中編5
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犯人の素顔

 心霊話ではありません。

こういった内容の投稿をすると、恐らく賛否両論分かれて、あるいは

私が非常識だと言う方もいらっしゃるかもしれません。読んでいる方に

不愉快な感情を抱かせる内容かもしれませんので、ご了承の上、お読み下さい。

 

 皆さんはもし、自分の大切な人がある日、突然なんの落ち度もないのに

誰かの手によって殺されてしまったら、どうしますか?

 私だったら犯人を自分の手で八つ裂きにしてやりたいと思う。

現実的に自分の手で誅することができなくとも、犯人の死刑を望むと思う。

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ご記憶の方も多いかと思いますが、1999年に山口県光市で主婦とその子供が

無残に殺される事件が起こりました。

 当時、18歳だった犯人の少年に対して様々な報道がされましたよね。

 犯人はその後死刑が確定しましたが、果たして彼の本当の素顔とはいかなる

ものだったのでしょうか?

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 当時、私がおつきあいしていた女性は、恐ろしく霊感が強い人でした。

彼女がそれまでに体験した心霊話をよくねだっては聞いていたのですが、

その日の会話もそんな流れの延長線から聞いた話です。

 「そういえばさあ、昨日、例の母子殺人の裁判あったってニュースで

やってたじゃん?なんかドラえもんが助けてくれると思ったとか、意味不明な

陳述したりしてさあ。さっさと死刑にしてやればいいじゃんね。あんな事件

起こすヤツはそこいらの悪霊よりよっぽどタチが悪いよね」

 ファミレスで食事をしながら何気に昨夜のニュースを思い出した私は、

そんな風なことを彼女に言った。彼女はチラッと私を見た後、テーブルに

目を落とし、ため息をついた後、一呼吸おいてからこう言った。

「私ねえ、あの事件起こした子と、事件の半年くらい前に、二人きりで

 会ったことあるよ。この店で」

 そんな話、全くの初耳である。

「え?どうして?どんな経緯であの事件の犯人と会ったの?」

彼女と事件の犯人との接点がわからずに、私は彼女に質問した。

 彼女の説明によると、犯人は犯行以前から、かなりの素行不良で地元では

有名だったらしい。そんな彼の周囲にいた、つきあいのある何人かの友人の

中に彼女と顔見知りの人がいて、友人として彼の行く末を本気で心配

しており、なんとか犯人に立ち直ってほしかったようだ。

 その友人は、面倒見がよく不思議な力というか説得力を持つ彼女に、

彼を一度、諭してほしいと依頼してきたそうだ。

「私としては気乗りしなかったんだけどね。なんか嫌な予感したから。

 でもその友達の子が真剣に私に頼んでくるもんだから、じゃあ、力には

 なれないかもしれないけど、会うだけ会いましょ、ってなったのね」

時としてタチの悪い悪霊すら調伏してきた彼女である。タチの悪い人間にも

彼女なら通用するかもしれない、と判断したその友人の選択は、ある意味

間違っていなかったかもしれん、と私は内心思った。

「で、実際に会って話してどんなやつだったの?」

「う~ん、言いにくいんだけど・・・もう完全に手遅れだって思ったね、正直。

 私、30分もしないうちに席を立ったもん」

「なんで?」

「あの犯人の子はねえ、人の話に耳を貸さないってのもあったんだけど、

 女性を見る判断基準がね、根本的に狂ってたんだよね」

「どういう風に?」

「つまりね、道を歩いていて前から女性が歩いてきたとしたら『こいつ

 は俺のセックスの対象になる・ならない』っていう目ででしか見れない

 のね。それ以外の価値観が見事に無かったんだよ。まあ、あの子はかなり

 複雑な家庭環境で育ったみたいだから、仕方ない部分はあったのかもしれ

 ないけど、それにしても人間、ここまで歪むものなのか?って思うくらい

 ひどいもんだったよ」

 「え~!なんじゃそら?じゃあ、二人で話してる間も、そういう目で

  見られてたってこと」

 「まあ、そうだね。『こいつ、うるさいこと言わなきゃ俺の対象になる

  のに』って顔に出てたよ。もう、そこまで歪んでる人間相手に何を話し

  ても通用しないから。だから話を切り上げて帰ったわけ。

  帰ってから、犯人の子の友人に『悪いけどあの子は私の力じゃどうする

  こともできないから』って一応、謝りの電話はしたけどねえ」

犯人が事件を起こしたのは、彼女と面談?してから半年後だったという。

自分の内なる欲望をそれ以上抑えることができなかったんだろう。

 遠からず、そういった性犯罪を犯す予感を感じていた彼女は、事件を

知って、多少なりとも犯人に縁した人間として、心を痛めたそうだ。

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 彼女から聞いた犯人の素顔が彼の全てではないかもしれない。

その上での私の個人的な所感だが、どんなに周囲が手を差し伸べても

矯正が不可能な人間は世の中に少なからずいるのだ。

 (もちろん犯人が育った環境に同情すべき点はある。だが同じような

  環境で育った人間が必ず犯罪者になるかと言えばそうではないと

   思う。本人が持って生まれた資質によるところが大きいのでは

   ないだろうか?)

 

法をもってしても、あの犯人を矯正させる術はないのではないだろうか?

悪霊が善霊に変わることが、ほぼ無いのと同じように。

(人間の魂っていう観点で見たら、同じですよね、生きていても

 死んでいても)

 幽霊よりも生きている人間の方が怖いとはよく耳にするが、事実として

そのような人間が存在するのは確かだ。

 それに比べたら、不用意にこちらから近付かない限り害してくることは

まずない、怪異の類の方がまだマシなんじゃないかとさえ私は思う。

 個人的には過去、3本の指に入るくらい背筋が寒くなった話なので、

投稿しました。

 お目汚しお許し下さい。

おしまい

 

怖い話投稿:ホラーテラー だが、それがいい!さん  

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