本名を知らず、彼女の親族が連絡してくることもなく、雑司ヶ谷霊園に無縁仏として眠っているという。これらのエピソードによって「観た人間は呪われる」という都市伝説が醸成され、ビデオを観た人からは、体調不良、体の痛み、病気等の報告が絶えないという。

 彼女の一周忌には、撮影用の衣裳に着替えようとしたAV男優のスーツケースにあるはずもない喪服が入っていて、その後、その男優は三日三晩高熱が続いたという。また、翌年の命日には、ある現場で置物の女の子の人形が落ちてきてバラバラになり、その人形を片付けたスタッフが直後に交通事故に遭遇するという事件が起こった。

 大場加奈子を知る関係者によれば、自殺直前の彼女は悲惨な状態であったという。元々、単体を張れるような美人でもなかったためハードな撮影が続いていて、ギャラも低かった。また、地元の友達にAV出演がバレて精神的におかしくなっていたようで、そうした状況で『肉だるま』のような撮影現場に送り込まれ、耐え切れなくなったのだろうか。

 因果関係はわからないが、AV女優は、精神的にも肉体的にもすごくダメージが残る職業であり、不審死を遂げたAV女優の怨念は非常に恐ろしい。制作スタッフやAVファンに相当な恨みを持っている可能性が高いので、その怨念だけが現世に永遠と留まっているとも考えられる。

 ちなみに大場加奈子の名前の由来は、「大バカなコ」からきているという説がある。

怖い話投稿:ホラーテラー おっさん  

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