中編4
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子ども110番の家

『やばい!もれる!』

自宅から小学校まで約45分。

田舎に暮らす甥っ子は、通学路でトイレの限界に達する事が多かった。

そんな時、いつもお世話になる家があった。

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玄関先には「子ども110番の家」と書かれた小さな看板が打ち付けてある。

何か困ったことがあったり、助けが必要な時の駆け込み寺だ。

甥っ子はもっぱら、緊急時のトイレとして利用していた。

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「ピンポーン。ピンポーン」

『おじさ~ん!トイレかして!』

『こんにちは。どうぞどうぞ。』

『ありがとう!』

しかし、甥っ子の目的はトイレだけでは無い。

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『はい。どうぞ。』

『おじさんいつもありがとう!』

トイレを借りる度に、おじさんがいつもお菓子とジュースを出してくれる。

中には、お菓子目当てでトイレを借りる子もいたくらいだ。

ただ、一つだけ子供たちが嫌がる事があった。

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ある日、甥っ子の友達のT君がトイレを借りた時の事。

いつも通り、トイレを借りて、トイレから出るとお菓子が用意されている。

T君は、前々から気になっている事を聞いてみた。

『おじさん!なんでこの家、いつも線香があるの?』

『…』

おじさんは何も答えず無言でニコニコしていたそうだ。

一戸建ての平屋のおじさんの家はいつも線香の臭いが絶えない。

だから小学生の間では「お線香の家」と呼ばれていた。

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全校朝礼にて。

『最近、夜道で子供を追いかけまわす不審者の報告があります。』

『本校の生徒が追いかけられた拍子に転び、怪我もしています。』

『不審者の見た目は40代~50代の女性だそうです。』

『夜遅くなったら一人では出歩かないようにして下さい。』

甥っ子はもちろん、低学年の生徒達は怖がっていました。

しかし、高学年の生徒達の中には、どんな不審者なのか見たいと興味を持ち、夜に一人あるいは友達同士で集まって、不審者の目撃が多発しているスポットに行くのが流行った。

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そして。

甥っ子と同じサッカークラブの5年生のS君が不審者を発見。

初めは電柱の影に隠れていて、S君が歩くと、不審者も歩く。

S君が走ると、不審者も走る。

S君が立ち止まり、振り返ると、不審者も立ち止まり、振り返る。

S君が後ろ向きに歩くと、不審者も後ろ向きに歩く。

S君がしゃがめば、不審者もしゃがむ。

不審者はS君のマネをしながら、着実に近づいてくる。

初めは面白がっていたS君ですが、後ろ向きで色々なポーズを取ると、不審者も後ろ向きなので見えていないはずなのに、同じポーズを取っているのに気が付いた途端、急に怖くなり、全力で逃げ出した。

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逃げている途中、「子ども110番の家」が見えてきた。

そう。あの「お線香の家」だ。

玄関先にはちょうどおじさんがいた。

『おじさん!助けて!』

おじさんは驚きながらも、S君を家に入れ、玄関の鍵をかけた。

おじさんはじっと、玄関の覗き穴から外を見ている。

『誰もいないし、行ったみたいだよ。怖かったろう。何もされなかったかい?大丈夫かい?』

おじさんはとても心配してくれた。

S君はそれでも気になり、玄関の覗き穴を見てみた。

『?!』

いた。

玄関先に先程の不審者がじっと立ち尽くしていた。

『おじさん!まだいるじゃん!』

S君は怖くなり、おじさんに電話を借りて、両親に迎えにくるよう連絡をした。

おじさんに電話を代わり、何があったか説明してもらった。

数分後、両親の車が到着すると、既に不審者の姿は無かった。

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後日。

不審者を警戒して、保護者がローテーションでパトロールをする事になった。

そして、不審者に遭遇。

まるで、保護者は見えていないかのように、不審者は全力で走っていた。

自転車で不審者の後を追う。

そして、不審者が家に入った。

あの家が不審者の自宅だな。

そう思った保護者は警察に連絡。

間もなくして警官が到着した。

『ピンポーン。ピンポーン』

呼び鈴を鳴らす。

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中から出てきたのは50代くらいの男性。

警官が事情を説明すると、男性はとても驚いた顔をして、警官が話している最中にも関わらず、突然玄関ドアを閉めようとした。

不審に思った警官が家の中を捜索すると…

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リビングの隣の寝室に女性の腐乱死体があった。

エアコンも無い、締め切りの部屋はかなりの異臭を放っている。

男性に確認したところ、女性を殺害した事をあっさりと認めた。

死後、半年以上は経っていた。

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男性はパトカーに乗せられる直前、通報した保護者に話があると言い、近づいてきた。

そして、こう言った。

『なんで、わかった』

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結局、通報した保護者が見た不審者はその家にはいなかった。

いたのは同じ服装の腐乱死体…。

殺された女性は自分を見つけて欲しくて、必死に不審者として、走り回っていたんでしょうか…。

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そして何よりも驚いたのが、この男性。

「子ども110番の家」のおじさんだった。

線香の臭いは腐乱死体の悪臭をごまかす為のものだった。

私がこの話を聞いて、何よりも怖いと思ったのは、人を殺して平然と「子ども110番の家」の看板をかかげ、子どもたちと接していた事だ。

もし、子どもたちがトイレを借りた際に、腐乱死体を発見していたら…。きっと…。

そう考えるとゾッとする。

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皆さんも気をつけて下さい。

安全だと思い込んで、危険に飛び込まないように。

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こういう怖い話大好きです

私も田舎育ちだからちょっと怖いかも(^^;;

怖いけど面白い!さとるさんの話は最高です♪
( ´θ`)ノ

これはクオリティが高い!これぞ怖い話!