中編4
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落語 タヌキの仕業

落語風にお送りします。

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落語ってやつは、嘘も誠もひっくるめて噺にいたしますので、もしくは、この噺は真実なのかもしれません…

………………

ある山間の小さな家に彦六さんってぇ老父が居りました。

この爺…山で生まれ育ったってんで、里の空気は馴染めないと…

あまり…里には降りなかったそうでございました。

まぁ…若い頃は、彦六さんも里で暮らして居りましたし、里には娘も住んでいる…里で一緒に暮らさないかと何度か言われておりましたが、余生は自分の生まれ育った故郷でおくりたいと…静かな田舎で、ひっそりと暮らしをしておりました。

しかし、ある日…どうしても里に降りなきゃならない用事が出来たってんで、彦六さん…

里に降りる身支度をして、ソロソロと出掛けたそうでございます…

「なんだべなぁ…あんまり里に降りねぇもんだで、何処をどう降りたら良いか忘れちまったべなぁ…しっかし…そうも言ってらんねし…兎に角ぅ、川沿いを行ってみるべか…」

彦六さんのウチから少しばかり下に下るってぇと川がございまして、そこを下流に下る…

足腰も弱っているせいか、ゆっくりとした足取りで…なかなか里が見えてこない…

川沿いと言っても山道でございますから、険しい道が続きます…

「へぇあぁ!疲れたべなぁ!少しばかり休むべかぁ…」

と、座るに丁度いい岩がございましたので、そこに腰掛ける…するってぇと

……妙な感覚を感じる…

ヒョイった立ち上がりまして、岩を拝見しますってぇと……

文字が彫られておる…

「いけねぇ!墓だべこりゃ…てえへんなな事しちまっただなぁ…ナンマンダブ、ナンマンダブ…」

手を合わせて念仏を唱える…

何と書かれているのか見てみる…が、分からない…

そりゃそうだ、まともに文字を学んでこなかった彦六さんでございますから、読めるわけが無い…

兎に角、罰当たりな事をしてしまったってんで……

ウチより持参いたしました、握り飯を墓石の脇に供え、もう一度、合唱して、そこを離れようといたしますってぇと…

『コレジャナイ…ヒトノニク…』

地響きの様な声が聞こえる…

振り向き墓石を見る…が、何も無い。

気のせいだと歩き出しますってぇと…

『カラダヲオイテイケ…』

また聞こえる…天狗かもしれんと、怖ろしくなった彦六さん、弱った足腰を引きずる様にして走り、逃げたが…

「オイテイケ…オイテイケ…オイテイケェェ…」

彦六さん墓石を見ようと振り替える…するってぇと足を滑らせ転んじまって、「痛てて…」と顔を上げますと……

崖の隙間に洞穴がござる…

何故か引き込まれる様に立ち上がりその穴に向かう…

中は冷んやりとしておる…

「走り、汗をかいたでな…これは気持ちがいいべ…」

それに先ほどの声も怖ろしい…ここで隠れていれば、天狗にも見つかるまいと一休みする事にした…

目を瞑り一眠りしておりますると…

洞穴の外に何やら動物の息遣いと足音が聞こえる…

狼か?熊か?

岩陰に身を潜め息を殺しておりますってぇと…

それは、洞穴の前で足を止め

「ぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼ…」

と、奇妙な鳴き方をする…

外からの明かりで出来た陽だまりに影が映る…

人の腕…長く細い腕がにょろりと動く…

体も映るが普通ではない…

横を向いた時にそれはハッキリとわかったそうで…

体が顔の様に見える…

鼻があって、口もパクパクと動いておる…

また鳴く。

「ぼぼぼぼぼぼぼぼぼぉ…ヒトノニオイィィ…スルゥ…スルゥ…ココカラ…スルゥ…スゥルゥウウウ!!」

その地響きの様な声が洞穴に響き反響するってんで、それはそれは怖ろしい!

山に住む祟り神に違いないと、目を瞑り合唱して、蹲っておりますってぇと…ソレはいつの間にやら聞こえ無くなっておったそうな…

瞑っておった目を開けますと、辺りは目が眩むほど暗い…先ほどの日の光が嘘の様にまっ暗闇で、驚いておりますと…

地面が動く…

湿った…いや…ヌメヌメとした何やら気持ちの悪い手触り…

するってぇと…突然、ゆらりと辺りが揺れ光がさす…

ギザギザの影?

まるで何かの口の中にいる様な…

洞穴に光がさし…眩しくて目を細めておりましたが、目が慣れ辺りが見える様になりますってぇと…彦六さん驚いた!

ギザギザの歯!

デロリと紫色の舌!

真っ赤な喉ちんこがブルルと震える!

「ひゃああ!!」怖ろしくて声を上げる…

するってぇと…ビクッ!と辺りが揺れ、ペッ!!と彦六さんを吐き出し…

「オイタニンゲン、マズイマズイ…」

と震える様な声がする…

恐怖のあまり彦六さん目を瞑り震えておりますと、辺りが静まり返り…

いつの間にやら、また先ほどの洞穴の中におったそうな…

慌てて外に飛び出すと既に月が出ておる…

朧月夜(おぼろづきよ)…

「タヌキの仕業か?酷いイタズラだべ!今度見つけたら、獲って食ってやるぞ!!?」

そう呟きながら、今日はもう暗く歩くのもしんどい…と仕方なくそこで、一夜を過す…

朝の光が眩しくて起きますると…

何故でござんしょう…

自分のウチにおる…入口より光がさし、彦六さんに降り注ぐ…

夢か幻か?

タヌキに化かされたか?

そうに違いないと、外に出まして山を見る…するってぇと…

『ぼぼぼぼぼぼぼぉ!!』

とあの時に聞いた怖ろしい声が…

したかと思ったら、チョコンとタヌキが飛び出してまいりましてな…

「お前か!イタズラタヌキめ!こうしてやる!!」

と、ひん捕まえて、皮を剥ぎ鍋にして食っちまったそうな…

しかし、あれはタヌキの仕業か?それとも山の祟り神の仕業か?

怖ろしいのは化け物でもタヌキでも無く人間じゃあないかとと言うお噺…これまで。

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毎度テンポ良く読みやすく作品に引き込まれます。
次作も楽しみにしています!

ぼぼぼぼぼ・・・ が、八尺様みたい(笑)

ファントムルージュ様、貴方も好きですね。落語家がこれ読んでいたりしたとしたら怒られますよ…勝手な事するなって。ど素人の創作落語ですからね…でも、いつもありがとうございます!

犬神さんの落語怪談、安心して読める。色々と言う人いるけれど、世界に引き込んでくれるから語り人だと思ってます。楽しめるなら、作風のシバリなしで

匿名様、そう言った話も書いていますよ。