中編4
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冷蔵庫~園長編~

仁美、真里、沙耶香、香織そして私の5人は久しぶりに実家近くの空き地でたむろしていた。

皆、思い思いの場所に座り、近況報告し合いながら談笑していた。

私たち5人がここで一番遊んでいたのは、小学生の頃だ。

その頃の私達は、まるで男の子ようにやんちゃで活発だった。

この空き地は都合のいい遊び場で私たちは秘密基地と称しては

鬼ごっこやかくれんぼ、オママゴトなどをして遊んだ。

まぁ、もっともそれも小学生低学年までで

高学年になる頃には、年頃の女の子の様に少しませて来たりして

ぱったりこの空き地に来ることもなくなった。

今日は小学校の同窓会で地元を出た人達も久しぶりに地元に戻ってきていた。

同窓会自体は非常に楽しく私達は気分が高揚し

二次会が終わった後も何となく離れがたくなった。

大分夜もまわっていたが皆実家が近いせいもあって

『久しぶりにあそこに行こうよ!!』という事になり

私たちは本当に久しぶりに秘密基地に5人そろったのだ。

「しかし、懐かしいねぇここ、“あの時”以来だね」

ひとしきり、恋愛や仕事……そして結婚なんかについて話すと

仁美は懐かしがるように言葉を漏らした。

「うん……ほんとだね……。“あの時”以来だ」

真理は同意した。

「しっかし、ホント相変わらずゴミだらけだよなぁ。あんな事故があったのに変わってやしねぇの」

辺りを見回すと、沙耶香は吐き捨てるように言った。

この土地は私たちが遊んでいたあの頃から既に空き地になって久しく

時折、壊れた家電や家具などの粗大ごみが捨てられていた。

小さい頃の私たちにとって、それらは一つ一つが遊び道具だった。

さすがに今の子たちはそれらで遊ぶようなことはしないだろうが

この場の状況は変わらず、辺りには壊れたテレビやら、タンスやら、洗濯機やらが転がっている。

「此処もそうだけど私たちも変わらないよねぇ」

そう私が呟いたとき、私達から少し離れたところに転がっている冷蔵庫から

『コンコン』

という音がした様な気がした

「……皆、今の聞こえた?」

と、私がみんなに聞くと

「いや、なんも聞こえなかったよ気のせいじゃない?」

と仁美が答え、みんなそれに相槌をうった。

「それよりも、皆変わらないって、成長してないって言いたいのかよ!!」

沙耶香は冗談交じりに凄んできた。

「別にそういうわけじゃないって。

 ただ、昔と変わらずに皆こうして集まってさ、くだらないこと喋ってさ……

 そういう、昔と変わらないのってなんかいいなぁって。

 あの事故が起こるまでは本当に、良くここでかくれんぼとかしたよねぇ」

「あ~、本当だね。誰だっけ、隠れるのうまかったの?」

そういうと、仁美は私たちをぐるりと見回した。

『コンコン』

また、冷蔵庫から音が聞こえたが、私達は無視をした。

しかし、心なしかさっきよりも大きな音だったような気がする。

「ん~誰だっけ?全然覚えてな~い。今も隠れてんじゃないの?」

沙耶香はよっぽど酔っぱらってるのか、そう言うと「あはははは」と大声で笑った。

それは意外なほど、深夜の住宅地に響いた。

「沙耶香、そんな大きな声出しちゃダメだって

 ご近所さんもいるんだから迷惑だって、もうこんな時間なんだし」

真里は沙耶香をたしなめる。

『コンコン』

また、冷蔵庫から音がした。

「ホント、空気読めない奴っていつまで経っても空気読めないよねぇ。」

仁美はあきれ顔で半分、笑顔半分だ。

私たちは、今度は小さい声で笑った。

『ドンドンドン!!ドンドンドン!!』

今度は明らかにみんなに聞こえるほどの大きさで冷蔵庫から音がした。

私たちはさすがに会話を続ける気にはならなかった。

『ドンドンドン!!ドンドンドン!!』

『ドンドンドン!!ドンドンドン!!』

『ドンドンドン!!ドンドンドン!!』

『ドンドンドン!!ドンドンドン!!』

『ドンドンドン!!ドンドンドン!!』

『ドンドンドン!!ドンドンドン!!』

『ドンドンドン!!ドンドンドン!!』

『ドンドンドン!!ドンドンドン!!』

さらに絶え間なく冷蔵庫からは音は鳴り続け

その音は回数を重ねるほどに大きくなり

そして

『ドンッッッ!!……………………』

と最後に一際大きな音が鳴ると冷蔵庫は沈黙した。

やっと終わったかと皆顔見合わせた瞬間

冷蔵庫の扉は何の音も立てずに滑るように開いた

中に居るのはあの頃の私達と変わらない年頃の女の子だ

女の子はゆっくりと冷蔵庫から顔を出した

それ認めるや否や仁美は勢いよく立ち上がり

冷蔵庫に向かった

そして、女の子の目の前に座り

冷蔵庫の扉に手をかけながら口を開いた

「“あの時”も確か私言ったよね?

 あんたウザいから死んでもそこから出てくるなって

 隠れるの得意なんだよね?

 本当、死んでも空気読めない奴だよね……香織って」

そう言うと仁美は勢いよく冷蔵庫を閉めた。

その後も私たちはたわいもない会話をしたが

日が変わりそうになるのを切っ掛けに

4人それぞれの実家に帰って行った。

私は、家に着いてからさっきまでの皆の様子を改めて思い返し

微笑まずにはいられなかった。

皆、本当に変わらないなぁー。

怖い話投稿:ホラーテラー 園長さん  

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