中編3
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祖母のエメラルド

怖くはないです。ちょっと不思議な話です。

母方の祖母の形見分けをするというので、私は母と一緒に本家の伯父の家に行った。

祖父は現役のころ仕事の関係でトルコに住んでいたのだが、そのころにいろいろな物を

祖母にプレゼントして、中には結構いいものがあるらしい。

祖母は一男三女を産み、私の母は長女である。

母は祖母のエメラルドの帯止めを貰うつもりでいた。

エメラルドの帯止め?そんなものあった?

私がそう言うと、母は「○子は覚えていないの?小さい時にお気に入りだったじゃない。

おばあちゃんが着物を着ていた時にいつも綺麗と帯止めをさわっていたのよ」

母に言われ思い出した。

あれがエメラルド?ずいぶん大きい石だったけど・・

当時は幼かったからもちろん宝石という概念もなかったと思う。

多分、綺麗な緑色のガラス球だとしか思っていなかった。

祖母が着物を着るとおなかのあたりに緑色のキラキラ光るガラス球があり、

私は祖母にべったりつき、そのガラス球を触っていた時のことを思い出した。

大人になって少しはその価値もわかる。エメラルドはもろいので大きな石は高価なものだと聞いたことがある。

しかし気になることがある。

そのエメラルドの帯止めには女の人の顔の模様があった。

母の持っていたカメオのブローチと同じような模様が・・・

母にそれを言うと、そんな模様があるはずないじゃない。

きっと良く光るので、それを見ていた○子の顔が映っていたのよと笑われた。

それもそうだ、もろいエメラルドにカメオのような彫刻がしてあるはずないし、

そんなエメラルドは見たことがない・・・・

本家に着くと、叔母たちも来ていた。

祖母の着物や宝石類を見ていたのだが、母の目当てのエメラルドの帯止めは出ていなかった。

母は祖父に帯止めはどうしたのか訊いた。

叔母たちも思い出したようである。

あの大きなエメラルドはどうしたの?と母と一緒になって訊いている。

元の持ち主に返した。

祖父がそう言ったものだから、一同びっくり。

どういうこと?元の持ち主って?

祖父は、「あー・・だからなー・・・」と言うだけで要領を得ない。

伯父が代わりに説明をしてくれた。

2年前、家にトルコから人が訪ねてきた。

その人は、トルコの貴族の末裔の人に依頼された代理人と名乗った。

そのエメラルドはもともとその貴族の家が代々守ってきていた家宝だったが、盗難に遭い

ずっと探し続けていた。

ようやく探しあて、遠い日本までやってきたとのこと。

まるで小説か、映画のような話である。

祖父も、伯父もにわかには信じられなかったが、祖母が言った。

このエメラルドには「アムレリ」って女性の名前がついていないかと。

その代理人はびっくりして、何故そのことを知っているのか?と訊いた。

祖母はある日、エメラルドの中に女の人の顔を感じた。(見たわけではない)

その人が、家に帰りたいと言っている気がしてずっと気になっていた。

アムレリと言う名前もその時に感じたそうである。

大丈夫、きっと帰れる。帰してあげる。

祖母はエメラルドにそう言い聞かせていたらしい。

そうは言っても、夫がプレゼントしてくれた大切な物だし。この年になってトルコまで行くのは無理だし・・・

でも、なんとなくこれはきっとまたトルコに帰るんだろうなと感じたそうだ。

そういういきさつで、エメラルドはあっさりとトルコに帰っていった。

もちろん、相手はそれなりの金額を提示したのだが祖父も祖母も買った時の値段でいいと

40年以上前の金額でOKした。それでもその当時なら一軒家が立つ値段らしいが・・

後日、トルコから立派なペルシャ絨毯が送られてきた。

10畳の和室に不思議としっくりなじんでいるこの絨毯。

伯父の話しを聞き終えた一同は、もったいないやら、いわくつきの宝石だったのやら、

こっちの絨毯の方が高いのかもとうるさく騒いでいる。

母は私に、○子が見た女の人ってアムなんとかさんだったんじゃ・・とささやいた。

そうかもしれない。不思議と怖い感情は生まれてこなかった。

家に帰れてよかったねと思った。

二度とお目にかかる代物ではないと思うが、なぜかあのキラキラ光る緑色の石に

また会える気もした。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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