長編8
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実は見えていた

これは私の友人から聞いた話です

私は友人とは同じ派遣会社で知り合いまして、友人は自営業をしているのですが、不景気で売り上げが上がらないので、時間のある時に派遣でお金を稼ぎ、生活費の足しにしていたみたいなんです

友人は心霊現象とは無縁で、見た事もなければ、なんなら少し怖がりな部分もあり、ホラー映画やそう言う類の番組も見ない人だったんですね

そして、ある冬の日の夜、取り壊しの決まった病院内の夜回り警備のバイトがあったそうなんです

先に述べた性格ですので、そんな仕事最初はもちろん断ったみたいなんですが、友人はお願いされるとノーと言えないタイプの人間でしたので、ついつい受けちゃったんですね

そこの地域は冬場氷点下になる事もあり、寒さを凌ぐ為ホームレスが病院内に入り込んだり、肝試しに若者が来たりするらしいんです

もし、病院内で何か起こると取り壊し作業に支障をきたす恐れがあるので、もし人を見かけたらすぐ出て行ってもらうようにしているみたいなんですね

そこの病院の警備に来ていた先輩に聞いたところ、肝試しの若者は結構簡単にいう事を聞いてくれるが、ホームレスに関しては中々手強いそうです

やはり、外は物凄く寒い

出て行きたくないとタダをこねるそうなんですね

そう言う時はスグ警察を呼び、後は警察に任せているそうです

さて、ここの病院は地上3階、地下1階の4フロアあり、警備員はそのフロア全てをただただ歩き回るだけの簡単な仕事みたいなんです

普段はそこに常駐している警備会社の社員と、派遣が2人の計3人で懐中電灯と無線を持って別々に見回りをしているそうです

その日は友人ともうひと方、ここではわかりやすくAさんとしておきますが、そのAさんの2人が派遣されたみたいです

最初Aさんは集合時間になっても集合場所に現れませんでした

友人は会社にその旨を伝えると、こっちから連絡してみるから、一人で向かってくれとの事でした

駅から徒歩15分位、住宅街から少し離れた場所にひっそりとその病院はありました

するとその病院の入り口に誰か立っています

友人は少し驚きましたが、派遣先の社員かな?と思い声をかけてみました

すると、その人がAさんだったんですね

なんでも、駅で待っていたが友人が来なかった為、会社に連絡して先に一人で病院に向かったとの事でした

ただの入れ違いが…

友人は正直ホッとしました

夜の廃病院にもしかしたら1人で…

社員がいるにしても正直心細かったんですね

聞くとAさんは歳は56歳で、2年前に職を失い派遣のみで生活をしているようでした

友人とAさんは軽く挨拶をかわした後、病院内の待ち合わせ場所に向かいました

その道中Aさんがボソッと話し始めたんですね

これ食べます?目物凄く覚めるんですよ

渡されたのはコーヒーキャディーでした

カフェインが沢山入っていて、眠たい時に舐めると徐々に目が覚めてくるみたいです

ありがとうございます。また眠たくなったら食べてみます!

お礼を言うと友人はそのコーヒーキャディーをポケットにしまったそうです

薄気味悪い所ですね…何か出そうですね…

Aさんは話を続けます

怖いのが得意ではない友人は、やめて下さいよ〜と笑いながら返事したみたいなんですが、Aさんは話をやめませんでした

私ね、見えるタイプの人なんです。あなたは見えたりするのですか?

