中編7
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井戸

こんにちは。

私は温泉で有名な県で生まれ、暮らしている社会人一年生です。

私の住んでいる地域は、過疎化も進みジブリ映画の、となりのトトロみたいな雰囲気の場所です。

若い人はほとんどこの地域から離れています。中学生の時までの同級生はほとんど隣町や、もっと便利な市に移ってしまいました。

私は大学は県外に出ていましたが、長男である兄の具合が悪く、実家の後々のことも考えて私が戻ってきています。

兄は自宅で療養中です、と近所の人には言っています。

ですがそれに関しては私の家族で必死の嘘をついています。

今日このように投稿したのは、呪いの怖さを色々な人に知って欲しいと思ったからです。

あとは単純に、平凡な家庭で生まれてきた私が親からいきなり真実を聞かされて動揺したからです。少しでも誰かに話して楽になりたかったのだと思います。

この話を聞いたあと、自分の家族、特に親の兄弟について、一度調べてみて下さい。

あと、自分の親が山など持っていませんか?

林などになっている土地でも構いません。

私が親父に、実家に帰ってこいと言われたのは大学3年生の時です。

県外の大学にいたので、そのままその県で就職するつもりでした。

兄は実家にいたから安心してましたし。

兄は俺よりも4つ年上です。

俺が高校生の時位から急に人が変わって必要最低限のこと以外話さなくなりました。

元々親父も寡黙ということもあり、家の空気に耐えられなかった私は早く家を出たかったのです。

実家には大学に入ってから一度も帰りませんでした。私から家に連絡もすることもなかったから親父から連絡が来た時には何事かと思いました。

電話で言われたことは

頼む、戻ってくれ。

でした。兄もいるから大丈夫だろうと言っても親父は譲りませんでした。

ひとまず実家に帰ることにした私は様子が変わった我が家を見ることになりました。

『親父、大分痩せた気がするけど大丈夫か?』

親父は専業農家をやっており、恰幅の良かった最後の姿からは想像もつかない位痩せていました。

親父『少し大変になってきてな、頼れるのがお前しかいない。悪い。本当に悪い。』

『兄貴は?どうしたの?』

親父『あいつはもう多分難しいんだ。その話もしないといけないから呼んだ。この話はあいつが成人してからあいつには話してある。かなり、意味分からん話かもしれないから怒らないで聞いてくれ。』

