短編2
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鸚鵡

あるオウムを、一週間程預かる羽目になってしまった。

なんでも、一家心中のあった家で飼われていたものらしい。

少々気味が悪いが、仕方がない。

オウムというもの飼うのは初めてなのだが、こんなに喋るものだとは思わなかった。

「バァカ!このグズ!」

「何で言う事が聞けねぇんだ!」

「ごめんなざいぃ!謝るから中に入れてぇ!」

…などなど、荒んだ家庭であった事がありありと窺える様な言葉ばかりで、まったく気が滅入ってしまう。

オウムが覚える程なのだ、よほど日常的に飛び交っていた言葉なのだろう。

不謹慎だが、これでは一家心中したと言うのもなんとなく頷ける。

中でも、一際強烈な印象を受けた声真似があった。

「ママと一緒に天使様の所へ行きましょうねえ」

その言い方の優しさがまた、他の怒鳴る様な声と違い、妙に生々しい。

こんな言葉を日常的に子供が聞かされていたなどとは、考えたくもない。

まさかこれは、母子が首を括る直前のやり取りの記録なのだろうか。

そう考えるとオウムへの気味悪さは極まり、私はそれ以来別の部屋に鳥籠を移した。

一週間が経ち、オウムを返す日がきた。

私は預けた主に、恨み言ついでに、オウムが喋った事を語った。

初めの内は苦笑しながら聞いてくれていたのだが、例の一言について話した途端、急に顔を青ざめさせた。

無理もない、私もそれ以来気味が悪くて籠を移したんだ、と語ると、相手は首を横に振り、こう言った。

「だってそこの一家、父子家庭だったんですよ。母親なんていませんよ」

その後、そのオウムをどうしたのかは、聞いていない。

怖い話投稿:ホラーテラー みさぐちさん  

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