中編4
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ビー玉

親友の奥さんから聞いた話です。

十数年前、親友の奥さんの弟さんが築30年程の一戸建てを購入した。

リフォーム済みの物件だったので、築年数の割りに外装も内装も綺麗だったそうだ。

後片付けも一段落した一ヵ月後、知人を呼んでホームパーティーを開いた。

みんなでリビングでわいわい騒いでいた時、知人の双子の姉妹がいない事に気が付いた。

先程までソファに座ってジュースを飲みながらテレビを見ていたはずなのだが、見当たらない。

双子の姉妹はリビングに隣接した洋室にいた。

「何やってるの?こっちおいで」

父親が話しかけても何の返事も無い。

近寄ってみると、二人とも口をもぐもぐさせながら何かを食べている。

「何食べてるの?」

「アメだよ。ね?」

「うん。アメ。パパも食べる?」

「パパにもくれるの?」

そう言って手を差し出すと、次女は口からアメを出して、父親の手の平に乗せた。

「ありがとう」

父親はもらったアメを口に入れた。

すぐに違和感に気が付いた。

「なんだ、ビー玉じゃないか」

「まだいっぱいあるよ」

部屋の隅に置かれたカゴの中には百個近くビー玉が入っていた。

「ねぇ、ひかるくん。パパも一緒にあそんでい~い?」

「ひかるくん?って誰?」

「この子だよ」

そう言って双子は部屋の真ん中を指差す。

「誰もいないけど?」

「いるよ。寝っころがってるよ」

父親は、誰もいない場所を指差す子供を不思議に思ったそうだが、きっとそういう遊びなんだと思い、会話を合わせる事にした。

「あ、ごめんごめん。ひかるくん。おじさんも一緒に遊んでいいかな?」

もちろん、返事があるはずも無い。

「あ!お姉ちゃん。さっきの遊びやろ~よ!」

「うん!いいよ!」

双子は部屋の入り口まで移動すると、ビー玉を手に持った。

「いっせーのーっせ!」

「いっせーのーっせ!」

同時に床にビー玉を置く。

すると、ビー玉はコロコロと部屋の中央に向かって転がりだす。

「これって…」

双子の父親はホームパーティーの主催者である家主を呼んだ。

「ちょっと、これ見てみろよ」

「ん?」

双子が再び、ビー玉を床に置くと、コロコロと転がりだす。

「ひょっとして…」

「これは傾いてるよな。間違いなく傾いてる」

「リフォームしたばかりで内装綺麗だったから床の傾きまではチェックして無かったよ。後で不動産屋に連絡しとくわ」

「まぁ、古いし仕方ないんじゃない?」

「こっちは買ったばかりなのに、随分と失礼な言い方だな」

「ごめんごめん」

そんな感じで笑い話をしていると双子の長女が話しかけてきた。

「ひかるくんが怒ってるよ」

そう言いながら床に落ちたビー玉を指差す。

先程まで、中央に集まっていたビー玉が、一つずつ、まるで指で弾いているかのように、部屋の入り口に向かって勢い良く転がってくる。

「何これ?」

気が付くとリビングにいた他の人たちも集まりだしてきた。

「床が傾いてるだけだろ?」

「それにしちゃ、勢いありすぎじゃなかったか?」

「どうせ、子供の悪戯か何かだろう?」

「ほら、早く飲もうぜ!」

「ん?何やってるの?」

「ひかるくんがビー玉ちょ~だいって言ってるの」

大人たちが洋室を離れようとした時、双子が妙な事を始めた。

ビー玉のたくさん入ったカゴを持った双子が、部屋の外周をくるくると周りながら、床にビー玉を落とし始めた。

落したビー玉は先程同様、コロコロと転がり、部屋の中央に集まるだけ。

見ていた誰もがそう思っていたが、先程とは様子が違った。

中央はぽっかりと空洞になり、転がったビー玉が何かの形に見えてきた。

それが何かを一番最初に気が付いた双子の母親は、叫びながら双子を抱きかかえて部屋を飛び出した。

ビー玉が、人の形をかたどっていた。

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後日、床の傾きを直しに来た業者が床下を調べた際、黒いビニール袋に入った男の子の遺体が出てきた。

石灰まみれの遺体は、両親から虐待を受けていたのか、ビー玉を何個も何個も飲み込んでいたようで、口から腸まで、びっしりとビー玉が詰まっていた。

不動産屋の担当者から聞いた話によると、以前、住んでいた夫婦が自殺したが、子供は行方不明になっていたそうだ。

結局、家主はこんな曰くつき物件に住むはずもなく、引越しを余儀なくされた。

そして、引越しから数ヵ月後、一人息子が夜中に父親の耳元で囁いた。

「みつけてくれて、ありがとう。でもね、まだ、おとうとも、うまってるよ」

新居をお探しの際は、床が傾いていないか、しっかりと確認して下さい。

前の持ち主の、忘れ物が埋まっているかも知れません。

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おもしろい

某動画投稿サイトに効果音付きで朗読されているのを聴きましたが、怖かったです。

さとるさんのお話、どれも素晴らしいです!

さとるさんの新しい話待ってます(o^^o)

怖かった

怖い…いいお話ありがとうございます!

こわいし、おもしろい

ゾッとすると同時に、後からもジワジワと怖さが来ますね。中々質が高い!