中編7
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寒い部屋

「寒い部屋」

よく二十歳までに霊を見なければ一生見る事はないとか言うでしょ??

19歳の時にそんな話を聞いて「僕も霊を見る事はないんだなー」なんて思ってた。

ところがそれからまもなく二十歳前に初の金縛りにあいました…。

それから奇妙な体験を何回かする事になってしまったんです。

事の発端は19歳になった夏の始めに親友のMの家に行った事でした…。

Mの部屋は二階にあって南向きで陽当たりもよく、普通なら明るく気持ちのいいはずの条件が整っていました。

にも関わらず久しぶりに行ったMの部屋は妙に薄暗く、変に涼しかった。

Mも「俺の部屋寒いんだよ」とかよく言ってたし。

この時は冷静に分析して

庭の木が、せりだして影を作って暗くなってるし、海も近いから風がきてるのかな…ぐらいにしか考えてなかった…。

でも後から考えれば……。

Mの家に行ってから数日たったある日の夜、家で寝てたら金縛りになった。

時間は覚えてないけど夜中に目が覚めたら身体が動かせない。

でも目だけは動かせるので、とりあえず見える範囲で部屋を確かめてみると、特に変わった様子はない。

「これが金縛りかー」と、冷静に考えてた。

それから何度か同じよーな金縛りにあった。

もう金縛りにも慣れてきた頃、またMと遊んだんです。

その日はMとご飯を食べに僕の車で出かけてました。

22:00頃、逗子駅の辺りを車で走っていると、ふと道路脇のフェンスに肘をついてる白い服の女の人が目に入った。

顔はハッキリ見えなかったけど何故か女だとわかった。(髪型もわからない)

二人で顔を見合わせて、「なんだ?こんな時間に一人で気味わりーな!」とか言って通り過ぎました。

そのフェンスは逗子駅から鎌倉駅まで線路沿いにところどころ長く続いてて。。。

そう…良く考えてみたら、あのフェンスの向こう側って電車の線路なんです。

あっ、て気付いて二人で「なんだなんだ?!飛び込み自殺する気かっ?」ってなって。

すぐもどってみたんだけど、もういなかった。

「あれ??」ってなってフェンスのそばに立ってみたらフェンスは僕らの頭より高かった。

「さっきの女、肘ついて車道の方見てなかった?!」「無理じゃねー?」ってなって、二人で首を傾げながらとりあえず帰った。

帰ってからも恐いものを見たという感覚はなく、不思議なものをみたなー。

っていう程度だった。

それからもちょこちょこ金縛りにはあっていましたが、特に変なものは見ませんでした。

それから数ヶ月たったある日、またMとあったら、Mが変な事を言ってきたんです。

「最近、ウチの前の道路でよく              車が事故るじゃん?

あれってなんか道路が急に行き止まりになって慌ててハンドルきってみんな事故るみたいよ!!」

…???

「だから、この世のものじゃないヤツらの仕業なの!」

はぁ…?!

詳しく聴くと…

まず、Mの母親方のお祖母さん(この時はもう亡くなっていた)が霊媒師みたいな人で、

小さいときに、M本人が原因不明の熱がでた時も

祈祷みたいな事をして治してもらったとの事。

さらに何回か知らない人がお祖母さん家に来てお祓いみたいな事をしてたのも見た事があるそうです。

今回はMの母親がお祖母さんの知り合いの霊媒師を連れてきたみたいです。(母親にもわずかにそういう能力ありっぽい)

何故連れて来たかは不明(聞いたかもだけど忘れた)

その霊媒師が言うには、

まず、Mの部屋のドアにかかってた木でできた飾りみたいのを外せとの事。これはMが自分で北海道の網走で買ってきたお土産だったけど、これがよくないらしい。

さらにこの部屋が寒いのは壁に

この世とあの世とをつなぐ大きなトンネルみたいなのができてて、そこからいろんなものが出入りしてるらしい。

そして、その出入りのタイミングで変なものを見た車が事故るとか。

この話を聞いて、当然「んなバカな」と思ったけど、確かに部屋が異様に寒いのでちょっとゾッとした。

さらにMはちょこちょこそういうものを見たりする事があったとも言ってた。

だけど変なヤツだと思われるのが嫌で言わなかったとか。

白い女を見た時も、さほど僕が驚かなかったので特に何も言わなかったらしい。

部屋のトンネルに関してはその霊媒師に「あんたよくこんな所で寝泊まりしてたね」と言われたとか。

例の木の飾りは霊媒師がもっていってお祓いして燃やしたらしい。

それから、Mの家の前での事故はなくなった。

ただ、相変わらず僕の金縛りは続いてた。それどころか、一人で仕事してる時に「おい!」って呼ばれて振り返ると誰もいなかったりとかそんな事までおきる様になってた。

もちろん自分では空耳だと疑わなかったけど。

Mに相談したら「そういう体質になっちまったんじゃないの」とか超他人事。

特に自分でも気にしてなかったけど。

それから何年か経って男4人で沖縄に行きました。

メンバーは僕、M、H君、D君。

ホテルに入ってまずMに「この部屋どう?」って聞いたら全然普通との事。

前にMが伊豆のホテルで凄く雰囲気の悪い部屋に泊まらされて、壁に掛けてあった絵の裏を調べたらお札が貼ってあった。フロントに電話したら従業員が妙に焦ってすぐに部屋を替えてくれたって話を聞いてたから一応確認。

