長編11
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小さな石祠と髪玉

初投稿です。

誤字脱字等あると思いますが

お手柔らかにお願いします。

これは私が中学三年だったか、

高校に入ったかの頃に実際に

体験した唯一、不思議な出来事だ。

丁度、田植えの時期だったのを

憶えている。

文章に書いてしまうと

案外怖くないなと思ってしまったが、暇つぶしにでも読んで貰えればと思う。

それでは始めます。

ある日の暮れ方、もう間もなく

辺りは宵の闇に包まれようかと

いう頃合…

河川に沿った堤防道を

虫や蛙の声が鳴り響く中、

気まま歩きしていると、

やや前方の地面、土手脇の法面(斜面)に黒いモヤのような…

雨雲にも似たそれが

うっすらと渦巻いている。

最初見間違いか…

誰かの野火跡のくすぶりか…

などと自分を納得させようと

していたのだがそのうち

その斜面下の土の一部が

モコモコとうねり始め、ぼこっと

腕のようなものが

一本出てきたかに見えた。

「ん?何だ?モグラか?

 こんなとこに野ウサギ?」

などと考えていると

それはゆーっくり

ユラユラ〜と、

おいで〜おいで〜をする様な

動きになり…私は呆気にとられ

目が離せなくなって暫く…

「えっ!!?えっ?何だあれ?」

と見慣れないが

実際目の前で起こっている現象を

努めて冷静にとらえようとした。

周りを見回しても私以外には

誰もおらず、私は魅せられ

太陽が地平線に傾きかけている

その最中ひと足早く

吸い込まれるかの様に傾斜地へ

更にはその下へと滑り降りた。

するとそれはあろう事か、

なんと、ただ風に揺られる草だった。

本当にただ草が前後左右に

動いているだけだった。

「そんな!?まさか、

 見間違い?疲れてるのか…」

そう思い引き返そうとした瞬間、

私の目には、いつからそこに

あったのだろうか?

その年代が相当昔からのもの

であろう事は安易に察しがつくほど

風化され古ぼけた…

小さめな石碑というか墓(無縁仏?)がポツンとある事に気付いた。

あれ?こんな所にこんなのあったか?と考えてるうちに視界の隅から

何かが転がって来たような錯覚に

陥った。

思えばこの時、

すでに得体の知れない

非日常的な空間…

別の次元とやらに

引っ張られていたのではなかろうか。

やがて錯覚だと思っていたそれを

視野に捉えた時、

ふわふわとした…

最初それは草か糸クズか

ゴミが絡まったものの様に

見えたが、よく見ると髪が

ボール状に塊った物が

転がっているのだと解った。

視覚では解っていても

自身の引き出しではそれを判断

出来る材料を持ち合わせておらず、

それが何なのか

全く分からなかったが、

さっきまでとは一変、

私は急に恐怖心に駆られた。

カサカサ…コロコロ…ガサガサ

…コロコロ…

ガサッ…ストッ

その黒い塊は古ぼけた

小さな石碑の真後ろで止まった。

丁度石碑に収まる幅ぐらいか

少し出るかぐらい。

私はそれから視線を反らす事が出来ず、食いいる様に見つめ続けた。

いったいどれくらいたったろうか…

その塊がほんの少し膨らんだかに

見えたと思った瞬間と…ほぼ同時に

ゴロンと石碑の後ろから

目の前にひと転がりしてきた。

ドッジボールほどのそれは

頭のように見えた。

いや、どうみても人の後ろ頭だった。

私は、

「えっ!?黒い塊が…

   髪の塊…え?後頭部!?                                           

                                …頭??」

にわかに起こった

信じられない光景に…

その後頭部らしき得体の知れない

物に対し急激に恐怖心が募り、

全身の毛穴からは

嫌な脂汗のようなものがどっと

噴き出し体中の毛という毛全てが

逆立つのではないかと言うほど

鳥肌立てていた。

ここから離れないと!

早く離れないと!

やばい…離れないと…

同じ言葉を何度も自分に

言い聞かせ、身体中からそう

信号が発せられ頭では理解し、

本能に身を委ねたいのだが

それもままならない…

不意に私はそれを絶対に見ては

いけない。見ては駄目だ。

絶対にだ!

となぜか根拠のない…

でもその時にはたしかに

確信を得たかのように急な意識が

芽生え自然に目線をスッと

右側へと外した。

その刹那…

この時の事はハッキリと

覚えているが、

なんと表現すればいいのか、

言うなれば操られると言うか、

意識が弄ばれてると言うか、

既に取り込まれてさえ

いたのだろうか…

とにかく良く出来たからくり

仕掛けの様に一定のリズムで

私の意に反して少しずつソレに

対して自身の首が動き、

相対して後頭部だけのソレも

まるで呼応するかの様に少しずつ

少しずつこちら側に向かって

その場で回転し始めた。

ヤバイやばいヤバイヤバイ!

