中編3
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憑かれた出張③

これは9年前の8月中旬頃の話です。

当時私は2t箱車のトラックドライバーをしておりました。

道東担当で毎週1泊2日の決まったルートを走るルートセールスってやつです。

いつもの様に営業を終え旭川に向けて帰っている途中の話なのですが・・・・

釧路から旭川に抜ける大雪山越えの最短ルートの途中に糠○という寂れた温泉街がありまして

すぐ側に糠○湖というダム湖があります。

この一帯は道内でも有数のマニアックな場所として一部の同胞たちの間では聖地の様な地区なのです。

ダムや古い温泉街にまつわる心霊話、廃墟、廃鉄道などなど話題は尽きません。

その日も時刻は21時頃、温泉街を抜け○国峠に向かう三叉路を右折します。

駆け込みのお盆参りなのか20代の若い男女5人がその三叉路で

花やジュース・缶ビール・お菓子などを手向けている姿がヘッドライトに写り見えます。

多分友達でも事故で亡くなったのでしょう。

8月中頃とはいえココは大雪山の上り口なので夜になれば息が白くなるほど気温が下がります。

若者たちもパーカーや薄手のジャンパーなどを身に着けておりました。

「なんもこんな時間にやんなくてもいいの

になぁ~」

私はそう思いながら峠に向けて走ります。

若者たちに会ってから丁度2Kmほど走った直線道路で100m位先に人影を見つけました。

夜の山道ですからHiビームにしていた私はその人影に何故か釘付けです。

近づくにつれてその人影は白いランニングに光沢のある白いパンツを身に着け

ランニングをしている男性であることが判りました。

私と同じ進行方向で街灯一つ無い暗闇の中を温泉街から走ってきたのでしょう。

一見、場違いのように思うかもしれませんがこの温泉街は

夏冬通してスポーツ系の学生達の合宿地として

利用されていたのでその時は不思議には思いませんでしたし走っている後姿は

変な話ですが人間そのものでした。

トラックなどの大きな車に乗る人は判って頂けると思いますが歩道も無い道で

歩行者を追い抜く時ってサイドミラーで一応確認しますよね。

私も抜いた瞬間サイドミラーで確認をしたんです。

・・・・・・・・いないんです。

今抜いた筈の彼が・・・・・・

100mも先から目視している人が消えたんです。

私は「あれ?巻き込んだ?」と思いすぐに車を停めて後方に向かいます。

「大丈夫か~~~い?」

返事はありません。

追い抜いた地点まで確認に戻り道路脇まで探しましたがいません。

一応、車の下まで探しましたがいないんです。

わき道などもある筈も無く・・・・・・

「くっくっくっくっくっ」(笑いを堪えているような声)

山の冷え込みも手伝ってか急に鳥肌が体中

に「ブヮ~~~!」と走りました。

「くはっはっはっはっはっ」

どこからと言う訳でもなく山全体から聞こえて来る笑い声が響きます。

私が走って車に乗り込む時には

「はひ~ひっひっひっひっひっひっ」

狂った様な叫び声に変わっていました。

逃げるように其の場を立ち去りましたが曰く憑きの峠道をひたすら走り

層雲峡の灯りが見えるまで生きた心地がしませんでした。

携帯を取り出し嫁に電話しました。

「玄関に塩なぁ~」

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