中編3
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リプレイ!

テレビゲームが大好きな僕は、「殺人レストラン」というゲームに夢中だ。

それはどこにも売っていない、誰も知らない、不思議なゲームだ。

どうやって手に入れたかって?

それはヒミツ…。

とにかく朝から晩までこのゲームをやっている。

「リプレイ」ができるので、どんどん先に進める。

敵キャラにやられたって、主人公は何回でも生き返る。

便利だよな、「リプレイ」って。

ゲームを始めてから一週間で、ついに最終面のボスを倒した。

ヤッター、エンディングがみられるぞ!

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画面には、レストランとシェフがでてきた。

なんだ、変なエンディングだな。まあ、いいか。

「リプレイハンバーグ」にしよう。

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ワカリマシタ。ソレデハ、ヒツヨウナトキニ ¦

「リプレイ」ト、イッテクダサイ。 エンド¦

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これで終わってしまった。おかしいよな、このゲーム…..。

もう、ねよう。

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次の日から、僕の人生はバラ色になった。

なぜかって?「リプレイ」ができるようになったからさ。

本当だよ。

やり直したいことがあると、過去に戻って、やりなおせるんだ。

「リプレイ」って、いうだけでね。

便利だろう!

テストなんか全部百点!

だって、問題を見てから、昨日に戻っちゃうんだ。

そして、そこだけ勉強すればいいんだから。

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朝、眠くて起きたくなかったら、前の晩に戻って、もう一回寝ちゃうし….。

美味しいおやつだって、何回も食べ直すことができる。

ネッ!バラ色の人生だろう。

今日は日曜日、もう十日間連続の「日曜日」だよ。

でも、そろそろ飽きたから、明日は「月曜日」にしよう…。

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月曜日の放課後、友達の正樹と「ヒミツの場所」

に遊びに行った。

そこはもうすぐ取り壊される古いビルで、

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「立入禁止」になっているから、誰も来ない。

だから、思いっきり遊べる。

「正樹、今日はビルの屋上に登ってみよう。

おもしろそうだよ。」

「ダメだよ。だって屋上には外壁についているハシゴを登らなきゃいけない。

危ないよ」

「平気、平気。さあ、登ろう。」

「ダメだよ、危ないよ。落ちたら、死んじゃうよ」

とめる正樹を無視して、僕はスイスイ登りはじめた。

「リプレイ」があれば、怖いものなんかない。

もし、落ちてもまた登り始める前に戻ればいいんだから….。

ハシゴの最後の一段に手をかけた時、

「バキッ!」という音がした。

鉄のハシゴはさびて、もろくなっていたんだ。

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こわれたハシゴから、僕は頭から下に落ち始めた。

でも、全然恐くない。

「リプレイ」

僕は、呟いた。

「バキッ!」

いけねっ、戻る時間が短すぎた。また落ちる所から、

始めちゃったよ。あわてない、慌てない、

もう一回「リプレイ」。

「バキッ!」

あれ、まただよ。

おかしいな。「バキッ!」より前に戻れないぞ。

もう一回、「リプレイ」。

「バキッ!」

まずいぞ….、まずいぞ…..。

「リプレイ」「バキッ!」「リプレイ」

何十回、いや何百回「リプレイ」と叫んだろう。

でも、いつも「バキッ!」………どうしても、

落ちる前に戻れない。

お父さん、お母さん、助けて!!

「リプレイ!」

「バキッ!」

こんなの嫌だ!!

これを、僕は永遠に続けなければならないのか。

でも、もし、「リプレイ!」と叫ぶのをやめたら….

嫌だ!

今でも叫び続ける。

「リプレイ〜!!」

「バキッ!」……。

Concrete
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