いわくのない部屋~園長編~

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いわくのない部屋~園長編~

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家賃   :2万円

敷金・礼金:0円

築年数  :15年

専有面積 :13.02㎡

入居日  :即日対応

審査・条件:特になし どなたでも借りれます

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当時、僕は住むところが無かったので

その入居者募集のチラシを見つけたときは

藁にもすがる気持ちでその大家に連絡をした。

考えてみれば、少し怪しい条件なのだが

その時は選択できる余裕もなかったので即決した。

僕の両親は共にに医者で、僕は比較的裕福な家庭で育った。

両親は僕も医者に育てたかったらしいのだが

どうやら、僕にはその素質はなく大学受験に失敗

両親もそんな僕に愛想を尽かしたのかその後何も言わなくなった……

のであれば良かったのだが、両親は諦めが悪く

なにがなんでも僕を医者にしたかったのか

僕を予備校に通わせ

毎日小言の様に勉強の進捗具合を聞き

そのたびに僕は順調であるかのように嘘をつき

そして、模試で散々な目に遭うという

サイクルを繰り返していた

要するに僕はそんな生活から抜け出したいと思っていたわけで

ついに、ある日僕は両親を捨て、家を捨て、そしてこの生活を捨てたのだ

その大家さんは会ってみると人の良さそうな初老の女性だった

大家さんは僕を見ると何も聞かずに部屋を貸してくれ

僕の表情から何かを察したのか、家賃は払える時でいいとまで言ってくれた

なぜそんなに僕に優しくしてくれるのか?

僕は疑問に思ったが、入居して2~3日ですぐにそれも気にならなくなった。

なぜなら、そのアパートの住人は全て訳ありと思えるような人たちばかりだったからだ。

明らかにお金に困っていそうなキャバ嬢

就労ビザがあるのか疑問になるような外国人

どう見えても前職は堅気の商売をしていたと思えないアンちゃん

そんな人達ばっかりだった。

つまり、大家さんは僕だけに優しいのではなく、全ての人に優しく

そして人助けが趣味というちょっと変わった人らしいのだ

そういえば、どこがと言われても困ってしまうが

大家さん自身も訳ありの様な感じがしていた。

とにかく僕はここで人生をやり直そうと心に決めたのだ。

しかし、それから一週間経過したぐらいから……おかしなことが起こり始めた。

始めは僕も勘違いかと思うような事で

消したはずの部屋の明かりやテレビが点いていたり

閉め筈のドアが開いていたり

未開封な筈の飲み物の蓋が開いていたり

その程度だった

しかし、それがあまりにも続き僕が不安になったころ

体に異常が現れるようになった

例えば慢性的な倦怠感

時折僕を襲う吐き気、眩暈、幻聴

何となく感じる何者かの視線……

そしてこれは入居後知ったことだが

僕の家賃がなぜか他の入居者と比べて安いこと……

そんなある日、大家さんが僕の部屋を訪ねてきてくれた。

「なんだか最近調、あんたが調子悪いって話を他の入居者さんから聞いてねぇ。

 心配になって来てみたんだよ」

大家さんは、以前会った時と全く変わらない様子だった。

この人の笑顔は人を安心させる機能でもあるのだろうか?

気兼ねなくなんでも話せるそんな気持ちにさせられる。

そこで、僕はかねてより疑問に思っていたことを聞いてみた。

「大家さん……正直に答えてください。

 この部屋は前に何かあったんですか?」

「何かってなんだい?」

「いや……その…つまり、いわゆる……訳あり物件……て訳じゃないですよね?」

「どうしてそう思うんだい?」

大家さんは、僕の質問に嫌な顔一つせずに答え続ける。

「最近、変なことばかりこの部屋で起こるんです、それに体調も悪くて中々治らないんです」

「そうかい……それは大変だねぇ」

「あまり、僕はそういうのは信じないんですけど……ひょっとしてこの部屋で何かあったんじゃないかって……

 こう言ってはなんですけど……ここの入居者ってみんな何か訳ありの人が多いじゃないですか……」

「確かに、私は色んな人に部屋を貸すからねぇ……

 そう思うのも無理はないかもねぇ……

 事実、犯罪者に貸したこともあったしねぇ……」

大家さんは笑顔全く崩さなかった。

大家さんの言った内容より、その笑顔に僕は初めて大家さんに恐怖感じた。

「でも、この部屋はいわくのない部屋だよ」

「そんな!!じゃぁ、僕のこの状況はどう説明するんですか!!」

僕は声を荒げた。

「それに、なぜ僕の家賃はほかの入居者さんより安いんですか!!」

「あんたの家賃が安いのは、他の入居者に比べて若いアンタの為のちょっとしたサービスだよ

 それにもう一度言うけどこの部屋はなんのいわくもない部屋だよ」

「どうして、それがわかるんですか!!」

大家さんより一層笑顔になり、その顔は皺で埋め尽くされ、醜悪とすら言える表情になった。

「私はね……見えるからだよ」

「そんなこと信じろをって言うんですか!!」

「そうだねぇ……どうやって信じてもらおうかねぇ……」

そういうと大家さんは今までの笑顔を辞め、すっと真顔になった。

「そうだねぇ……じゃぁ逆に一つ質問するけど……

 ずっと前からあんたの背後に居る、御両親らしい方は……

 やっぱりあんたが殺したんかい?」

怖い話投稿:ホラーテラー 園長さん  

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