中編4
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稚内の祖母

小学校の5年生頃から、中学3年の途中頃までの時期、

私は北海道の稚内にある祖母の家に住んでいました。

ただ、正確に言うと、なぜかその頃の記憶が全くないので、「住んでいたらしい」のです。

中学3年の途中から、再び京都の両親と一緒に暮らすようになったのですが、

あとで当時の事を聞いても「稚内のおばあちゃんの家に居たんだよ」としか教えて貰えず、

また、私自身もなぜか判りませんが、敢えてそれ以上は詮索して聞くようなことをしませんでした。

そして高校を出て大学に行った翌年、諸々の事情で両親が離婚。

私は母親に引き取られました。

稚内の祖母は、母親の母親「らしい」のですが、

京都に引っ越してきて以降は、まったく行ったこともないし

連絡をした記憶もありません。

母親との話題にすら上がりません。

更に言えば、小学校5年までの時期も京都に居たのですが、その頃も一度も祖母と連絡を取った記憶がありませんでした。

そして2年前、私が33になった頃、母親が病気で死亡しました。

当時は私自身も仕事があまりうまくいっておらず、忙しくて体調を崩しがち。

母親の死去も重なり、ついに心労で退職することにしました。

退職して次を探す間、若干の貯金はあったので

次の勤め先を探しつつ、かねてから気になっていた北海道へ旅行することにしました。

気分転換も兼ねていましたが、本当の目的は祖母の家。

元々、母親や親戚付き合いも希薄だったので、尋ねようにも、私が場所・連絡先を把握できている親戚が他にいません。

母親が生きていればまだ何とかなったのでしょうが、遺品の住所録などを見ても、親戚らしき名前はありませんでした。

(私が知らないせいもあり、おぼろげな記憶の名前と、母親の苗字で見当を付けただけ)

かといって、離婚した父親はもうあてにもならず…

母が亡くなった後で、家中を探して見つけた、稚内在住当時の住所と祖母の名前を見ながら

地図などを頼りに、それらしき場所へ辿り着きました。

・・・家が建っていた痕跡はありましたが、取り壊されて土台だけになっていました。

土台の汚れ方や草木の生え具合を見ても、かなり前からこの状態のようです。

当然、家財道具とかは何も残っていませんでした。

このままでは、北海道まで遙々来た甲斐もないし、納得もできません。

見回した所、すぐそばでもありませんが、

50m位先に隣家が見えたため、意を決してその家を尋ねてみました。

「こんばんは。○○と申します。20年位前にあの家に祖母と住んでおりました。」

正直に言えば、私自身が住んでいた記憶がないので、ハッタリでの訪問でした。

少しすると、家人らしき70歳近い夫婦が出て来ました。

「あの家に居た○○(祖母の名前)の孫ですが、今はどちらに行ったかご存じないですか?」

「……?あそこは30年くらい前に取り壊されて、ずっとあんな状態だよ?」

「え?」

「それに、あそこに住んでた人は、なんだっけな…××さんって一家だったよ」

××は祖母の姓名どちらでもなく、全く知らない苗字でした。

そのご夫婦は本当に知らないようなので、丁寧にお礼を言いつつ、私は去りました。

結局、それ以上は現地に居ても何も判らなそうなので、札幌などを数日旅行して京都に戻りました。

京都に帰った後、気になってネットなどで調べた探偵事務所に連絡を取って、

私の稚内時代の事について調べて貰い、しばらくして報告を聞きに行きました。

すると…

確かに私は稚内に居住していた時期がありました。

小学校・中学校時代の恩師はまだ御存命で、当時の記録をまだ所有していて名前が残っていたそうです。

(さすがに覚えてはいなかったとの事でしたが)

更に、私の同級生まで探し当てて、確かに当時同じクラスに居て、一緒に遊んだ記憶などを聞き出して貰いました。

不思議だったのは、住んでいた家。

どうやら、あの現地で見た廃屋と、老人ご夫婦が居た隣家のは、偶々だと思いますが住所が同じ。

そして、あのご夫婦の内、お婆ちゃんのほうは、私の祖母の10歳近く年下の妹にあたるそうです。(嫁いだのか、苗字は変わっていました)

当時の同級生複数の話からは、あの隣家と思っていた家のほうへ遊びに来たという証言が取れたそうです。

肝心の祖母は、既にずっと前に脳溢血で倒れて死去していたのですが、亡くなったのは私が小学校1年の頃。

しかも、その家はあの廃墟。

「?」

今迄聞いていた話と辻褄が合いません。

30年前に居たのなら、なぜあの時に言われなかったのか。

当時の面影がないのはしょうがないですが、自分の名前と祖母の名前を名乗ったのに関わらず…。

失礼ですが、喋りもはっきりしていたし、ぼけてはいないようでした。

なにより、なぜ私自身が全然記憶にないのか。

探偵事務所の方から、関係者の連絡は幾つか掴んでいるからお伝えしますかと言われましたが、

連絡しても、色々な気まずさがあるように強く感じて、辞退しました。

半年後、新しい職場に勤め始めて今に至ります。

以前に母親から独立して住んでいた賃貸マンションは引き払って、亡き母親と一緒に住んでいた家に今も住んでいますが、

釈然としない出来事でしたので投稿致しました。

怖い話ではなく、良く判らない話かもしれません。

最後まで読んで頂いた方には感謝致します。

有り難う御座いました。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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