中編3
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廃病院にて

先輩と、数人の女の子で、肝試しに行く事になった。

その場所は、出ると噂の地元の廃病院。

廃病院に着くと、重々しい雰囲気が辺りにあった。

先輩「出るって噂だし、本物の幽霊に、今日会うことができるな。」

自分「先輩、そういうの好きっすねー。」

A子「でも、そんなふざけた気持ちがあると、本当に出るってきかない?」

そんなやり取りをしながら、僕らは廃病院に懐中電灯一つ持って、入っていった。

中は予想通り真っ暗。

懐中電灯の明かりだけが、通路を照らす。

ガラスは割れて地面に散らばり、歩くたびに『パキパキ』と音を鳴らす。

先輩「階段があるぞ。二階に上がろう。」

幅広の階段を上り、二階へ。

A子「どうして廃墟って、ガラスとか割れてたり、壁とかボロボロなの?」

泣きそうな声で、つぶやく。

自分「まあ、誰か入らなきゃ、幽霊が出るとか噂は流れないよ。」

病院には、自分の声が反響して聞こえた。

ふと、病室の前でなんとなく、皆、足をとめた。

誰からというまでもなく、入っていった。

…ガラスは割れて窓枠だけとなり、壁はボロボロ、床はゴミだらけだった。

…自分のシャツの裾を不意に引っ張られた。

振り向くと、A子以下、女子達が口に人差し指をあてて、病室の扉を指さしていた。

…なるほど。先輩を驚かすつもりだな。

日頃大した恨みがあるわけではないが、まあ、これくらいなら先輩も怒らないだろう。

幸いにも、懐中電灯を持っているのは、自分だ。ちょっとくらい暗闇に置いといても、と思い、A子達の話に乗ることにした。

そーと、扉に近づく。先輩は窓から外を見ていて、気が付く素振りはない。

自分「今だ!」

言うが早いか、女子達が扉を閉めた。

閉める瞬間も、先輩を見ていたが、こちらを振り返る様子はなかった。

扉を閉めた自分達は、階段まで走り、一階まで降りたところで、止まった。

皆、ハァハァと息を荒げで、階上の様子を伺った。

……

………

なにもない。暗闇と静けさだけがそこにあった。

A子「ねえ。先輩の声、聞こえる?」

耳をすましても、なにも聞こえない。

自分「怒ってるのかな?でもこんなことで、怒る人じゃないと思うんだけど…」

B子「でもさ、閉めたときも、なにも言ってなかったよね?」

そういえば、『今だ!』って叫んでも、先輩はこちらを見向きもしなかった。

…おかしい。

五分待っても、十分待っても、先輩は戻ってくる気配も、声も聞こえない。

自分「先輩のところに行こう。」

そういって、さっきの病室に向かった。

病室の前についた。

だが、先輩の声は聞こえない。

自分「開けるぞ。」

そう言って、扉を開けた。

…中は暗く、パッと見た感じは、見当たらなかった。

懐中電灯を持っているのは自分なので、必然的に探すのも自分である。

懐中電灯を窓から、左の壁にあて、右の壁にあてたとき、

先輩がいた。

…いたが、

先輩が、ボロボロの壁に向かって、

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壁をなめまわしていた。

……

………

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これは、

これは、まずい!

ほんの数秒、みんなが固まった状態だったが、自分が『先輩!』と叫んだとき、一斉に、体を掴み、皆で壁から剥がして、車に連れ込んだ。

車にのせたときは、意識朦朧としていた先輩も、10分も走らないところで、

先輩「あれ?ここどこ?」

自分「先輩、覚えてないんすか?」

先輩は、病室の前までは覚えていた。そこからの記憶がなかった。

自分「先輩、突然倒れちゃって、みんなで慌てて連れて帰ってきたんですよ。」

…流石に壁を舐めまわしていたとは言わなかった。いや、断じて、先輩を閉じ込めたことを隠して、というわけではない。

なぜ壁を舐めまわしていたのか、今でも不思議に思う。

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この話は、友達から聞いた話です。現在、この廃病院はなくなり、大きな道路になっています。

Concrete
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怖い、というか気持悪い(笑)

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