長編10
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狂魂鏡

うちの学校には昔から語られる伝説や怪談が数多く存在する。

その中で今は使用されていない女子更衣室にまつわる奇妙な話がある。

使用されていない理由はある行方不明事件が頻発したことが原因だった。

始まりは定かではない。

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この更衣室には大きな鏡があり,1時44分44秒にこの鏡の前で手を合わせとある呪文唱えると願いが叶うとかいう胡散臭い噂である。

当然のようにこれを実行する馬鹿があらわれる。

それが一人や二人じゃないから困ったものである。

そして、こんな胡散臭い馬鹿な噂が流れて一年の間に行方不明者が12名も出るのだから洒落にならない。

その12名に共通するのが全員この怪しげなおまじないをやったらしいということだった。

らしいというのは確かめようがないからだ。

そのうち9名がおまじないをやることを周囲の人間にいっていたようだ。

全く馬鹿げた話だ。

これは全員だが鏡の前で本人達の靴が毎回発見されたらしい。

全て状況証拠ばかりで決定的な証拠はなにひとつないわけだが学生にはこの鏡が曰く付きなものと断言するには十分だった。

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当然のように根拠のない噂話が生徒達の間で囁かれるようになる。

この鏡は人をあの世へ連れ去るのだというありきたりなものだったが一時は怖がって女子更衣室に近寄れない生徒が多数あらわれ問題になったそうだ。

まあ、学校側としても噂は胡散臭いものだがなにも対応しない訳にはいかない。

この部屋の使用を禁止したのである。

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さて、何故こんな胡散臭い話をしたかと言えば今から実行するからだ。

我ながら馬鹿な人間である。

ただ、こんな馬鹿馬鹿しいことに頼る程状況が切迫しているのだ。

ご理解いただきたい。

時刻は1時40分をたった今まわったところだ。

不気味な静寂の中、時計の針が時を刻む。

針が進むたびに心臓が激しく鼓動する。

5秒を切った。

4、3、2、1,そしてその時は訪れる。

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「狂い汚れし魂は闇に葬りましょう。人を喰らった魂は八つ裂きにして暗い闇に葬りましょう」

呪文を唱える。

にしても気味悪い呪文だ。

考えた奴はどうかしてる。

緊張のあまり溜まっていた唾を飲み込む。

しかし、なにも起こらない。

所詮学校の怪談話だ。

真剣になるほうが馬鹿なのだ。

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そう、自分に言い聞かせ諦めて帰ろうとした。

その瞬間だった。

突如頭部に殴られたような痛みがはしりその場に崩れ落ちた。

薄れていく意識の中かすかに子供の笑い声を聞いたきがした。

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気がついた時には頭部に感じた痛みは感じなくなっていた。

自分の身に何がおきたのかと慌てて周囲を見回しあることに気がついた。

時計は1時44分を指したまま止まっていた。

おかしい。

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時間が全く進んでいない。

自分が倒れたのが少なくとも1時44分以降のはずだ。

先程まで時間を刻んでいたのは何度も確認したから間違いない。

更に俺を驚かせたのは本来あるべきものがないのだ。

例の鏡だ。

倒れた衝撃で頭がいかれちまったんじゃないのかと自身の正気を疑った。

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頭がグラグラしまともに思考できない。

これ以上考えても意味はない。

俺はとりあえず校内を探って見るかと女子更衣室を出ることにした。

異常なまでの静寂に包まれている。

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先程まで僅かに聞こえていた虫の音ひとつしない 。

トイレの前まできて決定的な異常に気づいた。

トイレの貼り紙に書かれている使用禁止の文字が鏡映しになっていたのだ。

昨日からトイレ改装工事のため使用禁止になっていて俺も昨日この貼り紙を確認しているから印刷ミスではないのは確かだ。

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異常をはっきり認識した瞬間景色が突如歪んだ。

激しい頭痛と吐き気、そして目眩を感じ俺は自分の過ちを後悔した。

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早くこの場から逃げないと取り返しのつかないことになると直感が告げていた。

