中編3
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ガイド寮の開かずの間

これは中部地方の観光会社のガイドさんの寮の話。 今から15年前だ。

この会社に田舎から出て来てガイドさんになったAさんは、入社して一年間は寮に入る規則だったのでバスの車庫と同じ敷地にある寮に入った。

この寮は何十年も前からの建物に新しく増築し、ちょうど半分が古く半分が新しいという実に不公平な部屋割りとなっていた。

ありがちだが、この寮にもいろんな霊現象があった。 完全男子禁制になっているにも係わらず、男が立っていたとか。 入り口は一階は事務所で人もいるし、車庫には夜遅くまで人がチョロチョロしているから、なかなか侵入が難しくなっているし、 非常に厳しい寮の規則で、誰かが招き入れる事もなかった。

Aさんは仕事の辛さもさりながら、人間関係でも悩んだという。 まず上下関係が厳しく、先輩はキツい人が多い。

その当時はガイドが不足気味でいろんな輩が入社してくる。とにかく人種のルツボだった。

当然いじめもある。嫌がらせもあるが、普段客相手に擦り切れるほど神経を使うストレスのせいもあったのだろう。

Aさんが入社2年目の頃、中でも一番キツい先輩とバス二台で仕事に行く事になった。 すごく嫌みな先輩で、ちょっとした嫌がらせもしてくる。

Aさんは九州出身で気が強く、その先輩に言い返してしまった事で、相手もがぜんやり返してくる。そしてケンカになった。 当時先輩とケンカする人間はだれ一人おらず、Aさんは社内でたちまち噂の的になった。

いたたまれない気持ちになりながらも味方になってくれる人もいたから辞めずに頑張れたとAさんはいう。

新年度に部屋割りの変更があるのだが、Aさんは今入っている部屋から一番遠い部屋に割り当てられた。階段を2つ登った一番上の階(4階)のハジの部屋だ。 もちろん古い方。

自分で荷物を移動させないといけないので大変なのと、その階には昔からある開かずの部屋があった。

この部屋割りだが、決めるのは先輩達だった。 Aさんはすぐにピンときた。 あの先輩の仕業だろうと… そしてAさんはこの部屋で怖い体験をする。

この寮の開かずの部屋にはこんな話がある。

Aさんがいた当時はその部屋は、辞めて行った社員の制服などが保管してあり、ほとんど開けられる事はなかった。

かつてはその部屋もガイドの部屋として使われていた。

何十年も昔、一人のガイドが人知れず身ごもった。 誰にも相談出来ず、相手の男ともきっと〈なさぬ仲〉であったのだろう。 (バスの運転手だろうと思うが…)

不思議と臨月になっているにも係わらず気づく人はいなかった。

そしてその部屋で赤ちゃんが産まれた…

しばらく経って押入から赤ちゃんの遺体が発見された。 死産か殺されたかは不明。 きっとどうしていいか分からなかったのだろう。

それからその部屋は使われなくなった。

この部屋だけでなくその階にある部屋(4つ)は怪現象があった。

Aさんもこの話は知っていた。

Aさんが割り当てられた部屋はエアコンは効かないは、道に面しているため暴走族がよく爆音を立てて夜眠れない。 そんでもって朝は早い。 夏はクーラーが壊れてさらに眠れない夜が続き、体調まで崩してしまった。

そしてある夜、やっとの事眠りに落ちそうな所で金縛りにあってしまった。

この寮では金縛りくらいは当たり前に起きることを聞いていたのと、ただ金縛りだけだったので、気にもしなかったそうだ。

ところが、何度か金縛りに遭ううちに何かが聞こえて来た。

オギャア オギャア

赤ちゃんの泣き声が聞こえて来て何かが上に乗っかっている…

裸で全身血まみれの赤ちゃんだった…

Aさんは、寮を出て一人暮らしをする事にした。 寮にいた方が経済的という理由でとどまっていたのだが…

それでもAさんがいうには、その赤ちゃんよりも人間関係の方が辛かった。 特に寮生活はまるで《大奥》の世界だった…

その後Aさんは退職したが、今でもあるみたいだ。 その寮。

終わり

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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