カンジョウエンジン~始まり~

長編8
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カンジョウエンジン~始まり~

その日はいつもと変わりなかった。

俺は目の前にある、そんな日常を幸せだと思った。

あんなことが起きるまでは。

「ねぇ!ねぇねぇー!お兄ちゃん!まだボク遊びたいよー!」

俺は戸惑いを隠せなかった。

こんなクソ暑い夏に、ただでさえセミの声でどうかしちまいそうなのに・・・。

「わ、分かったよ・・・。あと少しだけな・・・?」

「やったー!!お兄ちゃん大好き!ありがと!!」

俺は意識もうろうとする暑さの中、ユイトと名乗る男の子と砂場で遊んでいた。

「お兄ちゃんに・・・あのさ・・・・・・・相談があるんだ。」

「ん?どうした?」

ユイトは急に暗い表情に変わった。

「ボクのね・・・・お母さんなんだけど・・・・・・・・・今・・・」

「やっほぉおぉ!!」

ユイトの言葉を遮るかのように、そこにやって来たのはカレンだった。

「か・・・・カレン・・・・・・・・・・・か。心臓に悪いからいつも急に現れるのやめてよ・・・・・・。」

俺の口から本音が思わず出てしまった。

「なぁーによ!そんな驚かなくてもいいじゃない!ねー!ユイトくーん!」

「う、うん!そうだね!」

ユイトに振りやがったこいつ・・・・。昔から変わってねぇな・・・・ホントに。

俺はこいつのこういうとこが。こういうとこが・・・・・・・・。

「ちょっとなによ?私の顔見てー。アキハへんたーい。」

「うるせーなー。つーかカレンってユイトと知り合いなんだ。」

俺は必死に話題を変えようとした。

「まぁね!ねー!ゆっいとくーん!」

「あはは・・・。お姉ちゃん元気だね。」

「ユイトー?ねぇ!どこにいるのー?帰るわよー?」

後ろから声がした。

そちらを振り向くと、赤い服を着た女性が立っていた。

「おかあさんだー!ボクここにいるよ!」

黒い車。よく見ると高級車だ。

ピンときた。たぶんどっかの金持ちさんなんだろう。

「大丈夫だったの!?おかあさん心配して!も、もうっ!あぁ・・・」

「お・・・・・・・おかあさん・・・ボク大丈夫だってば・・・・あはは・・・・・・・・。」

様子がおかしかった。なんだかぎこちない動きをしだすお母さん。

「お母さん?だ、大丈夫で・・・・」

俺の言葉を挟むように、ユイトが喋りだした。

「お!お兄ちゃん遊んでくれてあ、ありがとねー!じゃあばいばい!」

俺は何とも言えない空気に戸惑うことしか出来なかった。

「ユイトー。お・・・・お母さんねー心配で・・・」

「お母さん!お母さんってば!分かったから早く車乗って帰ろ!」

強い口調のユイト・・・。

「えぇ・・・・・・わかったわ。行きましょ。」

なんだったんだ・・・。今のは・・・。

「あれねー。そりゃびっくりするよねー。私も始めそうだったから。」

「え?」

俺は状況が掴めないので聞き返した。

「あの子・・・ユイトのお母さんさー目が見えないんだってさ・・・・」

「え・・・・まじかよ・・・・・・・・・・だからあんな不自然な動きを。」

とっさに口をついた言葉。

「こぉーっら!アキハ?そんな失礼なこと言わないのー!仕方ないでしょ?あーなっちゃうのは・・・」

「そ・・・・そうだな。そりゃ見えないぶん不安にもなるよな・・・。」

笑顔で笑いかけるカレン。

「そういうことっ!!」

背中を強く叩かれる。

「い・・・・いて・・・・・・・・・・」

何事もなかったかのように前に歩いてくカレン。

「おい待てよー!今のちょー痛かったんだけど・・・・お・・・・・・・・・・い・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「カ・・・・・・・・・・・・・・・・レ・・・・・・ン」

きぃいいぃいっぃぃぃぃぃいいぃぃぃ!!!!!!

どぉっぉぉおぉん!!

すごいブレーキ音がした。

「は?」

目の前で確かに時間だけが過ぎてゆく。

「きゃぁぁあぁぁぁぁぁぁ!!人がぁぁぁあぁ!!!」

叫び出す人。

「おい!落ち着けって!とりあえず救急車呼ばないと!」

冷静に対処する人。

「ねぇー!ままー!だれかたおれてるよー?」

全く今の状況を理解できない女の子。

「み・・・・みちゃ・・・・・・・いけ・・・な・・・・あ・・・・あ・・・・・ああぁぁ!」

泣き崩れる人。

「お、俺じゃ・・・俺じゃねぇぞ!!悪いのはあ、あ・・・・あっちだ・・・ぞ・・・・・・・!!」

運転手の人が怒り狂う。

「は?」

分からなかった。

だからひたすら考えた。

けどわからなかった。

ワカラナイ。ワカラナイ・・・・・。

分かるのは今のこの暑さだけ。

「皆さんー!今からここの道路は通行止めにします!」

警察がやってきた。

「俺はやってねぇぞ!!」

「はいはい・・・。分かりましたから。とりあえず詳しくは同行してからお願いします。」

しばらくして救急車がきた。

「残念ですが・・・はい・・・・・・。」

「なるほど・・・・そうですか・・・」

警察と医者が会話している。

「は?はぁ?は?」

浮かぶ言葉はそれしかなかった。

他になにも感情が浮かばなかった。

「えぇ・・・っと。今ですねー目撃者の証言から、あなたが先ほど車に轢かれた子の・・・・」

「車に・・・・轢かれた?」

「はい。その子ご友人ですよね?詳しく聞きたいので・・・・・・を・・・・・・して・・・。」

分かんない。全く分かんない。

おい。カレン。なんで倒れてんだよ。

おい。おいおいおおいおいおいおいおいおいおいおいおぉいおい!!

