中編6
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あみだくじ

こんにちは、かつをです。

怖く無いし落ちも無い、そして無駄に長いただ不思議な体験だったので、ここに投稿します。

なので読み飛ばしてもらっていいです。

私は毎年夏の終わりになると有る事を思い出す。

今日はその有る事を話そうと思う。

その日は夏と言うには遅すぎる、秋の始まりにしては暑過ぎる、そんな日だった。

当時小学生だった私はその日隣町のその先に有る従兄弟の家に一人で遊びに行こうと急に思いついた。

隣町と言っても、実際には田舎の駅で二駅半、車で30分子供の足で2時間半はかかると言う距離に有り、ちょっと考えれば無謀な試みだと言う事はわかるのだが、当時の私は、まぁまぁのバカと言うか向こう見ずな性格だったので深く考えずに実行に移してしまった。

最初は、テンションも高く順調に歩き続けた私だったが、だんだん飽きて来て目的の3分の2程来た頃から流石にバカな私でも辞めときゃよかったと、後悔し始めていた。

しかし、元来た道を戻るには遠くまで来てしまっていたし、逆にこれからの道を楽しみながら進んでやろうと私は暇潰しの遊びを思い付いた。

その遊びとは、あみだくじの様に道を進む言わば人間あみだくじ、もしくはあみだ道路とでも呼ぶとしようか。

とにかく楽しみながら目的地にもつける一石二鳥の遊びだ。

しかし、目的地の逆を行ってしまっては仕方が無い、ルールを決めよう。

ルール1、進行方向と逆の道は行かない。

ルール2、十時の交差点は枝を倒して枝の先が向いた方向へ行く。

私は早速そのゲームを始めた。

右の道へ、左の道へ、そしてまた右…と言った具合に続けて行くと山の方へと続く道に差し掛かった。

その道は、逆方向では無いが全く進行方向に向いていないわけでも無い道だった。

私は少し迷ったがルールという物は守る物と子供ながらに思いその道を進む事にした。

その道はずっと山に伸びていて、いくつかの分岐点をあみだに則り進んで行くと、30分程歩いただろうか少し開けた、広さにして25mプール位の広場があった。

其処には誰もいなくて、真ん中にぽつんと回旋塔が建っていた。

何故この様な場所に遊具が一つだけ有るのか不思議に思うよりも、小学生の私は遊具を独り占め出来るとばかりにその回旋塔に駆け寄り、くるくるとぶら下がって遊び始めた。

ひとしきり遊んだ私は何時の間にか夕方になっていた辺りを見渡し、急に不安になった。

辺りは夕焼けの色に染まり山も木も地面も全てが焚き火の様なオレンジ色で何処か現実とは思えない様な不思議な光景に私はより一層不安を感じたのを覚えている。

その時私は不意に回旋塔の裏に小さな道を見つけた。

何で今まで気付かなかったのか不思議だったが、あみだの途中で有る事も思い出し、私はその道へと足を踏み出した。

その道は何と無く下っていたし従兄弟の住む町の方にも向かっている様な気がしていたので私は、少し安心した。

そして、5~10分程歩くとまた少し開けた場所に出た。

今度は遊具では無く小さな鳥居があって側には小さな狛犬が据えてあった。

鳥居の向こうには掘立小屋?みたいなのが有りどうやら道はここで終わりの様だった。

私は夕焼けに染まる狛犬や鳥居を見てものすごく不安になり、また素直に従兄弟の家に向かえば良かったと今更ながらに後悔していた。

その時、不意に後ろから声が聞こえた。

「あらあら、あなた一人?こんなところに一人で来てはダメよ。」

私は驚き振り返ると其処には着物を着た綺麗なおばさんがいて、優しそうなそれでいて少し悲しそうな顔をしていたのを覚えている。

私は久々に人に会えたことで、安心したのか、泣き出してしまった。

