中編5
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死者の言葉…

私は、怖い話やオカルト的な話を探す為に全国を旅する怖話ハンターだ。

今回ご紹介するのは、ある女性の体験した心霊現象である。

……………

実は彼女は…私との二回目の会見の翌日、変死体となって発見されている。私も彼女に何度か会っている事もあって、任意で事情聴取を受けた…

その時に、私は、不思議な事に気が付いた…

「死後、三日は経過していた」と捜査員が語ったのだ…

⁇ ちょっと待って欲しい…

私が彼女と会ったのは、遺体が発見される前日の夜だった…では、あの時、私の前に現れた彼女はいったい何だったと言うのだろう………

……………

彼女の遺体はかなり凄惨で酷(むご)い状態で発見されている。

自宅アパートのバスルームで見つかった遺体は、全裸の状態で…服部をナイフの様な刃物で裂き、内臓を引き摺(ず)り出し、その臓器を口の中に押し込まれ、更に、股間部をナイフで滅多刺しにされた状態で発見されている。

遺体の周りには大量の血と糞尿が垂れ流されていて、悲惨な現場であったと、捜査員は振り返る…

そのため、捜査員の中でも、何人か嘔吐した者が居るほどであったと言う…

…………………………

彼女と会う事になったのは、私のホームページへ…彼女がある心霊現象を体験したとのメッセージが書き込まれていたからだ。

私は直ぐに彼女と会う約束をして東京から約三時間、電車を乗り継ぎ、彼女の住む町へ…

彼女は清楚で清潔感のあるキレイな人で、話し方などもオットリとした優しい感じがした事を記憶している。

「はじめまして、カオリ(仮)です。」

見た目からも想像ついたが、人当たりの良さそうな人だった。

彼女が体験した怪現象はある男性(交際相手)の部屋で起こった出来事で、夜、彼と行為を行った後、布団で二人仲良く眠っていると、何やら気味の悪い唄が聞こえてくるというものだった…

彼にその事を伝えたが、彼には唄など聞こえておらず…まともに取り合ってはもらえなかったそうだ。

その唄声は子供の声の様に聞こえだが、甲高い、女性の声の様にも聞こえたという。

「どんな唄だったんですか?」

私がメモ帳とペンを取り出しながら尋ねると、彼女は、小声で歌いだした…

「カァゴォメカァゴォメェ…カァゴノナァカノトォリィワァ…イィツゥイィツゥデェアァウゥ…ヨォアァケェノォバァンニィ…」

聞き覚えがある唄…

題名は『カゴメ』で良かったかな…?

忘れてしまったが、子供の頃、この唄をよく耳にしていたし、自分でも歌ったことがある…

たしか、遊び歌だ…

ジャンケンなどで鬼を決め、その鬼の1人を真ん中に目を瞑らせ、座らせる…

後の者は、その周りを円を描く様に手をつなぐ…

そして、この唄を歌いながら真ん中の者を中心に時計回りに回る…

最後、『後ろの正面だぁれぇ…』と真ん中の鬼に問う遊び。私にも経験があった…

更に、彼女は、不思議な音も聞いたと話した。

『キーーーーン』と、高い音で長い時間聞こえたと言う…

それは彼にも聞こえたそうで、何この音?と話していたそうだ。

……………その日から、ほぼ毎日その唄と不思議な音は聞こえていると言う。

私はその日、彼女のウチに泊まり込む事にした。

本当にその音や唄が聞こえるならば、是非、録音したかったのだ…

時間は12時を過ぎた頃だった…

キーーーーンっと耳をつん刺す様な音と共に、小さい声だが唄が聞こえはじめた…しかし、カゴメでは無い?

「ワレノタマコヲワリモシタ…ミコノハラワタトリダシテェ…クチニホオバレバチアタリィ…バツヲアタエテタモォレ…ニドトワルサワサセナカレ…ユルシガタキノワルモノヲ…ケシテタァモォォレェェ…」

彼女にその唄が、いつから変わったのか尋ねると、今日、初めて聞いたと話した…

しかし、不気味な唄だ…

分かりやすく漢字を使って直してみる。

『我の玉子を割りもした、巫女の腸(はらわた)取り出して、口に頬張れ罰当たり、罰を与えてたもれ、二度と悪さはさせなかれ、許し難きの悪者を、消してたもれ…』

私が紙にこの様に書いて彼女に見せると、青ざめ、顔を両手で覆った…

「私…神社の生まれなんです…」

と彼女は小声で話した。何でも、彼女の実家は神社で、彼女は、昔から巫女の仕事を手伝っていたと言う…。

まさか…と思った…が、彼女は静かに語りだした。

「私、小さい頃、父にけして触れては成らない!と言われていた、ある『玉』を持ち出して…それを落として壊してしまったことがあるんです…父にかなり叱られたのを今でも覚えています…その後、私を本殿の神前に連れて行き、お祓いの儀式を行ったんですが………」

なるほど、その時の玉に封じ込められた、何らかの憑き物がまだ少し残っていて彼女の元にまた現れたわけか…

と私は思った。

その声は確かに、不気味で恐怖したことを覚えている…

収穫があった事もあり私はその日、彼女の…いや彼女の交際相手の家を、彼女に後日また会う約束をして、後にした…「今日は帰らないはず…」と言っていた彼氏が深夜、帰ってきたからだ…まぁ、正確には気味が悪かったってのが、本当の理由だ…

後日、ファミリーレストランで彼女と落ち合い、あの夜の事と、その後また何か無かったか?などを話した。

少し不思議な事を彼女は話した。

『カゴメ』しか聞いていないと言うのだ…

いや、二人で確かに聞いたはずだと、メモ帳に書き取ったメモを見せたが、覚えが無いと言う…

仕方なく、録音したテープレコーダーを聞かせようと彼女にヘッドホンを付けさせ、スイッチを入れる……

「カゴメの唄とあのキーーーンって音しか聞こえませんけど?」

そんなはずは無い!と彼女からヘッドホンを取り上げ聞いてみる…

た……確かに…

そこには、あの時聞いたはずの唄は録音されていなかった…すると彼女は、

「でも、不思議ですよね…なんで○○さん(私の名前)私の作った唄、知ってるんですか?」

と、彼女は私のメモ帳を眺めながら、呟いていた…

……………

あの不思議な出来事と事件の因果関係は明らかではない…

Concrete
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