短編2
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悪さの代償

これは父から聞いた話である。

父は小さな漁村で生まれ育った。

16歳のときに五男であった為に家業を継ぐことなく家を出たのだが、

浜街の漁師気質を受け継いでかヤクザ映画とカンフー映画が大好きな父だった。

そんな父がプライベートで付き合っている友達も当然の様にちょっとチンピラ掛かった人達が多かった。

その中に俗に言う「マブダチ」の鮨屋のマスターがいた。

父とマスターは良く悪さをしていたのだが・・・・

ある初秋に2人で鮭を捕りに行った時に取り返しの付かないことが起きてしまった。

今で言う「チョイワル」だった2人なので川に網を仕掛け遡上した鮭を密漁していたらしい。

その日も早朝暗い内から網の様子を見に行った。

網には沢山の鮭が掛かっており2人はホクホクだったそうだ。

鮭を発砲に詰め完全に日が昇る前に帰ろうと車に戻っている時に突然マスターが川に向かって走り出した。

父は何が起きたのか判らなかったが狂った様に走っているマスターを追いかけながら

「なしたんよー?」と呼び止めようとした。

マスターは「母さんが呼んでる!」と言いながら冷たい川の流れに入っていった。

父は「お袋さんとっくに死んでるだろ!誰もいないって!やめろ!上がって来い!」

必死に叫んだが…

その叫びも耳に入っていない様で

「母さん!待って母さん!」と言いながら川を流されていった。

父は一生懸命追いかけ100m程下流の淀んだ流れの中に浮かんだマスターを発見!

そのまま車で病院に搬送したのだが既に息絶えており帰らぬ人となった。

その後、父は警察の事情聴取やマスターの葬儀やらで大変な目に合ったらしい。

そんな父も数年前に癌の為この世を去った。

葬儀の席で父の友人から聞いた話しであるが

実はマスターと父は当初「犬猿」の仲であったと…

ある時、大喧嘩をし…いつの間にやら大親友になってたそうです。

「親父も青春してたんだな~」

今はきっと「あの世」とやらで2人悪さをしているに違いない。

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