中編3
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サランラップ

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「何となくナルシストっぽくって注文も多いし、暗いんですけど…」

「けっこうイケメンだったんですよ、その人…」

美容室でいつも担当してもらってるFさんに、何か怖い話ない?と話をふってみた。

そしたら、昔担当したお客の話になった。

Fさんはどちらかといえばふくよかなタイプで、陽気な性格をしていた。

好きになる男性は意外にも、細身で大人しい人なんだそうだ。

「正直ちょっとタイプだったんです…」

Fさんは担当であるその男に好意を寄せ、《ひょんなきっかけ》から交際するようになった。

ある日、Fさんは仕事を終えて最寄のコンビニに立ち寄った時、偶然雑誌を立ち読みしているその男を見かけたんだそうだ。

「そのときはもうビックリして、私からすぐ声をかけました…」

「でも、今思うとかなり気持ち悪いんですよね…それ。」

最初彼は大手企業に勤めていて、カメラが趣味とかいってクールなイメージがあったんだそうだ。

顔がカッコいいってとこばかりに目が行っていたが、食事などをしてもお互い盛り上がりに欠けて、会う機会が増えるにつれ、クールと言うには何となく薄っぺらさを感じてしまった。

若干警戒ぎみに初めて案内された彼のマンションは、それなりにいいマンションだった。

Fさんが仕事中鏡越しに見ていた彼の私生活のイメージは、家具に無駄がなく部屋はガランとして、熱帯魚を買っていそうな《無機質》なイメージだ。

初っ端、扉を開けた時点で部屋の中からすえた臭いがしてきたそうだ。

真夏の蒸し暑い夜だったそうだが、床に毛布が転がっていたり、少女趣味の汚い人形や、ダンベルがテーブルのど真ん中に置いてあったり、ちぐはぐした変な部屋だったそうだ。

クッションに腰を下ろすが部屋の隅はチリや髪の毛の絡んだほこりだらけ。

隣の薄暗い部屋(寝室)に見えるクローゼットの上に筒状の何かが置いてあり目を凝らすと、サランラップだったそうだ。

確実に頭がおかしいと思い、Fさんはとっさに用事をでっち上げ部屋を出たそうだ。

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テレビをつけ画面に見入る彼は、一度もFさんの方を見ることなく出て行くまで黙っていたそうだ。

次の日にはメールで別れを告げた。

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メールを送って数ヶ月が過ぎあの男の影もすっかり消えかかった頃、突然知らない番号から着信があった。

出てみると、その声は聞き覚えのないしゃがれた男性の声だった。

「警察の人だったんです。彼の通話記録を見てかけなおしたらしいんですけど…」

インターネットのサイトに人の死体と思わしき画像がアップされており、通報があったそうだ。

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世間を騒がせるよくできたイタズラのように思えたが、捜査が必要と判断された。

IPアドレスからプロバイダーを通じてパソコンの持ち主の個人情報を割り出すと、彼の名前が挙がった。

Fさんは事件とは無関係と言いつつ、日を改め任意の事情聴取を受けた。

ネットに掲載された画像には、少なくとも4名の若い女性が写っていた。

「警察の人は色々説明してくれたんです。もう少しで危ないところだったって…

その画像はいずれも顔をラップでぐるぐる巻きにされた女性の写真だった。

女性の顔は巻かれたラップでへの字に潰れ、誰なのか判別もつかないが、サイトには女性がもがき苦しみ硬直するまでの様子が何十枚も写され、アップされていた。

犯行の様子は時間にして4分前後のものと推定され、少なくとも暴行の証拠にはなりえるんだそうだ。

ただ凶悪な快楽殺人の疑いがあるものの、死体が挙がらないことから捜査はすぐに打ち切られるだろう…ということだった。

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殺人容疑のあるその男は現在も所在は不明。顔写真も公開されていない。

もしこの事件が表沙汰になったとしても「絞殺死体」としか新聞欄には表記されないそうだ。

「たぶん、寝ている間にラップでぐるぐる巻きにするんでしょうね…」

Fさんは抜け殻のようにそう呟くと、ケロッといつもの笑顔に戻った。

女性の方、用心を…。

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