中編5
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「いきすだま」

ご存知の方もいらっしゃると思いますが

私の兄は俗に言う「見える人」です。

そんな兄ですから当然の様に心霊現象的な体験を嫌と言う程しています。

一方、私はと言うと…

その様な能力?は皆無、兄からも不思議がられる程何も見えません。

(それが普通だと思うのですが…)

そんな私ですが、一度だけ身の危険を感じた恐怖体験があります。

今回はその話をさせて頂きます。

それは数年前の出来事……

私は、訳あって独身です。

お恥ずかしながらバツイチと言うやつで、、、

まぁ、色々ありお互いに話し合った結果、離婚と言う選択を致しました。

私の実家で親と同居していたので妻が引っ越し

子供達は、まだ幼子が居る事もあり妻が引き取る事になりました。

とは言っても小学校等の関係もあり、ごく近所に借家を借りると言う形に…

子供達の事が何よりも心配でしたし、一緒に暮らせ無い寂しさと「申し訳ない…」と言う気持ちで一杯でした。

ところが、いざ離れて暮らしてみると…

家が近い事もあり、子供達は毎週泊りにくるし

仕事から戻ると私のベッドで子供が寝ていたなんて事は日常茶飯事。

子供達にしてみれば、寂しさもあるのでしょうが

家が一つ増えた位の感覚の様で…

今更ながら子供の適応の早さに驚かされました。

しかし、引っ越してから数ヶ月した頃から子供達の体調に変化が…

毎週の様に高熱や喘息で体調が悪くなり、病院に行かない週は無い程に…

当然、学校も遅刻、早退、そして休みがちに…

はじめの頃は「やはり環境の変化が影響しているのか?」とも思いましたが

余りにも毎回の事だし、身体が丈夫な事が取り柄の一つだったのに…

おまけに病院に行ってもハッキリとした原因も解らず…

どうしてなのか色々と考えていると…

私はある事が引っ掛かっていました。

「引っ越し先の借家がどうも気になる!」

条件が限られた中で一軒家を探さなければならなかった為

場所と家賃のみで決めた様で、内外装共お世辞にもキレイとは言えない状態…

なんと無く日中でも薄暗くカビ臭い、いかにも何か良く無い物が居そうな雰囲気…

一番気になったのは、前の入居者が出て行ってからかなり年数が経って居ると言う点…

何か理由があるのか?

近所で色々と話を聞いてみると

前入居者は若い夫婦の様で、所謂ゴミ屋敷状態だったとの事

近所トラブルも多く、半ば強制退去状態で出て行ったと言う話でした。

う~ん……

「ここは一つ、兄に相談して一度見てもらう事にしよう!」

そう考えながら、泊りに来たいと言う子供達を連れ、家に帰って見ると、、、

なんと偶然にも兄が家に遊びに来ていました…

私は心の中で「さすがだな~」などと思っていました。

すぐに事の顛末を説明、兄も自分の甥と言う事もあり快く快諾。

早速、問題の借家に向かおうとしましたが……

泊に来た子供達を見るや否や、突然、、、

次男の背中に両手をかざし、何やらブツブツと経を唱えはじめた!

兄は、一瞬驚いた表情はした物の至って穏やかに経を唱えている。

私は「やはり何か憑いてるのか…悪い物なんだろうか…頼むなんとかしてくれ!」

そう願う事しか出来なかった。

暫くすると兄が二度ほど私を見た…

おそらく「お前も見ておけ!」

と言う合図だろうと思い、私は兄の背中に恐る恐るふれる…

(普段は絶対にやらないが、こうする事で兄は間接的に見せる事が出来る…)

その瞬間…

兄が「あっ⁉」

私は「⁉えっ⁈」「な、な、何これ…⁉」

そこには

「絶対に見てはならない物」が居た……

兄「……見ちゃった?」

私「何で?アレ… 俺でしょ⁉ 何で俺が…⁉」

兄「う~ん…見ちゃったもんは仕方が無い」

「そう!あれはお前だ…」

「正確にはお前自身の生き霊!」

私は恐怖とパニックで半放心状態だった。

想像して欲しい…

自分で、自分が生き霊になった姿を見てしまった時の事を……

兄「想いが強過ぎると生きている人間でも霊となり飛んで行ってしまう事がある…」

「本人の意思とは関係無くとんじゃうから厄介なのさ~」

「そして、殆どの場合が憑いた先に悪影響を及ぼす…例え自分の息子であっても…」

少し冷静になった私は…

「俺はどうすれば良いの?」

「だって俺はここに居て…でもあそこにも俺が居て…えっ⁉」

「俺は生きてるし…生きてるよね…?」

兄「生き霊は俺にもどうも出来んわ!」

「まぁ、お前は少し考え過ぎなの!」

「子供の事は誰だって心配だわ」

「だけどな…なる様にしかならん!」

「心配しないで少しほっとけ!」

「そしたら勝手に消えてくわ~!」

確かに離婚してから毎日子供の事しか考えていなかったし…心配で、心配で……。

「それよりお前…何ともないの?

普通は生き霊を飛ばすとなると相当力使うから身体や精神がキツイと思うが…?」

私「いや…身体は全然大丈夫!」

「むしろ調子は良いくらい…」

兄「お前は本当変わってるね~」

(そりゃあんただろ!)

「ところで…問題はもう一つあるんだが…」

「さっき自分の生き霊みたよね?あれ…ヤバイかも知れんわ…」

私「あっ!もしかして……」

兄「そう!ドッペルゲンガー!」

「色んな説があるし、どれが正しいのか、どうなるのかは解らんけど…

もう1人の自分を見てタダで済むとは思えん」

「よく言われる事は…死期が近いと……」

正直、シャレにならない……

でも良く考えて見れば、そもそも兄が

「お前も見ろ」とサインを送ったのではないか?

動揺からか、半ば責任転換とも思える問いかけを兄に投げ付けると

数ある心霊体験の中で今回のケースは始めてだったし…

生き霊の大元が隣に居るんだから…

久しぶりにビビった!と……

あの時私を見たのは「見ろ」の合図では無く…

ただの「二度見」であった、、、

それから暫くの間は、毎日ビクビクして生活をしていましたが…

あれから数年…

幸い何事も無く無事に生活しております。

子供達も元気で、今でも毎週お泊まりに。

次に飛ぶ時は守護霊として子供達を守る為に飛びたいと思う今日この頃です。

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