しかし、体が思うように動いてくれない。

あまりのもどかしさのあまり思わず歯噛みする。

気力でどうにか立ち上がる。

周囲は相変わらず歪んで見える。

だがこんなことに構っていられない。

俺は決意し足を一歩踏み出そうとした瞬間足首を冷たい何かが触れた。

鳥肌がたった。

周囲からは先程までなかった生ゴミと鉄を混ぜたような胸糞悪い悪臭が立ち込め鼻がやられそうになる。

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俺は疲労困憊の体に鞭をうち無我夢中で走り出した。

迫ってくる気配はない。

階段を一気に数段飛ばしで降りる。

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心臓の鼓動がうるさい。

二階にさしかかり止まった。

いや、正確には止まるしかなかったと言った方が正しいのかも知れない。

下から足音が聞こえ誰かが上がってくる。

体が硬直した。

足音が徐々に近づいてくる。

立ちくらみがする。

頭がグラグラし思考が全く追い付かない。

足音は気味悪いくらい規則的だ。

何かの楽器の演奏を聴いているようだ。

楽器の音色は人に安らぎと癒しを与える。

だがそれとは真逆に人を酷く不安にさせる不思議な音だった。

聴いているだけで発狂しそうになる。

だが、あと少しで姿が確認できるという所で足音が急に止まった。

俺は一気に脱力した。

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緊張が緩む。

だが、よく言われることだがこういった状況下では一瞬の気の緩みが一番危険なのだ。

すると好機を狙っていたように頭上から何かが落ちてきた。

瞬間、からだ中の血が引いた。

それは腐敗しながらも原形を僅かにとどめた歪な人間の腕だった。

見てはいけないのはわかる。

だが、確認しない訳にはいかない。

おそるおそる天井を見上げた。

「ぎゃあああああああああ」腹の底が張り裂けるのではないかと思うほどの絶叫が校内中に響き渡った

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それは一種の出来の悪い泥人形のような奇怪なものがそこにはいた。

目はつぶれ片腕は大部分は失いながら中途半端にそこに片腕があったことを主張する。

絶えず片腕から肉が床に落ちる。

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皮膚は肉がむき出しになり腐敗が酷い。

だが、信じられないことだがそれは体つきから推測すると子供であることは疑いようがないのだ。

しかも、酷く痩せ細り針金のような体だった。

その泥人形は天井と一体化したように貼り付いていてこちらを見つめていた。

もはや先程みたいに絶叫する気力も逃げ出す気力も沸いてこない。

「ふははは」場違いな笑いが漏れる。

天井に貼り付いていていたものはゆっくり剥がれ落ちてきた。

近くで見ると想像以上に小さい。

おそらくは小学生くらいだろう。

近づいてくる。

近づけば近づく程 足音の際に感じた悪臭に鼻が狂う。

奮い立たそうとするが一度萎えた体は頑として受け付けない。

精神的にもそろそろ終わりが近い。

泥人形が腐敗した肉を垂らしながらゆっくりこちらに向かってくる。

まるで昔見た某映像作品のようだなんて呑気に思うほど思考が混濁していてまともに考えがることが出来ない。

人間追い詰められると現実がかえって見えなくなるのだなと改めて思う。

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これも一種の現実逃避だ。

泥人形が目の前まできた。

指がゆっくり俺の喉元を締め上げる。

腐敗した指はゴミでも擦り付けられたように穢らわしい感触だった。

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だが、それ以上に驚愕すべきは痩せ細った見た目に似合わない力だった。

異常なまでの力によって俺の首は悲鳴をあげる。

指が首を圧迫するたびに奇妙にねじ曲がる。

徐々に呼吸が苦しくなり必死に空気を求めてもがくが当然のようにまともに呼吸ができる筈もなく足掻けば足掻く程意識が遠のいた。

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もう死んでしまえばいいんじゃないかという声が聞こえてくる。

苦しむだけだ。

声は俺を諭そうとする。

諦めて死ねば楽になれる。

「それが君の答え?」

別の声がする。

馴染み深いどこまても冷たい声だ。

笑いがこみ上げる。

死ぬのが答えだと?

笑わせるなよと声に向かって心の中で叫んだ。

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死んでいた感情が蘇る。

「俺にはまだやらないといけないことがあるんだよ」

腹のそこから声を絞り上げる。

「そう、わかったわ」

瞬間、泥人形の動きが止まる。

「鬼神様、鬼神様どうかお引き取りください」

声が響き渡る。

「それはあなた様が求めるものではございません。速やかにお引き取りください」

底冷えする程冷たい声だった。

泥人形の潰れた目が一瞬だが見開いた。

それは、天使のように澄んだ目だった。

気がついた時には俺はもとの女子更衣室の鏡の前でたちつくしていた。

「間に合ったようね」先程の冷たい声が背後から聞こえる。

後ろを躊躇わず振り向いた。

そこには巫女装束に身を包み手入れのよくいきとどいた黒髪をなびかせた俺のよく知る人物が立っていた。

暗条光先輩、この学校の生徒会長である。

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「君には話しておいたほうが良さそうね。鬼子伝説について」

鬼子?さっきの泥人形のだろうかと思わず身構えた。

「鬼子とは人間が様々な要因によって化け物に転生した元人間のこと」

先輩は淀みなく言葉を紡ぎ続ける。

「人間が化け物に変わる話は日本中に存在している。そして、この町臥薪町に伝わる伝説が鬼子伝説」

生まれて十数年全く聞いた覚えがない。

するとこちらの思考を読んだように恐ろしいことを口にした。

「当然よ、町民に知れないように隠蔽してきたんだから」

隠蔽してきた?誰がなんのためにそんなことをしたと言うのだ。

「私達の一族が君たちのような力のない人間達に害が及ばないようにするために決まっているでしょう」

先輩は話を進める。

「話は一旦広まると中々収まりがつかない。普通の害のない噂ならいい」

でもねと先輩が口調を改める。

そう、淡々とした口調から何かを楽しむような不気味な調子に変化する。

背筋に緊張がはしる。

「鬼子伝説をはじめ数は少ないけど確実に存在する。人間に害を与える物語が」

そこで、再び調子を元に戻し話を続ける。

「さて、本来に入るわね」

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そこで一旦間をおき話が再開される。

「昔々ある所に一人の男の子がおりました。男の子は大変貧しい家柄の子供なので異常な程痩せ細っていたそうです」

淡々とひたすら淡々と語られる。

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「絶えず周りの人にご飯を求めるようになり挙げ句の果てにはゴミあさりをはじめる始末、周囲からはこじきだの盗人だといみきらわれておりました」

