珍しく平日に休みを貰った俺は、朝から近くのAVショップに向かった。
レンタルショップで一般客に混ざってAV借りる勇気の無い俺は、この専門店をよく利用する。
しかも平日の午前中に他の客などおらず、貸切り気分を味わっていた。
王道の美人女優物より、無名女優の企画物の方が好きな俺は、最新作が並ぶ棚を素通りして奥へ進んだ。
お目当ての棚にたどり着くと、目を引く作品を手に取り物色し始めた。
スッと、俺の隣に来た奴がいる。俺は眉をひそめて、そいつをチラ見した。
細かい横縞のポロシャツに、サスペンダーでズボンを吊ってるおデブちゃんだ。
他の客がいた事に驚いたというのもあるが、専門店とはいえ極力人の目に触れたくないのが心情だ。
だからガラガラの店内で、敢えて人の隣に来る奴の神経を疑った。
俺はこの棚を後回しにすることにし、他の棚に河岸を変えた。
しばらくすると、またそいつが隣にやって来た。
俺は完全にイラッと来て、そいつの顔を横目で睨んだ。
色白で妙にツヤツヤの肌。不精に伸びたストレートヘアに白髪が混ざっている。
その様子からは、年齢が全く予想できなかった。
そいつは半開きの口から舌を覗かせ、棚をガン見している。
ハアハアと息は漏れてるが、一向に棚に手を伸ばそうとしない。
目を見開き、まばたきもせず、ひたすら棚をガン見している。
こんな奴と嗜好がかぶるのかと思うと、ゲンナリして急激にテンションが下がった。
俺は恨めしさを込め、そいつを睨み続けた。
相変わらずガン見を続けている。いい加減まばたきしないと目が乾くだろ、と思っていると、
そいつは自分の目ん玉を、ベロンと舐めた。
手に持ったSODの女子社員物をそっと棚に戻し、俺はその場を静かに離れた。
何食わぬ顔で店を出ると、速攻で家に帰り布団を被って寝た。
夢だったことにしよう。
怖い話投稿:ホラーテラー うしらんさん
作者怖話