中編3
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いわくのない部屋 俺編

『お客様、この部屋はいかがでしょうか。』

家賃を低めに設定しただけにこれ以上はなさそうだな。ここの部屋にしておくか。

三万五千円か。値段のわりには駅から近いし風呂トイレもついてる。普通だと五万はする物件だしな。

『では1週間以内に記入後、書類をそろえて郵送してくださいね。』

それにしても安いなぁ。まさか幽霊がでるとかないよなぁ。って、幽霊見たことない俺には関係ないか。

書類の審査もとおり、無事引っ越しをすませて挨拶まわりをしようとしたがお隣さんどころか上の人にも会えなかった。

結局ドアノブにかけた紙袋の中に102号室に引っ越しして来たものです。ご迷惑をおかけすることもあるかと思いますが宜しくお願いします。とだけ書いた紙を入れておいた。

1週間ほどたった頃だろか。コンコンとドアをたたく音がした。携帯の時間を見ると深夜の一時。こんな時間に誰だ?

心当たりのない俺は居留守を使うことも考え、そっと足音をたてずに歩きドアの穴からそっと覗き込む。

誰もいない…。部屋に戻り何だったのかわからない状況にイライラしながらとりあえず煙草を吸った。

それから一時間ほどたった夜中の二時頃に二階からドタドタと走り回る音がした。

うるさくて目が覚めたがじっと天井を眺めたままその音を追い掛けた。五分ほど走り続けていただろう。

不思議なことにその足跡はピタリと止まると言うわけではなく段々と遠退いていくように小さな足音となり消えていった。

まぁ、少しくらいは仕方がないか。そう思っていられたのは引っ越しをしてから一ヶ月が限界だった。

夜中になると隣の部屋から何やらノコギリで何かを切る音がしたり、川原を歩いているようなジャリジャリとした足音が聞こえたり。

男のうめき声に女のすすり泣きと、不快感が満載な感じの音が続いた。

我慢の限界に達した俺は不動産に電話をした。大家さんに注意してくれるようにお願いをしたのだが帰ってきた返答は思ってもみない言葉だった。

『そんなはずはないですよ。あなたの部屋の上も隣も空き部屋ですよ。』

そんなはずあるかぁ!両隣のドアノブにかけたお菓子も次の日にはなくなってたし、間違いなく人の気配は壁越しに感じたし、不快な物音も全て気のせいではない。

納得がいかない俺はそれから毎日両隣の家をピンポンピンポンとならしてみた。朝会社に行く前と帰ってからと。だが、誰も出てはこなかった。

日に日に夜中に騒ぐ両隣にイライラしながらも幽霊のせいかと思うようになりノイローゼ気味になってきた。

とりあえずお祓いをお願いし、来てもらったものの特にこの部屋に異常はありませんよと言われ帰ってしまう始末。

盛り塩くらいしていきやがれ!こんちきしょー!と思いなが自分で小皿に塩を盛った。

容赦なく続く怪奇現象に限界を感じ、睡眠もまともにとれないため引っ越しを決意した。

別の不動産で次の部屋を契約し、なけなしの金からまた敷金、礼金と家賃を二ヵ月分前倒で払いへこみながら道を歩いていると見覚えのある顔があった。

電話をしているその人は大家さんだった。俺には気付いていない。最後に挨拶でもしようかと近づくと大きな声で笑いながら

『今回のはなかなかしぶとかったねぇ。普通なら2、3週間で出ていくのにね。いつも通り103の○山さんと202の○田さんとあんたで礼金の半分を山分けしな。』

ん。俺がキレたのは言うまでもない。

こんちきしょー!!

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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