中編4
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渓流の通行人

これは自称"霊感が強い"元担任から聞いた話です。

担任の名前は林。

林は前からよく幽霊や、それらしきモノに遭遇してきたようだ。

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その日は友達と釣りに行っていた。

釣りに行った場所は、○○県では有名な渓流を通り、さらに山の方。

友達はこの山のふもとに住んでいる。

林は初めて行く場所だった。

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朝の7時から釣りを始め、二人で他愛もない話をしながら釣りを楽しんでいた。

お昼になり、友達の家で昼食をとることにした。

友達の奥さんが手料理をふるまい、満腹になるとまた釣りへ出掛けた。

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この日はなかなか釣れず、負けず嫌いな林は

『釣れるまでは帰らねぇぞ!』

と宣言した。友達も

『よし!俺も!』

と二人で意気込んだ。

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どれくらいの時間釣りに没頭したのだろう。

辺りはすっかり暗くなり、気温も下がって寒くなってきた。

時計を見ると、もう夜の7時。

さすがに二人は諦め"後日リベンジする"と約束し、帰路についた。

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渓流へ続く道に小さなパーキングがある。

そこで林は少し仮眠することにした。

朝から張り切りすぎて、釣りが終わった途端に眠くなってしまったのだ。

2時間ほど眠り、寒さで目が覚めた。

『よし!帰るか!』

林はよく独り言を言う。

車のエンジンをかけ、山道を下りはじめた。

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行きは朝だったため気付かなかったが、渓流に沿って曲がりくねった道はなんだか不気味だった。

しばらく走っていると、歩いてる人がいた。

『こんな時間に、こんなとこ歩いてどこ行くんだ?』

独り言を言いながら、その人の横を通り過ぎた。

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その5分後。

また歩いてる人がいる。

『街まで歩く気か?まだまだだぞ』

また独り言を言った。

そしてまたその人の横を通りすぎた。

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ようやく渓流の半ばあたりに差し掛かった時、また歩いている人が。

『外灯もないのによく歩くな』

また独り言を言う。

こんな時間に、こんな暗い道を歩いている。

しかも3人も。

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追い抜き際、スピードを緩め歩いてる人を見た。

短い髪。

上下ジャージ。

顔は暗すぎて見えなかったが、なんだか違和感があった。

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どうもその違和感が気になり、友達に電話をした。

『なぁ、俺今○○渓流のとこ走ってんだけどさ。こんな時間なのに歩いてる人いるんだよ。どっかに店でもあるの?』

しかし電話口からは応答がない。

『どーした?聞いてる?』

少し大きめの声で問いかける。

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少し間をおいて、暗く小さな声で友達が聞いてきた。

『何人見た?』

林が

『さっきので3人!なんでだ?』

と言うと、友達は

『・・・はっきり・・・見えたか?』

と聞いてきた。

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変な事聞いてくるな、と思ったが

『あぁ、見えた。どっかに店とかあるのか?』

と答えた。

するとさっきより少し大きな声で

『次また人が見えても、何も喋るな!前だけを見て、とにかく街へ出ろ。街まで行けば大丈夫だから!』

と、友達が言う。

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訳がわからない。

何が大丈夫なんだ?

林は少し困惑した。

どういう意味なのか聞こうとしたが、電話が切れた。

圏外になっていた。

仕方なく、訳がわからないまま走った。

渓流の終わりまでまだある。曲がりくねっているうえに、暗い。

走り慣れない道。スピードは40kmも出せない。

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『あっ・・・』

小さく声がでた。

4人目が前方に見える。

林は友達に言われた様に、今回は独り言を我慢した。

もうすぐ横を通りすぎようとした時こっちに気がついた。

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車の方を向く。

林は見てしまった。

目が合った。

一瞬だったが、確実に目が合った。

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心臓が"ドクン"と強く脈打つ。

すぐに視線を前方に移し、スピードをあげた。

無事に通りすぎた。

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そう思っていた。

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ふと、ルームミラーを見る。

shake

いる!!!

後部座席に、さっきの人が。

顔は見えない。下を向いている。

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友達の言っていた事が頭をよぎる。

"街まで行けば大丈夫"

きっとこの事だ。

林はハンドルを強く握り、後ろを気にしつつ街を目指した。

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すると、また人が・・・

よく見ると、髪が短くジャージを着ている。

この時はじめて気がついた。

今まで見てきた人は・・・みんな同じだ。

恐怖から悲鳴をあげそうになったが"何も喋るな"と言われた事を思いだし、ぐっと堪えた。

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横を通りすぎる。

今度はそっちを見ないよう、前方だけに集中した。手と額は汗でびっしょりだった。

無事に通りすぎた!!

小さく息を『ふぅ~』と吐いたが、次の瞬間には『ハッ!!!!』っと息を飲んだ。

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助手席にいる!!!

イヤでも視界に入る。

心臓が痛いほど脈打っていた。

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早く!早く終われ!街はまだか!!

心の中で叫びながら、無我夢中で運転した。

ようやく渓流が終わる。鳥居が見えてきた。

更にスピードをあげた。

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朝はさほど気にしなかったが、渓流道の入り口には大きな鳥居があった。

黒く大きな鳥居だ。

その鳥居をくぐり、渓流の外に出た!!

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その時。

ふっ・・・と、助手席にいたのが消えた。

しかしまだ安心はできなかった。

明るい場所へ、とにかくどこでもいいから明りがある所へ行きたかった。

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少し走ると24時間営業のスーパーがあった。入口近くに駐車し、走って中へ入った。

人がいる、ただそれだけで安心できた。

しばらく店内を歩き、気持ちを落ち着かせた。

友達に電話をしようとしたが、しなかった。

まだ”アレ”の事を話せる程、心に余裕はなかった。

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林から聞いた話はここまでだ。

その後の事は教えてくれなかった。

ただ『もうあの道は通りたくない』と言っていた。

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自称”霊感が強い”元担任の林は、私が中学2年の秋、突然の転勤でいなくなった。

転勤はあの出来事が原因ではないそうだが、それ以来1度も林に会うことはなかった。

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匿名さん。
丁寧にご説明していただき、ありがとうございました。
朽屋’sさんの作品を読ませていただきました。とても引き込まれる文章で、一気に読んでしまいました!!
私の勉強不足で大変お手数をおかけしました。
これからいろんな方の作品を拝見して、勉強していきたいと思います。
私もこの素晴らしいサイトに少しでも貢献できるよう頑張っていきます。
本当にありがとうございました。

勉強不足ですいません、朽屋とは何でしょうか?
あと、見ず知らずの方に「お前」と呼ばれるのは気持ちのいいものではないです。
申し訳ありません・・・