中編6
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三日夢

三日夢というものが存在する。

殺したい対象の所有物を枕の下にして眠りにつくと相手が不幸になるといういたって簡単なものだ。

しかし、条件がある。

儀式を行ったその日から三日間に渡り悪夢に苛まれる。

そして、その3日間をすぎ無事なら相手にのろいがかかるのだ。

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前置きはこれくらいにして本題に入るとする。

私には殺したい人間がいる。

だから、この三日夢をためそうと思ったのだ。

行うことを決断してからは、早かった。

その日のうちに相手の所有物を盗み実行に移した。

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一夜目、呼吸が躊躇われる程の悪臭の中、私は周囲を見回した。

周囲には用途のしれない機材が数台。

私は体が動かそうとするが全く動かせない。

私は焦った。

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しかし、私の焦りもむなしく体はいうことをきかない。

そんな私の焦りをしっているようにタイミングよく外から靴音がきこえてきた。

靴音が私の焦りを余計募らせる。

靴音が部屋の前まで来て急に止まった。

一瞬だが緊張が僅かに緩んだ。

しかし、次の瞬間勢いよく扉が開かれ私の心臓が再び早鐘を打つ。

白衣を着た男が中に入ってきた。

異様な物が目に入り私は目を疑った。

チェーンソーだ。

禍々しい存在感を放つチェーンソーは薄暗い室内だと余計薄気味悪い。

そのチェーンソーを持った男は一歩、また一歩と近づいてくる。

私の緊張と焦りはピークに達した。

全身に悪寒がはしり筋肉が強張るのを感じた。

男は私の前に立つと一礼し禍々しい物を起動させた。

嫌な機械音が部屋中に響いたと同時に右腕にチェーンソーの刃が食い込んだ。

肉が飛び散り血が刃にまとわりつく。

私は身が寸断される激痛に意識がとびそうになるのを必死に耐えた。

叫び声をあげようにも舌が回らない。骨が砕けちる音とチェーンソーの機械音が合わさり異常な雑音が耳を襲うが耳を覆うことすらできない。

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右腕は切断された。

男はただ無表情に私を見つめる。

その男の無表情はある人物を連想させた。

私が呪いをかけようとしていた人物だ。

理性と感情が欠落したあの男の顔が、私の脳裏に鮮烈によみがえった。

気がついたら私は涙を流していた。

三日夢なんかしなければこんなことにはならなかったと一瞬後悔がよぎる。

私はあわてて後悔を振り払った。

私は間違ってないと必死に自分自身に言い聞かせた。

私が思いを巡らせていた間に男は左腕の切断に取りかかる所だった。

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再び体をはしる激痛に私は身悶えた。

男は相変わらず無表情を崩さない。

私はあの男の影を必死に振り払った。

次第に私の意識は薄れ一夜目が終わった。

私は汗の不快感で目をさました。

体をおこし全身にかいた汗をふきながら私は昨日の悪夢を思い返した。

チェーンソーの機械音と飛び散る肉片、そして白衣を着た男の無表情が脳裏によみがえった。

体に不快感がまとわりつく。

私は挫けそうな自分を励まし二夜目に備えた。

二夜目がやってきた。

部屋には一枚の鏡を除きなにもない。

部屋全体には昨日の悪夢と同じ臭いが充満していた。

いや、正解には違う。

血の臭いと薬品の刺激臭を混ぜたような奇妙な異臭が部屋全体を汚染していた。

原因は私の両腕だ。

昨日の悪夢の続きなのか私の両腕は切断された状態だ。

鏡に映る両腕からは血が止めどなく流れていく。

痛覚が麻痺してしまっのか痛みが感じられない。

声が出せない。

体も動かない。

人形になったようだった。

生きる気力が徐々に削がれていく。

鏡は私を嘲笑うように醜い姿を映し続ける。

だが何の変化もなかった鏡に突如異変が生じた。

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血が滴りおちる右腕の切断面に白いものが現れた。

目の錯覚を疑ったが白いものは徐々に数を増やしていく。

それは私の肉の上でまるで踊るように這っていた。

それは蛆だった。

蛆が私の肉を貪っていたのだ。

痒みと生理的嫌悪感が私をいたぶる。

蛆は異常な速度で肥大化していくのがわかった。

吐き気はするものの吐き出すことはできない。

楽になりたい。

だがどうすることも出来ない。

私は理性を殺しひたすら時がすぎるのをまった。