私は半ばパニックになりながら、

散歩中、不意に出くわした

この奇っ怪な出来事から

逃れられないでいた。

だんだんと少しずつではあるが

それは徐々に、こちらにゆっくりと

しかし確実に顔を向けてきた。

私はどうする事も出来ずに

やがてソレと対峙する事になる。

その時どんな顔を

していたのだろう…

「ヤバイ、ヤバイもっていかれる」

その表現が適切かどうかは

分からないがそんな風に感じ、

そんな様な表情をしていたと思う。

いつの間にやら蛙や虫の…

いや、辺りからの物音は

全く耳に届かなくなっていた…。

私と対面したその黒い塊は、

パッと見、西瓜の様に見えた。

目と口は閉じられており縞模様に

見えたそれは髪の毛と地肌なのだと

分かった。

ベタッとした血にまみれた髪と

血に固まったかの様な

ドス赤黒い肌。

西瓜の緑と黒の対比が

目の前にいるソレの縞と重なった。

どうする事も出来ずに

私はただ立ちつくしていた。

不意にそれは目を見開き

口元も微かに動いたのが見えた。

私はしまった!!

どうしてもっと早くこの場を

離れなかったんだ!

と自分を責めたが、

時すでに遅かった。

開かれた目は焦点が合っておらず

白濁色…というか死んだ魚の

目の様に見えた。

しかし徐々に白濁色から

黒色へとハッキリと変化してきて

その目は完全に普通の生気を

帯びた黒い瞳となり私の方を

見据えていた。

もうここでいっそ気を失いたかった。

私は身動きすら出来ず、

ただ事の成り行きを見守るしか

なかった。

やがてその黒い瞳が右に

スーツっと動いた…

かと思うと左にギョロっと。

壊れたレコーダの様に

それを繰り返す。

初めゆっくりだったその瞳は

段々左右に動くスピードが早まり、

もう何がなんだか、

黒い点が連なって点線の様に

そして終いには全てが黒目の状態でじっと見つめられているのでは…

と思えるほど…それぐらい

早い動きになり、頭部本体も

小刻みに揺れ動き始めた。

もはや到底、此の世のものとは

思えない動きをしだして

私は恐怖のあまり震えから

ションベンを漏らしそうになった。

不意にその大きな黒目の動きが

止み、ただのひとつの点と

なって私の目をジッと捕らえたかと

思うと、今度は徐々に上に

白目を剥き始めた。

それに呼応するかの様に連動して

私の目も勝手に白目を剥き始める。

体は拒否するが押さえが効かない…

私は今までに経験した事の無い

恐怖に…この不条理についに

抗う事が出来ず絶頂に達して

しまった。

股間にジワっと広がる

生暖かい感触だけが

とりあえずかすかにではあるが

まだかろうじて我を失っては

いないのだと意識を繋ぎ止める。

繋ぎ止めながらも

体はガクガクと痙攣しはじめ、

ついで鼻の付け根部分がプツンと

弾ける感じがして

途端に赤い鉄汁がツーっと

口元まで滴るがそれを受け止める

唇からは既に涎が幾筋か

垂れ流れていた。

得体の知れない何かに

体を乗っ取られる恐怖に対して

必死に自らの意識が

反発していた。

私の両の目が白目を向きはじめて

意識が飛ぶか飛ばないかの

寸での所でハッと我に帰った…

帰れてよかった。

その時には体が呪縛から

解き放たれたかの様に動かせる

気がしたので、私は一目散に

ソレに背を向け堤防道に向かって

斜面を駆け上がる。

ふいに背中越しに何故か

そいつがニターッとしたのを

視覚ではない

私の何かが感知した。

駆け上がる途中少し離れた

向こうから人が歩いてくるのが見え、私は半狂乱になり、

訳の分からない事を口走りながら

「髪が、球体が

       頭で…目で%¥々○°€*」

歩いてくる人の方に向かって

助けを求め駆け出そうとして、

ふと夕陽を背にしたその人を見た時、

遠目ながらにそれは…

              その人の頭は…

本来…

          石碑横にいるはずの…

                     今まで居たはずの…

   ソレ…       だっ…  た?

「ヒッ…¥#€〆^々…」

私は声に鳴らない悲鳴と共に

立ち止まる。

振り返り石碑の方を見る。

先程までいた場所に

あるべきはずのそれがない…

まさか!そんな!?

再びその人の方へ向き直す。

その人は俯き加減で、表情は

夕陽にさされてよく見えないが

口元がニターッと

広がった気がした。

次いでダランと下がった手が

おいで〜おいで〜と上下し始める。

私は逃れられない恐怖の中、

踵を返し、急いで元来た方向へ

戻ろうと石碑の方にターンした

その瞬間…

ビクッ!!!!                                                    

