よくある話だが、
私の息子は3才のころ、目に見えないものとよく会話をしていた。
それが始まったのは夫の転勤で某県に越してきて間もないころ。
始めは一人でお喋りしながら遊んでるだけだろうと思っていたが、よく聞いていると、明らかに誰かと会話しているのだ。
しかも相手の名前はアッキーというらしい。
「ママ、アッキーがジュース飲みたいって!」とか、そういうことまで言うようになった。
あるときは「これアッキーが描いてくれた!」と、息子が差し出した画用紙を見てみると、
3才児どころか私なんかが描くよりも上手にアン○ンマンが描かれていたりした。
はじめは気味悪かったものの、害はないし子守りしてくれてるし!?…… と、お祓いしようとかは全く思わなかった。
むしろ、気になって息子に
「ねぇ、アッキーってママには見えないんだけど、どんな人なの?」と聞いてみた。
息子「板橋のお兄ちゃんみたいな人だよ!学校に行く服も着てる!」
板橋のお兄ちゃんとは私の甥っ子のことだが、つまり今風の茶髪の兄ちゃんってことか。
学校に行く服=制服のことだから、つまりは今風の男子高校生?
息子「アッキーは、あそこのマンションに住んでたんだって!」
息子が窓ごしに指さす先には、赤レンガのマンションがあった。
アッキーの存在が明確になったような気がして、少し怖くなったが、とりあえずその後もアッキーとの共同生活が続いた。
しかししばらくすると「アッキーが意地悪する!」とか
「叩いた!」とか息子が大泣きすることが増えた。
あまり気にしていなかったが、ある日のこと、また息子が大泣きして私に訴えてくる。
「アッキーが、パパとママをバスに乗せて連れてくって。それでもう二度と返してくれないって…!」
カチンときた。
私は窓を開けてベランダを指さすと、「出ていけ!」とアッキーに怒鳴った。(見えてはいないんだけど…)
「何が気にくわないのか知らないけど、こんな小さな子供にそんな意地悪を言うクソガキは今すぐ消えろ!!」
そしてイライラしながら私はその場を去った。
その夜。
息子「…ねぇママ。ママが怒ってからアッキーずっとベランダにいるよ。可哀想だから許してあげて?」
…幽霊のくせに素直に私の言うこときいてるのか。
ちょっとウケたが
「いいの!」と知らんぷりをした。
そしてその日を境にアッキーは現れなくなった。
息子も最初は「アッキーは?アッキーは?」としつこかったが、徐々に忘れていってるようだ。
それとこれは後日談だけど、近所の人に聞いた話。
私たちが越してくる5年ほど前に、例の赤レンガマンションの7階ベランダから男子高校生が落下して亡くなったそう。
その子の母親が精神を病んでいて、飛び降り自殺しようとしたところを止めようとして、自分が落ちてしまったらしい。
名前まではわからなかったけど、おそらくアッキーのことだろう。
アッキーがうちの息子にあんな意地悪をしたのは、幸せそうな我が家に少し嫉妬したからなのかな?
よく分からないけど、なんだか悲しくなってお花を供えてきたよ。
それと…
あの世に逝くバスがあるのは本当なんでしょーか?
死んでみないとわからないけど、死んでるアッキーが言ってたんだから本当かもね。。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話