短編2
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形見

 津波で甚大な被害を受け仮設住宅に住んでいる方にどうしてもという事で祖母は東北へ行って来ました。

祖母(以下ばあちゃん)は昔から見える人で最低限の経費と謝礼(三千円くらい)で拝み屋みたいな事してます。教師退職後

 妹夫婦が津波で亡くなり、学校に行ってて生き延びた息子に会ってきたそうです。

 現実をまだ受け入れていないようで涙を一切見せず気丈に振る舞っていたそうです。依頼者はそれが不憫で辛かったそうで、昔からの知人のばあちゃんを呼んだそうです。

 津波に流され何もかも無くなって、遺留品も全く見つからない状態な現地。

ばあちゃんは他にも助けを求めたり、寄っていくる霊を避けながら両親の形見を捜し出しました。失せモノ探しっていうらしいです。

思いが一杯つまったものしか見つからないそうですが……。

見つかったのは家族が飼っていた猫の鈴(アクセサリーとネームプレート一体型)と奥さんの使っていた箸の一本と玄関のドアノブ。

ドアノブってのは変わってますが、旦那さんが仕事から帰って来てドアノブを廻す時に奥さんと子供の笑顔を見るのが楽しみで一杯の気持ちが籠もっているそうです。

この事を息子に告げて渡すとワンワンと人目を憚らず号泣したそうです。

息子は叔父にあたる依頼者の養子として育てるそうです。依頼者も奥さんと娘二人を亡くしています。

血縁者2人でこれからやり直すと決め、いつか新しい家を建てて玄関にはこのドアノブを付けるってのが願いだそうです。

鈴はばあちゃんの勧めで御守りにしてもらい、箸は一度神社に収めて供養してから削って叔父さんに預けるそうです。何故叔父さんかは良く分からないですけど、叔父さんに持たせるべきと言ってました。

2人には虎柄の太った猫と軍服を来た男前の若い兵隊さんみたいな方が付いてるそうなので安心はして、ばあちゃん帰ってきました。

ばあちゃんは帰ってくるなりすぐに大社に行って、「穢れ」とかいうのを落としに行きました(運転手で同行) 穢れとは亡くなった人達に失礼だと思ったけど、そういう事なんだと叱られましたのでそれ以上は聞いてません。

大変に疲れたそうで、落ち切れていない穢れを落とすとか言って、どっかの山奥にある温泉旅行に旅立ちました。 旅行したかっただけかも

怖い話投稿:ホラーテラー 松葉さん  

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