中編4
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トランスフォーマー

小学生のトモキは、トランスフォーマーのオモチャが大好きだった。

しかし、高価なために、めったに親に買ってもらえるような代物でもなく、オモチャ屋でもらったカタログを毎日穴があくほど見つめては、いつかは手にできる日を夢見ていた。

その中でも、電車からロボットに変形し、さらに5体が集まって巨大になるロボットが大のお気に入りだった。

ある日、友達に誘われて、同級生のマコトの家に遊びに行った。

そこでトモキは、みんなと遊びをはじめるなり、目を丸くした。

あれほどまでに憧れ、恋い焦がれていた5体合体の巨大ロボが目の前にあるのだから。

『これ、どうしたの?』

『このあいだの誕生日に買ってもらったんだ』

『ちょっと持ってもいい?』

『いいよ』

巨大ロボを手にしたトモキは心底感動した。

両手に余るほどの巨大感、振り回すことも困難なほどの重量感、精密なディテール、緻密な合体・変形機構…

そのどれをとっても、自分の想像をはるかに越える圧倒的な存在感を放っていた。

トモキは夢中になって遊んだ。

トモキもいくつかトランスフォーマーのオモチャを持っていたが、今、手にしている巨大ロボの魅力には到底かなわなかった。

しばらくすると、みんな家の中の遊びに飽き、ひとりまたひとりと、ベランダから外へ出て、庭先の砂場で遊び始めた。

気づくと、家の中にはトモキひとり。

そのとき、トモキの心に、ある出来心がよぎった。

『どうしても欲しい。盗んでしまおうかな』

トモキに沸き上がった欲望はあまりにも強く、良心は一瞬で吹き飛んでしまっていた。

しかし、さすがに大きすぎて、盗むには無理がある。

トモキは5体の中でも、SLに変形するロボットがもともと大好きで、巨大ロボの右足になっているそいつの合体を解くと、ポケットに忍び込ませた。

そして、砂場で遊んでいるみんなに『お腹が痛くなったから帰る』といって、その場から逃げ去るように帰った。

しかし、家に帰ってから、強烈な罪悪感がトモキを襲った。

『バレたらどうしよう』『明日学校で会うの嫌だな』『でも、もし何か言われても、間違って持って帰ってきちゃったことにしようかな』

次の日、学校に行ったトモキは、マコトに何か言われるのではと、少々びくついていたが、意外にもマコトの方から普通に接してきたので、『もしかしたらバレてない?アイツ、オモチャいっぱい持ってるしな』と安堵した。

そのまま平穏な日々が続く中、トモキは意識的に平静に振る舞おうとする一方、無意識的にマコトを避けるようになっていった。

ただ、オモチャ箱を開けるたびに、あのロボットが目に入り罪悪感が沸き上がってくるのには耐えきれず、ある日、そのロボットを家の裏に持っていき、踏みつけて粉々にしてしまった。

月日は流れ、トモキたちは1学年進級。クラス替えもあって、トモキもマコトも新しい友達と遊ぶようになっていた。

ある日、トモキは新しい友達に誘われ、放課後、その友達の家に遊びに行く約束をした。

その家はマコトの家のすぐそばにあった。

マコトの家にはアレ以来行っていない。

家に近づくにつれ、忘れかけていたあの罪悪感が少しずつ蘇って来る…

『な〜に。もう1年も過ぎたし、マコトも忘れてるに違いない。そもそも時効、時効』

まとわりついてくる嫌な予感を振り切り、友達の家に向かうため、道路を横断しようとした瞬間!!

ガッシャ〜ン!!!

トモキは後ろから迫ってきたトラックに轢かれてしまったのだ!

トモキに意識はあった。

しかし、下半身を車体に巻き込まれたらしく、強烈な激痛がトモキを襲った。

とりあえず身体を起こそうとした、その時、気付いてしまった。

右足の膝から下がない!!!

傷口から鮮血がほとばしり、アスファルトをみるみる真っ赤に染め上げていた。

トモキは反射的に太ももを両手で締め付けたが、その甲斐もなく、鮮血があとからあとから流れ出ていた。

そこにトラックの運転手が駆けつけると、あたふたと慌てながら『救急車!救急車!』と叫んでいた。

気付けはどこからともなく野次馬が現れ、人垣を作っていた。

『ぼくの足、ない!どこ?どこ?』

その叫び声に野次馬が一斉にトモキの千切れ飛んだ右足を探し始めた。

野次馬の人垣が崩れた時、トモキの目に一瞬、見覚えのある姿が目に飛び込んできた。

マコトだった!

道路から見える位置にある、自分の家の庭先に立っている。

その手には見覚えのある靴…いや、右足がぶら下がっていた。

野次馬はまだマコトの存在に気付いていない。

次の瞬間、マコトが口を開いた。

15メートル程も離れているはずなのに、トモキはマコトが発した言葉をハッキリと聞き取ることができた。

『やっと返してくれたんだね』

マコトはニヤニヤと笑ったかと思うと、右足を地面に落とし、土煙を巻き上げながら、鬼のような形相で何度も何度も踏みつけた。

トモキは意識を失うまでの数十秒のあいだ、その光景を黙って見ていることしか出来なかった。

☆暇潰しに久々に投稿してみました。あいかわらず荒れてるようですね?ここのコメント欄は荒しても何してもぼくはいっこうに構いませんが、ほかのユーザーさんを傷つけるようなことはやめてもらいたいものですね☆

怖い話投稿:ホラーテラー 久々に来てみた三流投稿者さん  

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