顔上げろよ!おいぃぃー!!!

「あのー?大丈夫ですか?わたくしたちはあなたのご協力の元、この事件をかいけ・・・・」

「おい!!か、カレン!!」

やっとその時俺の意識は確かになった。

「大丈夫か!カレン!!しっかりしろよぉ!!!!おい!!起き上がれよぉーっぉ!なにやって・・・」

「はぁ・・・やっぱそうだよな・・・・・。おい!彼を取り押さえろっ!」

嘘だ嘘だ。おい。嘘だろ。こんなの。

俺は、複数の警官に取り押さえられた。

「や・・・・めっろ・・・・よぉおぉ!!離せ!おい!!!カレンー!!」

「あ、暴れないでください!これ以上暴れると暴行罪です!落ち着いてください!!」

「んなんだよ!!おまえらカレンをどこに連れてく!!!!!おい!か・・・・」

「さ、ササモト警部!もう彼はダメです!!完璧目の前の状況を理解できてません!」

「うぁヵぁぁぁぁあぁぁぁぁ!!!はなせぇぇぇぇぇえぇえよぉおおおお!!!!」

「おい・・・・少年。あの子は死んだんだ。」

嘘だ。うそつくなよ。

「嘘だと思うだろうけどホントだ。少年、お前が目の前で見たのは現実だ。」

「・・・・ふ・・・・ふっははっはは・・・・そっか・・・・」

「おまえら!彼を離してやれ!」

「そうだよなー!分かってるよ!そんなのぉお!!なんだよそれ!お前が殺したんだろ!離せよ!」

「ササモト警部・・・・。」

「離してやれ・・・・・・・・・・・分かったか。命令だ。」

「は・・・い。」

「おい!じ、じじぃ!てめぇよくもカレンを殺しやがったなぁぁぁ!!!」

俺は整理できなかった。何もできなかった。

ただ分かったのは感情が入り混じることだけだった。

俺はただ目の前にいた警官を殴ることしか出来なかった。

「・・・・・殴ってお前の気がすんだか?」

「なんだよ・・・・・・・それ・・・・。おまえ!死ねよ!お前が死ねよぉっ・・・っぉ!!」

「辛かったな・・・・。もういいんだ。お前が全部背負わなくてもいいん・・・」

嫌だ!来るな!

「ち、近寄るなぁぁぁ!!おまえらが見殺しにしたんだぁぁ!カレンはまだ生きて・・・・」

「死んだ。」

「は?」

「だから、死んだんだよ。カレンさんは・・・。」

「うっ・・・・うぅ・・・・・・・」

「もういい。お前が全部溜め込むことない。俺に分けてくれ。お前の悲しみ。」

「うぅ・・・ぅあっぁぁぁぁあ!!!!!カレン・・・・!!うぁぁぁぁぁぁっぁぁあ!!!!」

俺は泣き続けた。

周りに人がいる中で何度も。

人目なんて気にならなかった。

ただ涙が出てきた。

たぶんこれは悲しいってことなんだろう。

入り混じっていた感情の中で、俺は確かな感情に初めて気づいた気がした。

それから1年がたった。

俺は相変わらず何も変わらない日々を送っていた。

そうしてまたあの夏がやってきた。

「ごめんな・・・・。カレン。おまえ・・・・・・のこと・・・・・・・・・・・・・・・」

俺はカレンの墓の前でまた泣き崩れてしまった。

「少年・・・。大丈夫か?」

「あ・・・・ササモト警部・・・・・・・・・」

そこにやって来たのはあの時俺を、俺の入り混じる感情を・・・現実というものを気づかせてくれた人だ。

「ざんねん。もうササモトさんだよ。俺は。」

「え?」

そのあと俺は聞かされた。色々な話。

ササモトさんは、もう警察という職業をやめたらしい。

理由は、俺があの時警察という相手に暴行をくわえ、実際なら俺は今捕まってる状態。

でもあの時ササモトさんは、上の人たちに掛け合って、あれは仕方のないことだったといいあってくれた。

「まぁ、というわけだ。」

「ササモト警部・・・・でも、俺と一体なにが関係あってやめたんですか?」

「あっはは。こりゃびっくり。おまえは関係ないぞ?俺の意思でやめたんだ。」

かっこよかった。そう思えた。その時のササモト警部は、普通のササモトさんじゃなく、本当にササモト警部だった。

「俺は、あんな上の連中らの下で働きたくなかったんだ。まぁ、この話はいずれまたしてやるよ。じゃあな。」

去っていくササモトさん。

俺はまた泣き出してしまった。

今日は、命日だから泣かないって決めたのに。

くそ・・・・。泣いてしまったら・・・・・・・カレンが救われない。

「ごめんな・・・・カレン。あのな・・・・・聞いて欲しいことがあるんだ。」

そう。俺はこの言葉を言いたくて、この一年間ずっと報われない気持ちでいた。

「カレン、好きだ。」

あぁ・・・やっと言えたよ。やっと・・・・・・・・言えた。

「どうしたの?泣いちゃったりなんかして。ホントにもう!しゃきっとしなさい!」

「私?私はやっぱりうどん派かなー?あっはは」

「ほーら!私の元気を分けてあげるわー!!えーい!」

「なんでだろうね。なんかさー私どうしても・・・アキハのこと、好きなんだ。」

「え?」

俺は、全く知らない記憶に出会った。

いいや、記憶じゃない。

現実だ。

これは俺の物語の始まりにすぎない。

そう、全ては今始まったばっかりだったんだ。

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シリーズの途中から読んでしまったのか、話が全く判りません。