親父の話をまとめるとこういう内容である。

私たち家族の名字は佐々木である。普通の名字であるが、私たちの佐々木はある呪いを受け継ぐ家なのだそうだ。

代々、佐々木の長男は三十を超えるまで生きていられない。

よく考えれば親父は次男であり、叔父さんに当たる親父の兄は俺が小さい頃に亡くなっている。

佐々木の長男は成人を超えると段々異変を生じる。

急に内向的になり、聞き取っても意味の分からないような言葉を呟きだす。

通常の意思疎通が困難になってくる。

時期や時間関係なく、佐々木家所有の山にある桜の木に縄をかけて自殺しようとする。

夜中の大体決まった時間に集落の外れにある今は誰も使っていない井戸へと何度も頭を下げて離れようとしない。

私が、家を出てから三年近く兄はずっとこの調子らしかった。

兄の様子が変わり出したのはちょうど成人したあたりだったことを思い出す。

親父が言うには、佐々木家は蛇の呪いを、受けているとのことであった。

ある程度の話を聞いたところで、実際兄は今どうしているのか親父に聞いた。

すると今は裏の畑で雑草を取っているという。

会って話してみろ。

と親父に言われて私は裏の畑へ行った。

そこには以前と何も変わらない兄が畑仕事をしていた。

『兄貴。ただいま。』

兄『おかえり…え?Sか?(私の名前として考えて下さい)』

『大分家帰ってなくてごめん。たまには戻ろうかと思って。』

兄『??お前いきなりでかくなったけどどうしたんだ?あれ?俺がおかしいのかな。はははは。そうか似たやつか、そうだよな。あまり人をからかうなよ君。』

兄がなにを言っているか理解出来ませんでした。

家に戻って親父に話を聞くと、やっぱりなという顔をした。

兄はランダムではあるが月に一度あるかないかで正気に戻ることがあるのだと言う。

ただ何故かは分からないが兄が高校生位の記憶で正気に戻るようであり、そのため私が記憶している人間よりも大きいのでそんなことを言ったのだろうと親父は言った。

つい先ほどは、兄は痩せ細った親父のことが自分の親父だと分からなかったという。

親父は私が出ていってから一人で兄のことを面倒見てきた。

夜中に井戸へ行くことは次第に慣れて、その時間に兄を井戸まで迎えに行くようになった。

ただ、山へ行く時期も時間も規則性なないため、いつも兄のそばを離れることも出来ず、満足いく睡眠もとれていないのだと親父は言う。

一度、畑仕事をしている時にフラフラと山へ入る兄を遠くから見つけた父は兄を追ったらしい。

首を吊って足をバタつかせていたところに間一髪親父は間に合ったという。

親父の兄の奇行に対しての対処に何故か手馴れている印象を私は受けた。

それもそのはずだ。

親父は自分の兄の時も同じように対処してきたのだ。

ある意味もう、慣れっこだよな。

遠い目をして苦笑いする親父に対して、私は全くの他人と話している感覚になった。

そんなにしんどいならば、いっそ兄を楽にさせても…という考えになったこともあったらしい。

だけど、時々正常に戻る我が子を見ると、どうにかしたい気持ちになるんだよ。お前も親になれば、分かるかもしれないな。

このセリフを親父が言った時に私は久しぶりに泣いた。

親父が私を呼んだ理由は体力的な限界ということもあるのだが、まだ別の理由があるという。

私がもしこれから結婚をして、子供をもうけるとする。

そして、その子が男の子であればその子は呪われた子として30まで

生きられない。

親父は段々と異変が起きている兄を見て、次男の私だけは家から出して自由に生きて欲しいと思ってくれていたようだ。

確かに家の空気は重く、絶対に大学はこの家から出たいと決めていた。

県外の大学へ行きたいと親父に言った時に、そういえば喜んでいた気がする。

当時の私は、長男が家にいるから、早く厄介者の私を親父は追い出したいのかと思っていたが、どうやら違うようだ。

私が家を離れてから親父はこれで良かったんだと思っていたが、やはり年齢的にも私が子供を作ってもおかしくない年齢になるので、本当のことを話さなければいけないと思ったらしい。

ここまで親父が、順を追って説明をしてくれているにも関わらず、私は半信半疑だった。

呪いなんて今まで縁もないし、幽霊とか見たことも無い。

心霊スポットで、キャーキャー言っている女の子に抱きつかれて喜ぶ位だった。

ただ、さっきの兄の様子を見るとやはり笑って誤魔化すことも出来なかった。

呪いの元について話前に、実際あいつの様子を一日見てみてくれ。

見てから話せばこの呪いの怖さが分かるから。

親父は、特に井戸へと謝る兄の様子を見てくれと私に言った。

頭がこんがらかったまま自分が使っていた部屋に一旦戻った。

疲れていたのか小一時間ほど寝てしまった私は昼過ぎに目を覚ました。

視線を感じてドアの方をみると兄が立っていた。

『寝ちゃってたよ兄貴。さっきは俺のこと分からないみたいなこと言ってたけど、久しぶりの弟にそりゃきついよ。』

兄『($&4@64235(/$$6:@)9(&&(47(』

ハリーポッター見たことありますか?ハリーポッターが蛇語を話すシーンがあったのですが本当に、あんな感じの声を出していました。

うつろな目をした兄は兄の部屋へと行った。

これは冗談ではないなと思った。

後を追いかけるて兄の部屋を開けるとなんだか異常に、臭う。

六畳の部屋は生活感はまるでなく、床はホットカーペットが敷いてあり、なにやら色々なシミが、ついている。

布団のようなものがクシャクシャになっており部屋のカーテンはビリビリに破けている。

あんなに好きだったBzのCDは部屋になく、よく弾いていたギターも部屋には無かった。

部屋の中央には、まるで犬や猫が丸まって寝ているように兄がうずくまっており、異常なまでの眼光で私を睨みつけていた。

親父に聞くと、排泄は自分で出来ないので老人用のオムツをしている。

箸を使っての食事は出来ないので皿にご飯を盛り、おかずを乗っけたものを部屋に持っていくのだという。

実際に目の前で箸を使わずに獣のように飯を貪る兄を見たが、本当にショックだった。

親父から、また夜中に起こしに行くからなと言われて私は自分の部屋へと戻った。

一日もいないのに自分の実家が別の世界のものに感じた。

部屋のモー娘。のポスターは相変わらず自分の青春の一ページなのに。もはや自分の部屋だけ異空間な気さえした。

人間テレビも無いとあっという間に寝れるらしい。

次に目を覚ました時は親父が肩をゆすっている時だった。

あいつが出た。

行くぞ。

まだ冬場だったので外は異常に寒い。

隣の家まで500メートルなんて場所で外が明るい訳がない。

親父は懐中電灯。俺は携帯のライトで親父の後を追った。

元々この地域はもっと家もあった。だからこそ井戸も比較的私の実家の近くにあった。

近くと言っても歩いて7〜8分はかかるが。

隣の家まで500メートル離れてしまったのには訳があるが、それはまた後ほど書く。

井戸は鉄の蓋が被せてあり、人が落ちることは無い。

暗がりの、中だが物音が段々と大きくなってきた。

父が懐中電灯を照らすと、そこには頭を地面

にこすりつけて訳の分からない言葉を発する兄がいた。

時折井戸へと手を回して頬ずりをする兄の顔は何故だかうっとりしていた。

背すじがゾッとするということはこれなんだと初めて思った。

ダメだ。丁寧に説明しながら書くとこんがらがります。

すいません。呪われた理由などについては、また追って書かせて下さい。

失礼致しました。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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