短編2
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夢で訴えるものは・・・

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 ある日、いつものように出勤しました。

いつもの朝、いつもの仕事を淡々とこなしていたその時、突然同僚が

「あ、夕べ夢を・・・」

と言いかけた瞬間、私の頭の中にある情景が広がり

「あっ、ああ~~、私も見た~!!!」

本当に、これだけの言葉のやり取りで、瞬時にお互いがどんな夢を見たのかを理解したのです。

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 その夢とは・・・

同業の古くからの知人が登場するのですが、障子に囲まれた6畳程の和室の中、私と彼女が向かい合って座っています。

彼女は、今では時代遅れの瑠璃色のスーツ(工藤静香が「嵐の素顔」で着ていたようなデザインw)を着て、私の前で少し腰を浮かせた感じで落ち着かない様子でいます。

彼女はニコニコしながら世間話を続けるのですが、何故かそれを聞いている私は

(本当はそういう話をしたい訳じゃないんじゃないの?)

と思っています。

無駄に費やされる時間に自ずと伏目がちになり、体も少し正面から逃げていくのを自覚しながら、それでも繰り返される彼女の話にしょうがなく相槌を打ったり、愛想笑いをしたりしています。

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 一方、同僚が見た夢は、それまで何か楽しい夢を見ていたそうですが、そこに知人が登場し、まるで幕を引くようにその場面を左から右に押していき、和室の場面に切り替えてしまったとのことです。本来同僚は、見る夢をコントロールすることができるので、かなり抵抗をしたそうなのですが、強引に夢に入ってきたそうです。

そして、和室の外の廊下に立っているのですが、その場に立っていながらテレビカメラで映すように和室の中を天井の方から覗いています。

そこにはまるっきり私が見た夢と同じ部屋、同じ登場人物、同じ服装、同じ会話が展開されています。同僚はそのやり取りを見ながら

(新規の事業を立ち上げたのだからどうして一言「よろしくね。」と言わないのか?言えば私が「わかったよ。」と返事をするはずなのに)

と思ったその時、同僚を呼ぶもう一人の人物が登場します。

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その登場人物とは、知人の上司であり、その会社の社長でした。

彼は同僚を廊下の先の玄関の外まで呼びます。

同僚はやはり和室の外の廊下に立ったままですが、テレビカメラで映すように瞬時に玄関の外を見に行きます。

そこで、社長に

「うちの○○の性格わかるでしょう?なかなかお願いしますと言えないので、ぜひ(私に)口添えしてやって欲しい。」

とお願いされてしまい

(ええ~~?!)

と思ったとのことでした。

お互いに見た夢の話をした後、どうして同じ夢をこの日見てしまったのか二人で考えたところ、今日は知人の会社が新規事業を開設する日だったのです。

そこに思い至った時、彼女の同時に2人に夢を見させるまでの強い念に、薄ら寒さを覚えました。

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