中編3
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本当の愛?

ご無沙汰でした、兄です。

この話しは

人口よりも牛の方が多い様な田舎町で育った

私の高校3年夏に起きた出来事です。

当時はバイクに乗っていてギターが弾ければ

誰でもモテる時代であった為

単純な私は、1年の頃からバイクに乗り

勉強もせずに、ひたすらバンド活動に勤しむ様な

チョット目立った高校生活を送っていた。

当然の様に

先輩達に目を付けられていたのだが…

ある1人の先輩と親しくしていた為に

誰にも手出しはされなかった。

その先輩は

2つ上で在学中から徒党を組まずワンマンであったが、

誰にでも友好的な平和主義者であった。

ただ、曲がったことが大嫌いで

喧嘩もめちゃくちゃ強く

硬派として誰もが認めていた。

とても可愛い彼女と、いつも一緒にいる姿が

今でも強く印象に残っている。

先輩は高校を卒業した後、町の小さなスタンドに就職し

愛車はバナナテールの真っ赤なセリカで、いつもピカピカだった。

仕事着のオーバーオール姿がまたカッコ良く

憧れの先輩だった。

彼女とも同棲を始め1年後には結婚をした。

それでも

夫婦揃って、ガキの私を家に招いてくれたり

ツーリングに誘ってくれたりと

弟のように可愛がってくれた。

そして先輩は、奥さんの手を握りながら

いつもこう言った。

「俺はコイツさえいれば幸せなんだ」

と・・・・

そして・・・・

私が高校3年の暑い夏の日事件が起きた。

先輩の奥さんが…

交通事故で亡くなったのだ…

先輩が職場から病院に駆けつけた時には

既に息を引き取った後だった。

先輩の落胆ぶりは半端ではなく

葬儀の最中も常にうつむき死人の様で

とても声を掛けられる様な状態ではなかった。

そんな先輩の姿を見て本当に胸が痛かったし

私も涙が止まらなかった。

葬儀が終わった3日後・・・・

終業式で半ドンだった。

学校から帰った私は、早速バイクに跨り

近くの峠へ向かったのだが…

先輩のことが気になって仕方ないので、途中で引き返した。

トンネルを抜けた時

前からピカピカの真っ赤なセリカが、猛スピードで走ってきた。

すぐに先輩だと分かった。

いつもはパッシングしてくれるのに今日はしてくれない。

「あれ、おかしいなぁ?」

と思いつつ、すれ違いざまに目をやると

先輩は泣いていた…

そして…

助手席には奥さんが乗っていた

「こ、これは!!」

そう思った次の瞬間…

後方で物凄い音がした。

バイクを止め後方を振り返ると…

トンネルの入り口横の壁に激突し

炎上している先輩の車があった。

すぐに駆けつけたが、手を付けられる様な状況では無く

燃え盛る炎を見ていることしか出来なかった。

その後

消防車が消火し、私は赤黒く焼け爛れた塊の横で警察の聴取を受けた。

悲しすぎて…辛すぎて…

涙も流さず淡々と受け答えをしていた。

先輩の通夜が終わった夜

親族ではないが、私は一番後ろの席に座り

ずっと遺影を見ていた。

何年か分の思い出が蘇ってくるのだが

不思議と涙は出なかった。

ふと気が付くと

傍らに先輩のお母さんが立っていた。

「今日は来てくれてありがとう」

「これ・・・・あなたに・・・・」

そう言って封筒を渡された。

何通かの遺書が残されていて

その内の1通が私宛のものだった。

私は

ゆっくりと封筒を開き便箋に目を通した。

「ごめんな…アイツ待ってるから俺行くわ」

とだけ書いてあった…

涙が一気に溢れ、私は声を出して泣いた。

あの夏は…今でも忘れない…

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すっかりご無沙汰していますm(_ _)m
あら⁉らいとさん‼ ハイビスカスじゃ無いからわかりませんでした(笑)
匿名さん、ありがとうございます。
良い話しなんですが…私にはリアル過ぎて複雑です f^_^;)