中編5
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玄関に塩Ⅱ

憑かれた出張Ep2

「ベランダに自衛隊の人がいるよ」娘が言う。

つい3日前に、自衛官である従弟の結婚式に行ったばかりで

娘がまだ幼稚園に入る前のことだった。

「ああ、あれは兵隊さんだよ。」私は娘に言う。

似たような制服を着ていたので、先日見たばかりの自衛官に見えたのであろう。

「昔、戦争で死んでしまった人で、ただウチのベランダを通っているだけだから心配いらないよ」と私は続けた。

このとき、初めて娘にも霊感があるのだと判った。

まあ、3人も子供がいれば1人位は私に似ても可笑しくは無い。

ただ、上の2人が男の子だったので

娘は1人で遊ぶことが多く「1人ままごと」をしていても誰かとリアルに話をしている様で

自分の幼少の頃を彷彿させる懸念材料があった。

「玄関に塩」を読んだ方はご存知かと思うが

私はその特殊な能力により

虐めを受けた経験があり幼稚園から小学4年生辺りまで悲惨な生活を送っていた。

娘にはそんな思いはさせたくなかったので

人生の先輩として1つの助言をした。

「お前が見たり聞いたりしたことでも、他の人には見えなかったり聞こえなかったりすることがあるんだよ」

「お父さんはお前の見たり聞いたりするモノを全部判るから、他の人に教えては絶対に駄目だよ!お父さんにだけ話してね!約束だよ!」

娘はいまいち「ピン」と来ていない様だったが「わかった」と言って笑っていた。

それからも「玄関に誰かいる」とか「ベッドの横に怖い顔の女の人が立っていた」

と泣きながら2階から降りてきたこともあった。

私との約束を守っていたからなのか

娘の人柄なのかは判らないが

小学校に入っても虐めを受けたり仲間外れになったりすること無く

娘は元気に学校に行き沢山の友達がいた。

私は安心してそれを見守っていた。

娘が小学6年生の時、私は仕事の都合で愛知県に単身赴任することになった。

近くで守ってやれない事がとても心配であったし

今まで何かの時に助けてくれた私が傍にいないことは娘にとっても不安であったに違いない。

出発前夜、私は娘に「お守り」を渡した。

私を守ってくれている「お不動様」の水晶で作ったネックレスだ。

「それをいつも身に着けておけば大丈夫だよ」

と半ば「おまじない」の様な言葉を掛け私は愛知県へ出発した。

余談になるが、初めて本州に住んだ私にとって東海地区はすばらしい土地であった。

なぜなら、今まで私が見てきた北海道の霊体と東海地域のソレは別物だったからである。

愛知の心霊サイトで知り合った方に

「愛知、岐阜、滋賀、三重」の様々な心霊スポットへ連れて行って頂いたのだが

土地柄から城跡や古戦場跡などが多く

北海道にいては決して見ることの出来ない貴重な体験をさせて頂き、見聞を広げることが出来た。

その頃の話は、追々弟のほうへ送信することにするが・・・・・

赴任後は勿論、毎日の様に電話はしていたが、長男の就職や次男の高校受験

そして娘の中学入学と家族にとって大事な時期に仕事とは言え傍にいてやれなかったことへの後ろめたさと

嫁1人にその重荷を背負わせてしまった罪悪感を常に抱きながら月日は流れた。

その後、一度も帰省すること無く3年半が過ぎ

父親が亡くなったこともあり我が家へ帰って来た。

娘が中学3年の冬である。

ちょうど高校受験の真っ只中ではあったが、そんな大事な時期に帰って来られて良かった。

何より成長した我が子をこの目で見ることが出来る!

そんな「当たり前」のことが純粋に嬉しかった。

「お守りは?」娘に聞いてみた。

「着けてるよw」娘は言うが胸元には無い。

「お父さんのセンス悪いからパワーストーンと絡めてブレスレットにしてもらったw」

と言い誇らしげに袖をめくって見せてくれた。

「でもね。お父さんにもらったお陰であれから一度も見てないんだよw」

「そうか!それは良かったな」

「それならお守りは必要ないわ!もう見ないと思うから~」

「どうして?」

「お前から霊波を感じないから」

私の様に霊媒体質の者は、特殊な霊波動を出しており、以前は娘からも感じていたのだが

久しぶりに会った娘からソレは消えていたのだ。

一般的には

「20歳までに幽霊を見なければ一生見ない、それまでに見てしまったら見える人になる」

と言われている様であるが、あれは私の経験から真っ赤な嘘である。

幾つになろうが関係は無く、何か大きなキッカケにより急に「見える様になったり」「見えなくなったり」するものなのだ。

娘の場合、私が急に家を離れ

長男も社会人になり家を出て、次男も地方の高校に進学した為

家には嫁と娘の2人だけという現実が3年近く続き

そういう環境の変化が彼女を変えたのだと考えられる。

ともあれ・・・・

本来見えないモノが見えてしまうというのは決して良いことではなく

今後の娘のことを考えれば良い方向に成長してくれたと思っている。

そんな娘も今年の春、社会人となり某外資系の企業に就職した。

綾瀬はるか似の可愛い女性になってきたのだが、

親として新たな心配事が増えた気がするのは、男親の性であろうか・・・・・

先日こんなことがあった。

誕生日に彼氏からプレゼントされた服を着て女友達と「北の国から」で有名な麓郷へ遊びに行った時の事・・・・

雨上がりの草むらを歩くのでズボンの裾をめくり靴下を脱いで歩いたそうである。

何事も無く家に帰ってきたのだが、

いくら探しても上着のポケットに入れたはずの靴下が片方見当たらない。

娘は、彼氏からのプレゼントのひとつであった為

チョット落ち込んでおり夜になって彼氏に電話をした。

「ごめん・・・この間、買ってくれた靴下片方落としちゃった・・・」

「それ、やばいわ!」

「何が?」

「麓郷の靴下って知らないの?!」

「それって呪われるよ!」

とまあ、こんな会話があったらしく娘は泣きながら私のところへ来て「麓郷の靴下」って呪い知ってる???と聞いてきた。

私は呆れ果てた口調で電話口の彼にも聞こえる様にこう言った。

「そんなもんある訳ないべ!そんなくだらん意地悪する様な男なんか別れてしまえ!うっとうしい!」

まあ、その後も仲良くやっている様ではあるが

そんな些細な嘘も見極めが利かない程ただの一般人になったのだと…

一般人では無い私は安心している。

そんな娘は嫁が不在の時「玄関に塩」を準備してくれる大切な家族なのである。

そして今でもブレスレットを身に着けている。

誰にでも言えることだが…

霊が見えたり感じたりすることは

何らかの変化によって、急に始まったり終わったりする。

誰にでも起こりうる「表と裏」なのである。

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