いわくのない部屋~ジロウ編~

短編1
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いわくのない部屋~ジロウ編~

転勤のため、数年間住み家とした社宅を後輩に継ぐこととした。

彼は家具の配置を考えたいという理由で、来週部屋を訪れることになっている。

そこでひとつ悪戯を思案してみる。

剥がれかけた壁紙の下に自作のでたらめな御札を貼り、彼に発見させる。

「そう云えば夜になると何処からかひそひそ話をする声が聞こえたな……」

などと言えば、臆病者の彼はどんな反応をしてくれるだろうか。

そして当日。

部屋を案内しつつ、仕掛けた御札へと彼を誘導する。

「先輩、あれは……」

すぐに彼は(でたらめの)御札を発見し、苦い顔でそれを私に目で知らせてきた。

私も彼に合わせ驚いた表情を造り、用意した台詞を口にする。

「そう云えば……」

言い終わる前に彼が意外な行動に。

壁紙を一気に一面剥がしてしまった。

そこには私が仕掛けた御札とは似ても似つかない、禍々しいまでのそれが、びっしりと貼られていた。

その後暫く、私は彼に、そして自身にかける言葉が見つからなかった。

おわり

怖い話投稿:ホラーテラー ジロウさん  

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