短編2
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トンボ

トンボを捕まえて羽を左右に思い切り開く。

子供の頃にやったことのある人も多いんじゃないだろうか。

そう、あれ。シーチキンみたいなトンボの筋肉が見えるやつ。

今思うとかなりヒドいが、子供のときは好奇心に負けてやってしまったっけ。

秋になり始めたころの話です。家の公園を横切ったとき、昔の僕と同じことをしてる男の子がいました。

トンボの羽を思い切り引っ張って、トンボの背中が裂ける。

やっぱり幼いときはやってしまうのかなって思いながら見ていました。

でも、その男の子はおかしかったんです。

虫かごに何匹かトンボが入っていて、トンボを裂いては虫かごからトンボを出してまた裂いてはトンボを出す。

すでに男の子の足元には、遠くから見てもわかるぐらいのトンボの死骸がありました。

さすがに注意しようと思い、男の子のすぐそばまで行きました。

「ダメだよ、そんなことしたら。」

そばまで近づいて気付いたのですが、男の子の周りにはトンボだけでなくミミズやカエルの死骸もありました。

しゃがんでいた男の子は僕を見上げて、そこで初めて男の子の顔が見えました。

どこにでもいるような、普通の男の子でした。

「何でそんなことするの」

「お父さんも子供の頃、トンボをシーチキンにしてたんだって。男はいたずらして大きくなるんだって。」

「早く大きくなりたいんだもん」

僕は何も言えなくなりました。ゾッとしました。

男の子には家庭の事情があったのかもしれませんが、それ以来その男の子と会ったことはありません。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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