中編3
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浜崎さん

いまから話すことは、偶然なのかもしれない。

だけど誰かに話したい気持ちを抑えきれないので、ここに載せることにする。

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数カ月前のことだ。

都内で、オレは普通に電車に乗っていた。多分地下鉄だったと思う。

平日のそれなりに混んでいる時間帯。

座席に座り、イヤフォンで音楽を聞きながら携帯をいじっていた。

乗り換えももうないし、もうひとりの世界に入っていて、目の前に立っていた人に気づかなかった。だから俺の視界にスッと男の顔が入ってきてビクってなった。

イヤフォンと電車の雑音で聞こえにくかったが、男が何か俺に話しかけているようだった。

イヤフォンをはずし、目の前の男に

「なんですか?」

ときいてみた。すると、

「浜崎さんですよね?」

浜崎さんて誰だよ。

最初、俺に話しかけたのか隣に座っている人に話しかけたのかわからなくて、辺りをキョロキョロしたが、その男は確かにオレに話しかけていた。

「いや、違いますけど…」

と否定すると、その男はすぐさま次の駅で降りてしまった。

いま考えると、なんで「浜崎さんですよね?」なんて断定的に言ったのだろう。

そんなにオレはその"浜崎さん"に似ているのだろうか。そのときは、そのくらいにしか思わなかった。

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そんなことが会ったのが数カ月前だ。

ここまでの話だと、ただ人違いされただけの話しになってしまうが、ここからがちょっと引っかかる。

ついこの間の話。

知らない電話番号から電話がかかってきた。

080から始まる携帯の番号だった。

オレの携帯は前々からよく間違い電話がかかってくる。つい先日も0933の関西だか九州の電話番号からかかってきて、それも間違い電話だった。

今回も、アドレス帳にない電話番号だったので、きっと間違い電話だろう。

「もしもし」

「あ、もしもしー?浜崎さんでいらっしゃいますか?」

……浜崎さん?

どこかで聞いたことがある。

浜崎さん…まさか、ね。

「…違います。間違いです」

「…あ、すみませんでした」

ブチッと、電話はすぐに切れ、オレは固まってしまった。思い出した。浜崎さんとは、数カ月前に人違いされた奴の名前だ。

怖くなった。こんな偶然あるのかと。

いや、考えすぎか。

相手は女の人だったし、きっと偶然なんだろう。そう思うことにした。

そして昨日のこと。

たしかあれは、バイト終わりの夜0時をすぎたくらい。

終電に乗り遅れそうになって急いでホームに向かっていたときだ。

横断歩道を渡れば改札という場所で、突然肩を叩かれた。

「うおっ」

肩を叩く強さが結構強かったため、体が少しよろける。顔を上げると、スーツを着た若い男。知らない奴だった。

ハァハァと息をきらせ、まるで全力疾走で走ってきたかのようだ。

「あの…、なにか…?」

オレ自身もびっくりしていて、少し戸惑いをみせながら相手を見た。暗闇でどんな顔かはよく見えない。

しかしその男は俺をまっすぐと見つめながら、

「またね。浜崎さん」

といって走り去っていった。

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これはただの偶然なのだろうか。

浜崎さんとは一体何者なのだろうか。

このことがあってから、間違い電話がかかってきてもオレは一切電話に出なくなった。

また「浜崎さん」と言われるのがこわくて。

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やあロビンミッシェルだ。

電話のくだりで終わるかと思いきや、もう一度のダメ押しでゾクゾクきたよ!…ひ…

顔が見えなかったという事だが、恐らくそれは三國連太郎氏だろうな…ひひ…

ここで、よく怖い話を読ませてもらってます。
でも、今ほど、怖い思いをしたことはありません。
この話が本当なら、これを書かれたご本人も怖かったのでしょうが、フィクションでもノンフィクションでも、私は怖いです。
数ある苗字の中から、なぜ、浜崎さんのでしょう。
そんなに多い苗字ではないですよね。
なぜ....浜崎なの...
私の苗字(;_;)

いいえ、わたしはあゆです。