中編3
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幼稚園の地下階段

「でさぁここの問題なんだけどさぁ」

僕は朝から成績が無駄に良いFに問題の解説をお願いしていた。

「だからここはさっきの応用なんや。だから、、、 おっMおはよー」

「おーっす」

もう二時限目の前の休憩時間だというのに活気のない返事をしながらボサボサな頭をかきむしっている。

「どうしたの?寝不足?」

僕がそう訪ねると

「あぁ、まぁな。」と

あまり悟られたくないような雰囲気の返事を返してきた。

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キーンコーンカーンコーン。

オレンジ色の空の下、寂しげなチャイムの音が校内に響き渡る。

恐らくだいぶ古いスピーカーだ。

チャイムの最後の音の「ン」が何故か少し外れている。

空に飛び交うカラスがカーカーとそれを嘲笑っているようにも思える。

「なんやM?また要らんことしに行くんちゃうやろな?」

帰り道、Fが何かを察知し単刀直入に質問する。

「だぁーい正解ー☆」

Mがニヤリと笑う。

「堪忍してーなぁ…俺アカンわ。帰る。」

やはり今回も絶対に行かないという意志がしっかりと伝わってきた。

少し興味の湧いた僕が

「どこなの?そこ?」

Fが少し嫌な顔をする。

「ん?S幼稚園。聞いたことあるだろ?一度は行ってみたくてさぁ。」

Mは自分のなかの興奮を押し殺すようにしながら言う。

S幼稚園の話はここらではポピュラーな話だ。しかもS幼稚園は僕が通っていた幼稚園なのだ。

S幼稚園は今は廃園になっているのだが何故か建物は撤去されないで残っている。

噂の内容はS幼稚園のN先生という人が先生内のイジメにあったらしい。それも結構たちの悪い。

N先生はそれを苦にピアノのある音楽室で首をつり自殺した、と まぁよく有りがちな怪談だ。

まぁ僕はもちろんN先生なんて知らなかった。

僕が卒園したのはかれこれ12~3年くらい前の事になる。

この噂が出てきたのと廃園したのが僕が小学校卒業くらいのときだから僕が知らないのも当然なのかもしれない。

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「僕今日用事あるから無理だよ。」

行くのが嫌だったからというわけではなくこの日に限っては本当に用事があった。

「なんだよ乗らねーなぁ」

ガッカリした声でMがいう。そして続けて

「いいよ。Fといくから。」

当たり前のようにいうMにFがこう突っ込む。

「なんでやねん。」

必死に抵抗するFにMが一言。

「あの話、バラしちゃって良いのか?」

Fは行くようだ。

Mが何を知っているのかはあえて聞かなかった。

何人か別の人を誘っていくようだ。

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次の日、登校するとMが見えた。

走って駆け寄り、「おはよー」

Mの肩を叩きながら言う。

「昨日のS幼稚園の話聞かせてよ」

「なんか変なのは見つけたけど特になんも出なかったよー」

Mがダルそうにいう。

「聞かしてよ。」

「あ?だから出なかったって。」

「とりあえず話してよ。」

話を詳しく聞くと、あのあと結局MとF以外に二人友達を誘っていったそうだ。

幼稚園の造りは

正面玄関から入ると長い廊下が一本あり、その廊下に沿うようにして教室が並んでいて、その一番奥にピアノのある音楽室がある。

というものだった。

僕は懐かしさをおぼえながら続きを聞く。

4人で入り、長い廊下をコツンコツンと歩いていたそうだ。

そして一番奥のピアノのある音楽室に行ったところ特に何も出なかったらしい。

ただ、友達が

「おいあれ見てみろよ。」

と何かに懐中電灯の灯りを向けた。

どうやら地下に繋がる階段のようだ。

そして誰かが

「おい降りてみようぜ。」

といったが皆は

「なんか気持ちわりーし帰ろうぜ」

といって帰ることにした。

という内容のものだった。

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この話にはおかしな点が2つある。

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wallpaper:38

僕が通っていたS幼稚園には地下へ繋がる階段なんてないことと、降りてみようぜ と 言ったのが未だに誰だかわからないということだ。

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