中編3
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じぃちゃん

俺のじいちゃんの地方では、死んだ時にお棺に小銭を入れて、一緒に焼く風習があるんだ。

で、出棺の時に小銭を貰って、お守りとして身に着けるのね。

俺の親父も、亡きじいちゃんと焼いた小銭は今でも持ってる。

で、じいちゃんが死んで二週間くらいしてから、俺は海外に長期滞在が決まってたわけ。

「じいちゃんも連れて行ってやるからな」

みたいな気持ちもあって、焼いた50円玉に紐つけて、財布にくくってたのね。

シドニーに住んでたんだけど、楽しくて刺激の多い毎日だったよ。

友達も彼女も出来た。みんな俺の50円玉見て。

で、話をすると気味悪がったり興味深々だったり、まあ話のネタとしてはまあまあだったかな。

で、向こうで知り合った友達と、ある日買い物に行ったのさ。

結構大きな買い物 する予定だったので、財布には1000オーストラリアドルくらい入れてたのよ。

ところがそいつを電車で落っことしたらしく、目的地に着いた時は一文無しだったわけ。

キャッシュカードや身分証明書も入ってたし。

明日からどうすればいいかもわかんなくなって、激鬱のまま電車賃借りて、一人でショボーンと帰ったわけよ。

当面の生命線として、友達から200ドルくらい借りた。

けどそれっぽっちじゃどうにもならんから、やけになってバーで深酒して、ゲロりながら深夜帰宅。

「あー、鬱だ」って思ったよ。金もそうだけど、じいちゃんとの最後のつながりが消えたことが一層気分を悪くしたね。

もう寝ようかと思って電気を消したら、留守電にメッセージが入ってるランプが点滅してたのね。

メッセージの主は警察だったわけだけど、「お前の財布が届いてるから明日取りに来い。」って入ってたのよ。

狂喜乱舞したね。地獄に仏だったよ。

とりあえず出頭して、中身の改めも終わって、いざ財布を返してもらう段になって気付いたんだけどさ。

50円ねーのよ。紐ごと無くなってる。

1000ドルも免許証もカードも全部揃ってるのに、50円だけ無いの。

警察に言っても「んなもん無かった」って言われるだけ。帰り際に警察の人が

「届けてくれた人だけどな、お前の免許の写真見て、同じアジア人同士ほっとけ無かったんだろうな。

アジア系の爺さんが届けてくれたよ。言葉もわかんなかったけど、すぐに返してやれみたいな

事しつこく言ってたぞ。身元を聞いても、ノーイングリッシュとか言って教えてくれなかったがな。」

と、届出当時の状況を教えてくれた。

後日その事を友達に話したら

「お前はシドニー1のラッキーガイだ。そんなジェントルマンは、俺もお前もこの先二度とお目にかからんだろうよ。」

って、感心しながらしきりに言ってた。

ちがう。アレはじいちゃんだ。

「お前は早速俺に仕事させやがって。もう今度は助けんからな!しっかりしろ!」

とでも言いたくてきっと50円とって帰ったんだと思う。

身代わりになってくれたのかな?

今頃シドニーでノーブラ娘に鼻の下伸ばしてんだろうなぁ。また行くからな!

怖い話投稿:ホラーテラー pepikoさん  

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