…とした。

そう。ああいうのを心臓が

止まる程って言うんだろう。

いや、「止まってた」

かもしれない。

向き直った瞬間、

思考が飛んで真っ白になった。

信じ難い事だが縞模様の頭部が

目と鼻の先にあった。

まるで瞬殺されたかの如く

状況も理解出来ぬまま…

自分の心臓の鼓動が乱れる間も、

叫ぶ間すらも与えられないままに…

わたしの体は既に走り始める

態勢に入っていた為、

止まる事なく気付くとほぼ同時に

ソイツとシンクロした。

それは、紙袋をいきなり頭から

スポッと被せられたかのような…

一瞬目の前が真っ暗になった

気がしたが、すぐに周りの景色が

ぼやけて見えてきた。

段々景色のピントが

あってきた時に私を中心とした

周りの景色が凄い勢いで

グルグルと回り始めた。

風景が次々に流線状となって、

無限ループのように

現れては消える。

自分が回ってるのか、頭に被さった

ソレが回転しているのか…分からなかったが自分の立っている

今この場所を軸にして地球が

高速で回っているのではないかと

さえ思えるほどだった。

この時は多分、

うなされたように、

ただ口からアーとかウーとかしか

発せてなかったと思う。

どれくらいそうしていたのか

いつしか回っていた景色は止まり、

私の目には固定されたレンズの様に

静止画が…空一面が映しだされていた。

何時の間に意識を失ったのか

仰向けに倒れ込んで

しまったようだ。

夕陽が落ちて、闇に紛れる

直前の雲達が黒とグレー、セピア

と紫色のコントラストをつけ、

そのどれもがとても素晴らしく

美しく見えたのを憶えている。

不意に上空の視界の端から

にゅうーっと

何かが割り込んできた。

一瞬またあの、この世の

ものではないものがニターッと

笑う場面が脳裏をよぎったが、

どうやらさっきの通行人のようだ。

私の顔を覗き込んで

何かを叫んでるみたいだ。

だが私は朦朧としたまま

寝ているのか

起きているのか…ただぼーっと

上空の一点を見つめていた。

その声は一向に耳に届く事なく

次第に辺り一面が闇に

吸い込まれるように溶けていった

かと思うと私の視界と意識は

暗黒に閉ざされた。

頬に何かが当たる感触と、

誰かの声がハッキリと聞こえ

始めてきて私は目が覚めた。

頬がジンワリと痛い。

既に辺りは暗くなっていた。

少し離れた眼下に見える歩道には

等間隔で街灯が点っている。

警笛と共に鉄橋を渡る列車から

見える窓々の明かりが流れる様に

平行移動し、その一陣が去った後には尚の事、夜の帳を感じさせられた。

ここからは通行人から聞いた話を

思い出しながら書く。

その人も夕涼みがてら

ぶらぶらと散歩をしていたらしい。

ふと見ると前方の斜面から慌てた

様相で何か叫びながら誰かが

駆け上がって来る。

何か事件か?こっちに来る!

そう思って向かってきた矢先、

通行人の方を見て

回れ右をしたらしい。

通行人「いや、ビックリしたよ。

何かわめきながらこっちに

人が来たと思ってどうしたもんかと待ってるうち、暫くこちらを見たかと思うといきなり恐怖に引き攣った顔で元来た方へ戻ろうとするもんだから。

あ、ちょっと、君!…呼び止めようとしたんだが、聞く耳を持たずってな感じで。

そしたらすぐにその場でフラフラ

しだして…ん?どうしたんだ?

と思ったら今度はユラユラと回り始め…こりゃただ事じゃないなと思い、少し距離はあったが急いで駆け寄ろうとしたら、次はいきなりバタンと仰向けに倒れるもんだから驚いてしまってね。

慌てて駆け寄り何度も呼びかけたんだが、そしたら口からは泡吹いてるわ、白目はむきそうだわで何とも形容し難い表情で、イヤにニタァーッとしてるんだ。

あてられる?だったか?いや入られるだったか…いずれにせよ、

何かもってかれるみたいな内容の事を繰り返し言ってたな。

そのうち聞き取れない程小さくなり、しまいにゃあボソボソと何か喋ってたよ。

ちょっと気味が悪いと言うか嫌な予感もしたが、こっちも気がつきゃあ、何度も引っぱたきながら大声張りあげてたよ。一時はどうなる事かと思ったがいやぁ、とりあえず、よかった。」

と言うような内容だったと思う。

私はまるで狐か狸に化かされたようにその場に立ち尽くしてしまった。

話を語り終えると、その人は

「じゃあな、気ぃつけてな!

心配なら病院にでも行くこった。

後、ちゃんと股間と顔のまわりの

見てくれ何とかしろよ!」

と言い放ち、苦笑交じりに

立ち去っていった。

私は何度も重々お礼を言ってその人の後ろ姿が見えなくなるまで見送った。

いや正確にはただ呆然と立ち尽くしていた。

後に残った頬の痛みだけが何物にも代え難く、ただありがたかった。

以上が私の体験した出来事である。

文章にしてしまうとあまり怖さが伝わらなかったかもしれない。

でもあの時、私は得体の知れない

何かに、大事な何かを取られそうになった。

もしあの時もってかれてたら

今頃どうなっていたのか…

そしてあれが何物だったのか、

あの石の祠は一体何だったのか…

今となっては知る由も無い。

怖い話投稿:ホラーテラー 赤髪のシャンクソンファイブさん  

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