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どれだけたったのだろうか。

鏡では私の醜態が変わらず晒されていた。

もはや羞恥心すら沸き上がらない。

なんでもいいから早く終わって欲しい。

そんな私の思いは当然のように裏切れる。

鏡が再び変化を始めた。

まだ幼い頃の私と例のあの男が鏡にあらわれた。

九歳の時のだろうか。

私がまだあの男になついていた頃のやつだ。

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むかつくほどの満面の笑顔をあの男に向けていた、

おそらくあの頃の私が一番幸福だったに違いない。

鏡は祭り帰りの私達を映し出す。

もうすぐだ。

場面は切り替わり二人が人気のない川沿いにさしかかった所を映していた。

私達は川沿いでしばらく話をしていた。

しかし私はそこで失言してしまった。

「どうして○○○○は笑わないの?」

その一言で、たったその一言で簡単に壊れてしまった。

彼は私を強引に引っ張った。

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それまで彼は私に対して一度も暴力をふるったことはなく怒ることもほとんどない温厚な人間だった。

しかし、彼は壊れてしまった。

理性が死んだ。

川に向かって彼は歩みを止めない。

抵抗するものの子供の力で抗えるはずもなくズルズル川まで引きずっていく。

私は何度も叫んだ。

しかし、誰も助けはこない。

それも当然だろう。

本来この場所は村から離れた場所にあり昼間でも人は滅多に立ち寄らない。

駄目だと知りながら私は何度も叫んだ。

何度も、何度も頭が水に沈むまで叫び続けた。

顔が沈むと同時に大量の水が体内に流れ込む。

息苦しい。

抵抗すればする程喉が圧迫されるような苦痛に私は次第に意識が薄れていった。

最後に見たのはあの男の例の無表情だった。

二夜目の終了と同時に私は目をさました。

体が僅かに痙攣し汗の不快感も昨日にまして酷い。

心臓の規則的な音すら気味悪く不快だった。

あと一夜過ごせば全て終わる。

そう、あと一夜でなにもかも終わる。

三夜目、最後の夜はゆっくり始まった。

場所は一夜目、二夜目と同じ白塗りの部屋だ。

だが決定的に違うのは両腕は切断されておらず体も自由がきいた。

そして、部屋の中央には例のあの男が柱にはりつけ状態になっていた、

柱にはさらに男を殺せと書かれており柱の下には鞭、ロープ、槍、包丁、斧など様々な物騒な物が置かれていた。

私は拍子抜けした、

まさか最終日にきてこんな馬鹿馬鹿しいことをするとは思っても見なかった。

私は男を眺めた。

例の無表情を一切崩さない。

感情すらこの男には欠落している。

彼がどうしてここまで壊れてしまったのか私はいまだに理解できない。

だが、理由はなんにせよ私にはこの男をゆるすことはできそうにない。

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私は近くにあった槍を拾い上げおもいっきり突き刺した。肉の確かな手応えに思わず笑みがこぼれる。

損傷した内臓が穴から僅かに顔を出す。

と同時に槍を一気に引き抜いた。

鮮血が勢いよく飛び散り私の服を赤に染めた。

引き抜いた衝撃で内蔵が破壊され小さい肉片になり周囲に散らばる。

これで終わった。

私は安堵した。

そう思った直後辺りに飛び散った肉片が彼の穴を塞ぐように元に戻り始めた。

私は絶句した。

私は槍を手放し今度は斧を手に取り頭に刃を叩きつけた。

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刃が頭に食い込みやがて裂けた。

肉が形を歪め周囲に飛び散る、

しかし、数分で元通りに蘇生される。

男はなにも言わない。

例の事件のあと彼はすっかり変わってしまった。

彼は私に暴力を振るうようになった。

殴る蹴るは勿論、アイロンを押し当てられた。

バッドで腹を殴ることもあった。

食事を与えられない時もあり、空腹が酷い時はゴキブリすら喰らった。

だが、全てことが終わると私を抱きしめ泣きながら謝るのだ。

斧をおき包丁を握りしめる。

全体重をかけ彼におおいかぶさる。

彼は変わらず無表情だ。

私は感情に身を任せ何度も彼の体を刃で貫いた。

一瞬だが彼の優しかった時の笑顔がフラッシュバックする。

もう限界だった。

お願いだから死んで。

私は何度も心の中で叫んだ。

以上が彼女の日記からの抜粋である。

その後彼女は目を覚ましたがすでに正気ではなくなっていた。

僕はすぐに精神病院の手配し数日後には入院した。

そして、病院内で今も叫び続けている。

「お願いだから死んで」

そう、僕に対してね。

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