先輩の巧みな話術に内容云々引き込まれた。

「そんなある時事件がおきました。村一番の金持ちである大地主の家に盗みを働いたものが表れたのです」

先輩は心底憐れむようにだいたい話の筋が見えてきたでしょうと言った。

「当然疑われたのは村一番の嫌われ者である例の男の子でした」

話は確かに見えてきた。

しかし、話がいちいち回りくどくて構わない。

ろくな結末には成りはしないんだからと心の中で呟いた。

「彼は捕らえられ厳しい尋問と拷問にさらされました。当然のように両親、そして男の子は無実を主張しましたが受け入れてもらえません」

固唾を飲んで物語に聞き入る。

手を強く握りしめていたせいか汗が大量に噴き出していた。

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「彼は日に日に衰弱していき誰もいない壁に向かって怯えたり怒鳴り声をあげたりまともな状態ではなくなっていったそうです」

一瞬静寂が訪れる。

見ると先輩は呼吸を乱しており俺が心配して近寄ろうとすると「来ては駄目」

と悲痛な叫び声をあげた。

すぐに先輩は大丈夫だからと付け足した。

再び静寂が二人を包む。

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その静寂は先輩の声によって破られる。

「そして彼は死んだ。両目を潰され片腕はもぎ取られた無惨な状態で死んでしまいました」

俺は例の泥人形を思い出す。

気を緩めればまたあの悪臭が漂ってきそうで俺は思わず鼻を塞いだ。

先輩はそんな俺に構うことなく話を続ける。

「両親には彼が死んだことだけ告げ死体を返してほしいと懇願する両親の訴えを頑として聞き入れませんでした」

酷い話よねと全く感情がこもってない声で呟いた。

「両親は絶望し心中をはかり死にました」

吐き気がする。

聞くに耐えない話だ。

「でもね、まだこの話には続きがあるのよ」

は?もう充分だろう。

これ以上なんの話があると言うのだ。

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「全て自作自演だったのよ」

絶句した。

何を言ったのか全く理解できない。

「村ぐるみの陰謀だったのよ。盗人が入ったのも嘘っぱち、全ては目障りな人間達を、抹殺するためのね」

俺は目の前の椅子を怒りのあまり激しく蹴った。

狂ってやがる。

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「家族の死体は晒し者にされ毎日のように石を投げつけれたそうよ」

これが鬼子伝説よと淡々といってのける。

「それにより誕生したのがあなたが遭遇した化け物よ」

でもどうしてあの鏡の中にいたんだ?突如疑問が生じる。

「あの鏡は狂魂鏡といって強い化け物を封じるために作られたものでこの学校に設置しているのは風水的にここが一番恵まれているからよ」

機械のように淡々とした口調が無性に腹が立った。

どうしてそんな内容をはなすのに淡々としていられるのか理解に苦しんだ。

「私は狂魂鏡に異常が察知しすぐに駆けつけた。まあ間一髪だったけど」

頭に冷水をぶっかけられたような軽い衝撃に襲われた。

そうだ、彼女の態度は気に入らないが紛れもなく彼女が俺を助けてくれた事実は変わらない。

「勘違いしているようだけど完全に助かった訳ではないわよ」

面食らった。

完全に助かった訳ではないとは一体どういうことだと先輩に訪ねようとした時突然首が締め付けれるような痛みがはしり思わずその場にしゃがみこんだ。

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「鏡をご覧なさい」

言われるままに鏡を覗きこむ。

俺の首には絞められた痕がくっきり残っていた。

「それは君にかけられた呪い。君はそれに生きている限り束縛され苦しみ続けることになる」

自分の痣を眺める。

一生束縛されながら生きないといけないと先輩は言った。

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それがどれほど恐ろしいことが俺には想像できない。

「一生苦しみなさい。それが軽々しく異界に触れようとしたあなたの義務よ」

そして先輩は俺に背を向け部屋を出ていった。

先輩が出ていく時でも生きてて良かったと小さい呟きが聞こえた気がした。

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閲覧数コメント怖い
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閲覧数560越えました。
ありがとうございます

閲覧数450越えました。
皆様ありがとうございます

コメントありがとうございます。

ちょっと前までは自分で怖いつけられる仕様だったと思います。
自分前一回間違えてして怖い押してしまったことあるんです。
自分で消せましたが

自分の話に怖いは付けられないはずじゃ……怖!!!

いつのまにか閲覧数350越えてた。
読んで下さった方本当にありがとうございます