短編2
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小さな命

9月14日

朝から頭痛が酷い。

何も食べていなかったが頭痛薬を飲んだ。

ソファに横たわりスッキリを見ていた。

前触れも無く、何かが目の前を横切る。

「ん?!オーブ?!」

朝っぱらから珍しい現象だったがはっきり見える。

家族は誰も見えていない様だ。

「オーブ」はその後も出てきたりいなくなったりを繰り返していた。

夜になるとラップ音も鳴り出した。

「ピシっ!ピシっ!」と家が軋む様な音だ。

さすがにこれは家族にも聞こえる。

「オーブ」こそ見えないが、そんなことが3日も続くと家族も怖がり始めた。

原因がイマイチ掴めず私もどう対処すればいいのか判らなかった。

しかし邪悪な気配はまったく無かったので家族には「心配ないよ!その内いなくなるから」と話した。

しかし「オーブ」も「ラップ音」も治まる気配無く7日目の夜が来た。

嫁も娘も床につき私はいつもの様にPC部屋でネットサーフィンに勤しんでいた。

嫁が「電気代!電気代!」とうるさいので部屋の中はPC画面から洩れる光以外に光源は無い。

私とPC画面の間を「オーブ」が横切り

「ピシっ!」と「ラップ音」

「またかよ・・・・・」

「いったい何なんだ??」と思っていたらすぐ横の棚から微かに音が聞こえた。

耳を澄ますと・・・・・

「カラン・・・・カラン・・・・」

甲高い小さな音・・・・聞き覚えのある音だ!

私は「ハッ!」とした。

お盆などで納骨堂に入ったときに聞こえてくる音・・・・骨の崩れる音だった。

我が家では猫を飼っていた。

雑種のトラだが生まれてすぐに捨てられるのを知り1匹だけ引き取った雌猫だった。

ありきたりではあるが名前を「みいこ」と名づけた。

そんな「みいこ」も老衰の為、既にこの世を去ったのだが18年間共に過ごした家族だった。

本来、あまり良くは無いのだが無縁仏と一緒に霊園に入れるのが何だか可哀想で「お骨」はそのまま引き取りPC部屋の棚に置いてある。

私は骨壷を手に取り位牌に目をやった。

愛猫 みいこ 平成9年9月13日永眠・・・・

好きだったカリカリはもう無いけれどコップにたっぷりと水を注ぎ供えた。

私は「ごめんな・・・みいちゃん・・・」

と手を合わせた。

Concrete
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