中編3
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じいちゃんの願い

長文失礼。

従兄弟の夢に、数年前に亡くなったじいちゃんが出てきたそうだ。

じいちゃんは従兄弟(Y)に

「今欲しい物があるだろう?」

と聞いてきた。

Yはその時バイクが欲しくてお金を貯めているところだったので、そのことを正直に話した。

じ「いくら必要なんだ?」

Y「あと18万6千円」

足りない額をぴったり告げるあたりが好青年のYらしい。

じいちゃんは頷くと、

「じゃあじいちゃんがそのお金を出してやる。でも、必要な分だけだぞ。それ以上欲張っては駄目だ」

とに念を押して消えた。

目が覚めたYは『ヘンな夢見たなぁ』ぐらいにしか思わなかった。

で、ここからはありがちな展開で恐縮なのだが、ギャンブルなぞ滅多やらないYが何故かパチンコ屋に行き、あるパチスロ台に惹かれるように座ったところ、大当たり連発。

Yは『あ、これがじいちゃんの言ってたヤツか』とピンときて、言いつけ通りキリのいいところで終了。(なんとなく『ここまで』っていうのがわかったらしい)

換金してみるとぴったり希望額で、Yはじいちゃんに感謝しつつ念願のバイクを手に入れた。

(ちなみにYがやめる時もまだ当たりが続いていたので、その台を友達に譲ったところ、パッタリと出なくなり友達はかなり負けてしまったらしい)

以上は叔母(Yの母親)から聞いた話。

うちの家系は女系で、6人いるじいちゃんの孫の中でも男はYひとりだけ。

加えてYは素直で優しい子なので、じいちゃんもそら可愛いわなぁ。とみんな納得したんだわ。

それで終わればまぁよくあるイイ話なんだが、その後、再びYの夢にじいちゃん登場。

今度はじいちゃんが

「みんなで写っている写真が欲しい」

とお願いしてきたそうだ。

前回のバイクの件があるから、ただの夢だと一蹴できない。

折りしも季節はお盆前。

ていうか、じいちゃんがそこを狙ったとしか思えない。

というのも、生前のじいちゃんはばあちゃん(健在)の実家に住んでいる所謂マスオさん状態で、しかもばあちゃんと結婚する前に別の女性と子供まで作ってたらしく(じいちゃんの葬式で初めて知った)ばあちゃんとの仲も良くなくて、家の中での立場はかなり弱かったんだ。

孫の私たちにとっては、優しくて穏やかでハンサムないいじいちゃんだったんだけど。

そんなじいちゃんだから、当然ばあちゃんの夢枕に立つわけにもいかず(ばあちゃんの気性からして怒って無視)いちばん受け入れてくれそうなYのところに出たんだろう。

それでも夢でただお願いするだけじゃ信じてくれないだろうから、Yに付け届け(?)的なことをしてアピールしたんだろう、というのが我が家の見解。

優しすぎて押しの弱いじいちゃんらしくて、ちょっと切なくなった。

そんなわけで、年に一度近場の親戚が一同に会するお盆に写真撮ろうよ、ってことで話がまとまった。

(誰も「そんなことあるわけないだろ」的異論を唱えなかったのは、ひとえにYの人徳のおかげだと思う。そんなウソつく子じゃないしね)

そしてお盆当日。

仏壇持ってる我が家に親戚大集合。

仏間にかけてあったじいちゃんの遺影を持ったYを真ん中にして、新婚の従姉妹の旦那やもうすぐ親戚になるであろう妹の彼氏も含め、総勢18名で記念撮影。

写真の中のじいちゃんはとても満足そうないい笑顔で、それからYの夢に出てくることはなかった。

…のだそうだ。

じいちゃん、その写真、撮影当日体調悪くて寝込んでたあなたの初孫である私が写ってないんですけど…(涙

怖い話投稿:ホラーテラー 琴魚さん  

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