壁に掛けてあった絵の裏もチェックしたけどお札はない。

(実はかなりしっかり貼ってあっけど無理やり剥がして、チェック)

よし!!楽しい沖縄旅行スタートです。

その日はモチロン皆でかんぱーい!

夜の1時を過ぎた頃にはH君、D君は潰れて脱落。

Mと二人で話し込んで2時を回った頃に、突然、ドアをノックする音。

「やばー、うるさかったかな?」

隣の部屋の人が苦情を言いに来たと思い「はい?」とドアを開けてみると誰もいない。

「なんだうぜー」とか言いながら飲んでると、またノック。

そして、誰もいない。

「これお迎え来たんじゃねーの?」と僕。

「来たね。完全に(笑)」とM。

酔いもあったし、やたらと二人とも強気で笑ってた。

もちろん、誰かのイタズラだと思ってたし。

その後ノックが3回くらいきたけど、さすがに酔ってそのまま僕は寝てしまった。

朝起きて、H君、D君にその話をしたらこういうの苦手な彼等はかなり嫌な顔。

それから朝飯食べに行く時に、Mがよって来て

M「お前、あの後寝ちゃったじゃ               ん?」

僕「おー、気付いたら寝てたな!」

M「あの後どうなったと思う?」

僕「あっ、なんかあった?」

M「あの後な、こないだ見た白い女が部屋に入ってきたんだよ」

僕「……うそ。」

M「まじです。」

僕「じゃあ、あのノックは…」

M「おー。」

僕「……。」

M「そんで…どうしたと思う?」

僕「な、なんかした?」

M「気付いた時にはドアの前に立ってて、あっ!って思ったら、もう俺らのベッドの前に居た。」

僕「……。」

M「そしたら、H君のベッドに近づいてって、H君の顔をすげー近くでずっと見てた。」

僕「…マジで。」

M「…。」

僕「言わない方がいいな(笑)」

M「だな(笑)」

僕「つーか、そういう部屋じゃないって言ってたじゃん?」

M「だから、俺かお前が連れてきたんでしょ(笑)」

僕「じゃあ昨日のノックは白い女?」

M「多分ね」

僕「で、今はH君の所に?」

M「Yes…(笑)」

この時のMの話がマジなのか、僕を驚かせる為の作り話なのかはわからない。

まー、ほとんど信じてなかったけど…。

それからは普通に沖縄旅行を楽しんだ。

でもレストランでステーキ食べた時はH君だけすごく堅い肉で食べれなかったり。

パチンコやってみればやはりH君だけ負けたり。

H君がレンタカーの運転してる時だけ駐車場が空いてなかったり。

キャバクラ行ってもH君だけブスが来たりとかも。

普通にツイてない男。

みんな大爆笑。

でも…ふとね、これってやっぱり

白い女の影響なのか…。。。

とかも考えてしまう。

あの時、ノックはあったワケだし。。。

無事に旅行から帰って数日後。

H君を自宅に泊まらせた日があったんだけど、その日は久しぶりの金縛り。

目を開けて周囲を確認すると、近くにはH君が寝てる。

次の瞬間、長髪の生首が目の前に現れた。

ビックリして声を出そうとしたけどでない。

H君は気付きもせずグーグー寝てる。

結構長い時間、生首に睨まれてた気がする。

(長髪だったけど男女の区別は不明)

動けるようになったらフッといなくなった。

すげー怖かったけど、これは夢だと思った。

ありえない感じだったし。

ただその日から金縛りは、なくなって変な体験もそれ以来一度もない。

後日談

あの白い女が最後に見た生首だったかはわからない。

白い女が何者なのかも。。。

Mの部屋の木の飾りについては北海道の網走刑務所跡地で買ってきたものだった事がわかった。

当時、刑務所は相当厳しい環境だったらしく多勢の服役囚が亡くなったらしい。

霊媒師が言うには強烈な怨念渦巻く刑務所でその中のものを連れてきてしまったからだとか。

最後まで部屋のトンネルが塞がったとは言わなかったらしいが。

この体験は全部、見間違い、空耳、偶然、夢、Mのイタズラなどで片付ける事ができる。

実際、自分自身半信半疑だし。

でも不思議な体験でした。

ただ…H君の運の悪さは継続中。

Mの部屋も相変わらず

…寒い。。。

Concrete
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