「あら、駄目よ。ここで涙なんか流しては。帰れなくなりますよ。さぁ早く泣くのをやめてお帰りなさい。」

私は何とか涙をこらえると、

「あの、ここはどこなんでしょう?僕は、○○町に行きたいんだけど、迷ってしまって…」

「それは、ずいぶん遠くに来てしまったわね。本当はいけないのだけれど、約束を守れるなら近道を教えてあげてもいいわよ。守れる?」

私は、早く帰れるのならと約束を守ると答えた。

「分かりました。では道を教えるわね。この鳥居の向こうに有る建物は分かる?その建物の裏に獣道が有るの。普段その道は人は通らないから、足元は暗いし石なんかも転がっているけど決して転んでは駄目よ。そして、何かの音や声がしてもそちらを見ては駄目よ。守れる?」

私は黙って頷き、

「おばさんは?来てくれないの?」

と聞きいてみた。

「おばさんはね、この鳥居の向こうには行けないの。それに約束を守れるなら道は一本道だから迷う事は無いわ。さぁ早く行きなさい。日が暮れる前に。」

私はおばさんに御礼を言い何度もおばさんを振り返りながら、渋々鳥居をくぐり抜けた。

そのうちおばさんはぼんやりとして来た気がしたけど、暗くなって来たからかなと思い私は早く獣道に行かなければと、建物の裏に向かった。

私は建物の裏に着くと、背の低い竹でアーチの様になった獣道を見つけた。

ここだな。

私は薄暗くなり始めた辺りを一瞥すると、その獣道へと進んだ。

獣道に入り100メートル程進んだ所で、何やら楽しそうな声がして来て、太鼓や笛を吹くような音も遠くから聞こえて来た様な気がした。

祭りか何かかな?

私は好奇心に負けそうになったが、おばさんとの約束を思い出し何とか前を向き歩き続けた。

そのうち、音も遠ざかり何度か転びそうになったが、気づくと出口が見えて来て其処を抜けた途端私は、その光景に訳が分からなくなり立ち尽くしてしまった。

あんなに暗くなっていたはずなのに其処はまだ一面夕焼け色に染まる見慣れた広場で、確かに従兄弟の住む○○町だった。

何で…?

辺りには秋茜が無数に飛び交い静かに近寄る秋を知らせていた。

私は少しだけ肌寒く感じる町を従兄弟の家へと急いだ。

従兄弟の家に着くと私は先程体験した話を嬉々として従兄弟に話した。

「なぁなぁ、しん!わい、凄い道を見つけたで!○○広場の端っこに有る道抜けたら回旋塔とか有って、祭りとかしてて、優しいおばちゃんおって面白いで!」

私は興奮のあまり支離滅裂な事をまくし立てていましたが、従兄弟は何とか意味を理解してくれ、

「かつを、どうやってこの家まで来たん!?それに、あの広場にそんな道無いよ?」

「嘘ー!だってわい其処からここまで来たんやで!じゃあ見に来てや!」

私はムキになり、従兄弟を連れ広場へ向かった。

私は広場に着くと通って来た筈の道を探し始め、

「あれー?なんで無いん?ここら辺に有ったんじゃけどなぁ。」

私は暫く探していたのだがどうしても道が見つからず、従兄弟の家に戻ることにした。

家に戻ると其処には滅茶苦茶に怒った母がいて、説教をされた。

何も告げず家を出て、そんな遠くにいる従兄弟の家に勝手に行けば当然なんだけど…

しかし、説教の間も私は先程の事が引っかかり上の空で、ずっと別の事を考えていた。

お陰でいつもの倍怒られたが。

後日、従兄弟を誘いその山に登り

回旋塔の広場はみつかったのだが、鳥居の有る所へ続く道は何故か見つからず私は嘘つきと呼ばれてしまった。

あの鳥居はどこに行ったのか、おばさんは誰だったのか、あの獣道で音のする方へ行けばどうなっていたのか分からない事ばかりだが、私はいつかちゃんとあのおばさんにお礼を言いたく思っている。

怖い話投稿:ホラーテラー かつをさん  

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