中編5
  • 表示切替
  • 使い方

雑巾絞り

知人の息子が修学旅行の初日、夜寝る前に先生から聞いた話です。

その先生の知り合いが見た夢の話らしいのですが、真実かどうかは定かではありません。

----------------------------------------

nextpage

目が覚めると、ひんやりと涼しく、今にも切れそうな裸電球が一つだけの殺風景な部屋にいた。

真っ白いベッドから身を起こす。

何処にいるのかを把握するのに時間はかからなかった。

ここは、遺体安置室だ。

私は死んだのか?

そう思い、胸に手を当てる。

『ドクン。ドクン。ドクン』

動いている。

紛れも無く生きている。

安心した私は、周囲を見渡す。

遺体安置室には、ベッドが全部で三つあった。

他のベッドにも誰か寝ているようで、ひざ上から頭のてっぺんまで真っ白いシーツを被せられている。

寝ているのを起こすのは迷惑だと思い、あえて声はかけなかった。

『カラン』

ベッドから降りた時、足下で何かに当たった。

それはベッドに掛けられたプレートのようなものだった。

プレートには私の【名前】がフルネームで書かれ、読み仮名も振られていた。

他のベッドにも同じようにプレートが掛かっていたので、気になった私は他のプレートも確認した。

真ん中のベッドには【ねじりお】、その隣のベッドには【ねじりこ】と書かれていた。

これは名前なのか?

予想とだいぶかけ離れた名前に驚いたが、とにかく家に帰りたかった私は部屋に一つだけあるドアに向かった。

『ガチャガチャ』

開かない。

鍵が掛かっているようだ。

その時、急に頭が重くなり、意識が飛びそうになる。

身体が動かなくなった。

金縛りだ。

『ガサガサ。ガサガサ。』

背後で物音がした。

かろうじて首だけは動かせたので、横を向くと、背後が視界に入った。

ベッドを見ると、【ねじりお】と【ねじりこ】が同時に上半身を起こした。

薄暗いので表情までははっきりとは見えなかったが、私を見ているのは間違い無かった。

二人とも、髪の毛は無く、まるでデパートに置かれたマネキンのようだった。

衣類は一切見につけておらず、まるで骨と皮だけのような身体は拒食症患者のように見えた。

『カラン』

【ねじりこ】が立ち上がった際、プレートに足がぶつかったようだ。

私はもちろん【ねじりお】も立ち上がるのだろうと思ったが、違った。

【ねじりお】はベッドの両端を両腕で掴むと、身体をゆっくりとねじり始めた。

『ボキボキ、ゴリゴリ』

とても鈍い嫌な音がしたが、それでもねじるのを止めない。

上半身は一回転し、動きが止まった。

上下に分断された胴体からは、臓物が流れ出し、真っ白だったシーツはみるみるうちに変色していった。

『ドサッ』

【ねじりお】の上半身がベッドから落ちた。

死んだのか?一瞬そう思ったが、動き出した。

両腕の力だけで起き上がる様は【テケテケ】を彷彿させた。

それにしても痛々しい。

頭から落ちたのが原因だろうか、首が真横に折れ曲がった状態で私を見ている。

「イチニツイテ!」

突然【ねじりこ】が声を発した。

「ヨーイ!」

まるで運動会の競技で走り出す瞬間のように【ねじりこ】がポーズを取る。

「ドン!」

物凄い勢いで【ねじりこ】が私に向かって走り出した。

その間【ねじりお】は這いずりながらゆっくりと私に近づいてくる。

胴体から得たいの知れない臓物が垂れ流され、這いずった床は汚く変色した。

私は一瞬のうちに【ねじりこ】に抱きしめられた。

太もものあたりを掴まれ、振り払おうにも金縛りが解けず、身体が動かない。

足下を見ると、いつの間にか【ねじりお】が私の両脚に腕をかけている。

【ねじりお】と目が合った。

目があるべきはずの部分は空洞になっており、ミミズのような生き物がもぞもぞと蠢いている。

【ねじりお】は両腕を匠に使い、私の身体を徐々に上ってくる。

私の目の前に【ねじりお】の顔が来た。

唇を合わせてくる。

嫌な臭いと共に、口の中に嫌な味が広がる。

動いている。

口の中で得体の知れない何かがもぞもぞと動いている。

想像したくもなかったが、恐らく【ねじりお】の眼窩に入っていたミミズのような生き物を口移しさせられたのであろう。

【ねじりお】の口が私から離れた。

すぐさま口の中の異物を吐き出そうとしたが、口が開かない。

吐き出そうにも吐き出せず私は口内の異物を一気に飲み込んだ。

「イッセーノーセッ!」

再び【ねじりこ】が大声をあげた。

何が起こるのか見たく無かったが、自分の意思で目を閉じる事が出来ない。

【ねじりこ】は私の腰のあたりを掴みながら、右方向にゆっくりと回りだした。

【ねじりお】は私のお腹のあたりを掴みながら、左方向にゆっくりと回りだした。

まるで雑巾絞りのように私の身体をねじり始める。

視線が部屋を一回転したところで動きは止まった。

『ドサッ』

床に投げ出された私は目の前の光景に唖然とする。

私の上半身があるべき場所には【ねじりお】の上半身が置かれていた。

【ねじりこ】は裁縫箱から針と糸を取り出し、私の下半身と【ねじりお】の上半身を縫いつけた。

『ペタペタペタペタ』

私の両脚が足踏みを始めた。

私ではなく今はもう【ねじりお】の両脚と言うべきか。

【ねじりお】は遺体安置室の外周をくるくると歩き回り始めた。

『ガツッ…ゴツッ、ガツッ』

目が見えていないのであろう、全身をあちこちぶつけていた。

その時、急に視界が塞がれた。

【ねじりこ】が私の両目に手をあてているようだ。

次の瞬間。

『ブチブチブチブチ』

【ねじりこ】は私は両方の目玉を握り、ゆっくりと引きちぎった。

再び、裁縫箱を開ける音がした。

おそらく【ねじりお】に私の両目を縫い付けているのであろう。

『ガチャ』

数分後、遺体安置室のドアを開ける音と、二人分の足音がした。

真っ暗闇の中、取り残された私は両腕の力を振り絞り、部屋から出る為にベッドの上の【ねじりお】の下半身を探したが、見つける事は出来なかった。

----------------------------------------

nextpage

この夢を見た二週間後、先生の知り合いは交通事故で亡くなりました。

遺体の上半身は真後ろを向き、かろうじて皮一枚で繋がっていたそうです。

まるで【絞られた雑巾】のように。

この【ねじりお】と【ねじりこ】が出る夢はいくつかパターンがあるようですが、何処を絞られるかは分かりません。

また、助かる方法も分かりません。

この夢を見てしまった貴方に出来る事は以下の二つだけです。

・何もせず、一人で夢と同じ末路を迎える。

・【ねじりお】と【ねじりこ】の話を広め、道連れを増やす。

貴方ならどちらを選びますか?

私はもちろん…

Normal
閲覧数コメント怖い
19,25618
88
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ

影響されて似た様な夢見ちゃう人いるかも?

これはやっちまった

コレ系は文章だとあんまり怖くない

コワ

読まなければヨカッタ。。。

さとるさんの話いつも怖すぎ。毎回楽しんで読ませてもらってます。次回作はやくみたい。

キモ怖!ホラーな夢が見れそうです。

漫画化してほしい

|壁|lll´Д`)))ブルブルブル

怖い、、、その一言しか出てこない

トラウマになりそう…

子供に読ませるには怖すぎました。