中編5
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今日も見るのかな…?

泥棒!?

ある夏の暮れ、夜中 ふと 目が覚め、人の気配に気づいた私は真っ暗な部屋の中をぼやける目を擦りながら見渡した…すると、人影がゆらゆらと立ち尽くしているのが薄っすらと見えた…

でも、変だ…ここは田舎で、街灯なども少なく夜になれば、部屋の中は、信じられない程、暗くなる…しかも、その日は月も出ておらずなに一つ見えない夜…なのだが…

その人影は目が慣れハッキリと見えるようになると、更にクッキリとその姿を捉えられるようになってゆく…

「誰?ママ?」

反応が無い…

どうやら向こうを向いているようで顔は分からない…が、それが女性であることは何故かハッキリと分かった。

起き上がろうと身体を動かそうとする…が…

「なにこれ?動けない…何で?ちょっ…」

はっ!っとこれが金縛りとよばれるものだとようやく気づき、目の前の人影がこの世のものでは無い事が分かった…

やばい…こんな事初めてだ…この人、私をどうする気だろう…

オカルト好きがこうじて、恐怖よりワクワクが先行した……。

…………

そうこうして、かれこれ一時間ほど、こう着状態が続く…が、以前、その人影が此方を向く気配が無い…

「あのぉ?そろそろ身体動かしたいんですけど?トイレ行きたくなっちゃったし…ほんの少しタイム貰えませんか?」

私がこのような状態にありながら恐怖を感じなかったのは、その人物に見覚えがあったからだ…

小学生の頃、私の住む家の隣にある夫婦が住んでいた…

いつも笑顔がトレードマークの旦那さんと、綺麗でとっても優しい奥さん。

私はいつも学校の帰りにその家に寄って奥さん…いや、私はお姉ちゃんと呼んでいたその人から手焼きのクッキーや甘ーいキャンディを貰ったりして過ごした事があった…時には家の中まで招き入れて貰ってジュースなんかも頂いた記憶がある…

でも、ある日を境に一切あの家の玄関の扉が開くことが無くなり、どうしたのだろうか…お姉さんもうここにはいないのかな…どうしているだろう?…引っ越したのかな?と、寂しい毎日を過ごしたが、そのうち徐々に忘れていった。

その夫婦が亡くなったと聞かされたのは、私が中学に上がるほんの少し前のことだった…

二人で旅行中、事故で旦那さんが半身不随の重症をおい、お姉さんはずっと彼の看病をしていたそうだ…

旦那さんは殆ど生きる気力もなくなっていたそうで、ある日、そばにあった果物用のナイフで自らの命を絶ったそうだ…そのこと(鬱気味だった彼のそばにナイフを放置したこと)を苦にお姉さんも程なく後追い自殺をしてしまったそうだ…彼を守ることができなかった…大事な人を失った…その悲しみの中でとても可哀想な死に方をしていたそうだ…耳を塞ぎ…目も潰して…そして暗い海の底に沈んで…

………。

彼女が今再び私の目の前にいる…優しかったあのお姉さん…

その記憶だけしかなかった私に恐怖は全く感じられなかった。

もともと、オカルト好きでちょっとやそっとじゃ動じない免疫のようなものがあるせいかもしれないが…

だが、恐怖はこの後まっていた…

突然、彼女はフッと消え、何事もなかったように金縛りで身動きの取れなかった私の身体も動かせるようになったのだ…が…

変なのだ…

その時、急に私の耳が全く聞こえなくなったのだ…大概、田舎の村とはいえ、虫の音や風の音なんかが聞こえるのだが、全くなんの音もなくなったのだ…痛いくらい…耳って塞いでも何か聞こえるでしょ?…シーンって音すら聞こえないって…分かる?分かんないよね。

当然だけど自分の喋る声さえ聞こえないの…怖いでしょ?

手探りで電気のスイッチを探す…紐を引っ張るタイプ…寝ていても手の届く様に長い紐をつけてある…

ん?おかしい…

今まで暗闇で目を開けていたのだから、流石に少しは目が慣れ周りが見えるようになっていてもいいはず…なのに…何故手探りじゃなきゃ紐が見えないんだ?…

……

電気のスイッチを着けてようやく理解した…

目も見えていないのだ…

音も聞こえない目も見えない…これほど怖ろしい事は無い…

フラフラと立ち上がり、部屋を手探りだけで歩く…キティーのぬいぐるみを踏んだり、テーブルの角にスネをぶつけたりしてようやく

扉を見つけ廊下に出る…

母や父を起こして、今の状況を知らせなければ…

声をあげる…ん?出ているのかすらわからない…声の出し方はこうだったかしら?いや、この分だと出ていない気もする…でも、わからない…目の前は真っ暗…親が起きてくる音も聞こえない…廊下の電気が着いたとしても私には分からない…廊下の壁をつたい、記憶を頼りに歩く…

部屋を右に出て、だいたい四歩から五歩、隣の部屋…父と母の寝室の扉が…取手は…扉の右だったかしら?ひだり?…ううん…先ずはノックしなきゃ…

……

ダメ、バカみたい…どうぞって声が聞こえるわけもなし…誰?も無い、しかも今、時刻は夜の2時過ぎだ…寝てるに決まってる…開けよう…

あれ…この扉、押したっけ引いたっけ?

引く…開いた。

当然何も見えないし、聞こえない…

声を掛ける、一応…

出てるかどうかは分からない…

!!!!?

触った!誰?パパ?ママ?どっち?…あっ…ママだ…匂いがママのシャンプーだ…

でも、困ったどう話す?

取り敢えず口を動かす…喋り方を忘れてしまう前に…今喋れることを全て…目が見えないこと…耳が聞こえないこと…隣に住んでいたお姉さんが化けて出たこと…喋れているか分からないけど…

「ほえでね、あさしの…」

あれ?聞こえる?

「あれ?聞こえた…」

わっ!パパ!?ママじゃなかったの?………って目も見える!!

「お前、なに寝ぼけてんだ?早く寝なさい…まったく…ブツブツ…ファぁ…」と父は眠そうにアクビをしながら寝床に戻って行った…

「びっくりしたぁああ!」

「ビックリしたのはこっちだ馬鹿!早く寝なさい!」

母が怒鳴る…

しかし、もうこのままヘレンケラーの様な生活をするのかと半ば諦めるところだった…

どうやら夢かな…?どこから?今まで?うーん…まあいっか…

父に後でシャンプーのことを聞いたら、「俺の切らしちゃったからママの使った」だって…

……………

この夢を次の日もまた次の日もそのまた次の日も一昨日も昨日も見たことはパパにもママにも内緒…

今日も見るのかな……………?

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