子供達が嫌がる為に家で煙草が吸えない俺の喫煙所は、家の前にある海辺の階段だ
何時もの様に、夕食後に携帯灰皿を片手に海辺の階段へ
夜の8時頃に海を見ながら煙草を吸っていたら、お爺さんがやって来て俺の隣にチョコんと座り
「煙草を一本下さい…」
と言ってきた
「ああ、これで良かったらどうぞ」
俺は煙草の箱とライターをお爺さんに渡した
お爺さんは箱から煙草を一本取り出し火をつけた
「うまいです…何年かぶりに煙草を飲みました」
と煙草の煙を吐き出しながら嬉しそうに言った
犬の散歩なのか、犬連れの人の小さな犬がやたら吠えてくる
「うるさい犬ですね」
俺が言うと
「よく吠えられますよ」
と笑みを浮かべお爺さんが答えた
「この辺にお住まいなんですか?」
俺は産まれてからずっとこの地に住んでいるが、このお爺さんは初めて見る人だった
「昔住んでました、この街も随分変わってしまった」
お爺さんは暗い水平線を見るかの様に前を見詰め
独り言の様にボソボソと言った
「さて、帰って風呂にでも入ります」
と俺はその場から立ち上がり階段を昇り始めた
階段を上がりきりお爺さんの方を振り向くと、そこにお爺さんの姿がなかった
一瞬ビックリしたが
不思議と怖いとは思わなかった
家に戻り、家族に話したが誰も信じてくれなかった
俺は今でも海辺の階段に座り煙草を吸っている
勿論、煙草は二本以上持って行く事にしている
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話