中編4
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赤い目に(コピペです。)

大学生になっ て、一人暮らし をすることに なった 場所は都内のボ ロッボロのア パート。

引越しを終えた夜、俺はペプシをあ おったりしてた。 深夜になり、そろそろ寝ようと思って 押入れをあけて、布団を引っ張り出し たら、このときまで気づかなかったが 奥に指先で突いたくらいの穴が二つ並 んで開いている。 ちょうど人間の両目の位置くらいの幅 で。

挨拶は次の日にしようと思っていたの で隣にどんな人が住んでいるのかは知 らなかったが、悪いとは思いつつその 穴をのぞいてしまった。

すると、そこには何か真っ赤なものが おかれているのか、ひたすら赤かっ た。 当然このときおれの脳裏にはかの有名 な「赤い部屋」がひらめいた。 向こう側から真っ赤な目をした人がの ぞいているという、あれだ。 貴重なオカルト体験(話通りならオカ ルトではなく病気だが)に、俺はときめいた。 びびったし、怖かったが、喜びと好奇 心のほうが大きかった。 俺もその赤色をにらみつけたまま、ま んじりともせず押入れの中にいた。

人間の目というのは何か一箇所を注視 するとその焦点以外のものはぼやけて しまう。 その現象が俺にも起こり、だんだん周 囲がぼやけてきた。 ふと、目の前の赤色がゆっくりと遠ざ かっているのに気づいた。 アリが這うような速度で、でも確実に 赤色は向こう側へ引っ込んでいく。

やはりその赤色は目だったようだ。 まず上まぶたが見え、次に下まぶた、 目じりと目頭。 なお赤色は向こうへ引いていく。

おいおい。 このまま行けば・・・。 顔が見えるんじゃないのか・・・。 俺は生唾を飲みながら穴の向こうを見 続けた。 体が震えているのがわかる。

鼻が見え、こめかみ、額、ほほ、 口・・・。 顔の全容が見えてくる。 俺の震えはとうとうピークに達した。 身動きもできなかった。

その顔は俺の顔だった。 おかしくてしょうがないというように 無言で笑っている。 あの真っ赤な目もこっけいなものを見 るようにグニャグニャと笑みを作って いる。

顔以外の背景も見えてきた。 見覚えのある部屋。 俺のいるこの部屋。 鏡のようだ。 その中で赤い目の俺が笑っている。 俺は自分の部屋へ振り返った。 しかし、押入れの中だったはずの俺の いる空間はただの暗闇だった。 背後にあったはずの部屋がない。 ただ目の前に二つ穴があるだけの暗闇 の牢獄。 穴の向こうにいる赤い目の俺は・・・ いやよく見るともう目は赤くない。 俺の部屋の中の鏡を見て、つまらなそ うにため息をつくと、部屋を出て行っ た。 俺のほうは出口のない暗闇に閉じ込め られたまま。 俺の体も闇に溶けて形をなくした。 俺はただの暗闇になってしまった。

どれだけの時が過ぎただろう。 暗闇の俺の前に再び二つの穴が開い た。 そこを覗き込むと、向こうに見知らぬ 男がいてこちらをのぞいていた。 そいつの背景は暗闇だった。 俺が振り返るとそこは俺が新居にした のと同じ間取りの部屋。 ただ、荷物や家具はまったく違う。 俺をのぞいていた男のものらしい。 こいつが覗き込んでくれたおかげで俺 は出られたようだ。 鏡を見て自分の顔を確認する。確かに 今俺をのぞいた男だった。 男前だ。

部屋のチャイムが鳴った。 あけるとそこには若い女が立ってい た。 「片付いた?じゃ、行こうよ」 女がそういうので俺は女の肩を抱いて 部屋を出た。 俺はこれから、この男として生きるの だと思った。 「どうしたの?いつもと感じが違うみ たい」 そんなことないよ、と俺は女にキスを した。

その日は外泊して、次の日の朝部屋に 戻ると俺は押入れの中の穴にガムテー プを貼ってふさいだ。

それから少ししたころ、アパートはさ すがにぼろ過ぎるということで改装す ることになった。 穴のあった壁が重機で壊される日、俺 はそばで壊れていくアパートを見てい た。 壊された壁はただの壁で、向こう側に は何もなかった。 連鎖が終わったかな、と俺は思った。

例の女の部屋に改装の間泊めてもらう ことになり、掃除や多少の炊事くらい は手伝った。 夏用のクッションを出そうとクロー ゼットを開けると、奥の壁に穴が二つ あいていた。 奥からぎりぎりと歯軋りのような音が 聞こえてくる。

どうしよう。

考えていると横から女がひょこっと顔 を出した。 「やだなあ、虫かなあ」 そういいながら、ちょっと大雑把な彼 女はその穴を色テープでふさいだ。

かわいそうにな、と思った。 彼の分まで感情をこめて、俺は女をき つく抱き寄せた。 「え、何急に」 戸惑う女に俺は情熱的な長い長いキス をした。 隣の部屋まで響きそうなほどに大きな 音を立てて。

唇を吸いながら、俺みたい境遇のやつ が他にどれくらいいるんだろうな 、と思った。

終わり。

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めちゃくちゃ面白かった。
世にも奇妙な物語みたい。