急な質問にゾクッとしましたが、友人は今まで見えた事もないので、僕は見えないですとハッキリ答えたんですね

するとその時Aさんの表情は少しニヤッとしたようにみえたらしいです

病院内に入り少しするとAさんが急にお腹を下したと言い出しトイレに行きたいと言い出しました

友人は社員さんと合流した後トイレについて聞くのでそれまで我慢出来ますか?と聞いたんです

すると、わかりましたと答えたので、まず社員との待ち合わせ場所に向かう事にしたんですね

待ち合わせ場所に着くと、青い制服を来た社員がいまして

友人とAは元気良くお疲れ様です!挨拶をしました

そして、早速トイレについて質問したんですね

すると、トイレは1階を使って下さい、1階のみ水が流れるのでそれ以外ではトイレはしないように。後電気は非常灯以外つきませんので、足元には十分気をつけてくださいね。との事でした

友人はわかりましたと言うとAさんはササッとトイレに行っちゃいました

すると社員はAさんを待たずに話し始めたんですね

1人足りないけど、話しだけ進めちゃいますね。また来た時に教えてあげて下さい。今日は派遣の方2人で病院内を回ってもらいますので

わかりました!

友人は社員から、一通り話しを聞き懐中電灯2個と無線機を預かりました

社員は地下と1階を見回るから、派遣は2階と3階を見回って欲しいとの事だったんですね

仕事内容は、各部屋に入って異常や、侵入者は居ないかの確認、窓等の施錠の確認、落書き等の確認がメインみたいだったんです

2フロア見るのに大体1時間位かかるらしく、休憩は2フロア見るごとに15分位適当にとってくれとの事でした

そして20時から朝の6時までひたすら見回りをして欲しいとの事でした

とりあえず、2階に上がる為階段の前でAさんを待っておこう

友人はAさんが向かったトイレの方向にある階段を目指して歩く事にしました

するとちょうどトイレの前を通りかかった時にAさんが出てきたんですね

Aさんに仕事内容を説明し、懐中電灯を渡すと、早速2階から見回りを始めていきました

病院は取り壊し前だったんですが、そこまで荒れている様子もなく、結構綺麗だったんですね

友人とAさんは一部屋ずつ鍵を開け、窓は閉まっているか、鍵はかかっているか、落書きは無いか等言われた事をきちっとこなしていきました

途中休憩もきっちり挟み、何回も何回も見回りをしている内に時間は深夜2時を回っていました

丑三つ時ですね…

急にAさんがボソッと言ったんですね

怖い事無しですよ!マジで〜

友人は冗談っぽく返事しましたが、Aさんの顔が妙に真剣なんですね

そして、3階のある部屋に入った時Aさんが急に話し始めたんです

私がさっき見える人っておっしゃった時、あなたは僕は見えない人って言ったでしょ。でもね、それはあなたが気づいてないだけかもしれませんよ

友人はドキッとしましたが、その場の雰囲気のせいなのか、Aさんの雰囲気のせいなのか、恐怖を忘れAさんの話に耳を傾けたんですね

あなたがよく、電車や街中等人の多い所ですれ違う、挨拶もしない、声をかけられる事もない赤の他人…その方が生きているって確証が持てますか?あなたは見えているのに、それに気がついてないだけ…かもしれないですよ

淡々と話すAさんの話しを、我を忘れ聞き入っていた友人

すると急に廊下の方からガシャーン!!っと、物が倒れるような音がしたんですね

わぁっ!!

思わず友人は叫んでしまいました

何か倒れたんですかね?見に行ってみましょうか

Aさんは冷静に友人に声をかけると、その部屋をそのままに音の鳴った方へ向かって行きました

どこから鳴ったんだろう?

友人とAさんは3階から順番に下へ降りて行く事にしました

すると、1階の廊下の物置が倒れていたんですね

そこには社員の方もいたのですが、何か様子がおかしいんです

近づいて行くと、社員は下を向きガクガク震えています

友人がどうしたんですか?っと声をかけても下を向いたまま顔を上げないんですね

友人が社員の名前を何度も呼ぶとようやく社員が顔を上げました

その顔は恐怖に怯え、目には涙が浮かんでいたんですね

何があったんですか??

友人が尋ねると、社員は大きく息を吸い、心を落ち着かせてからゆっくり話し始めたんですね

社員が1階を見回りしている時、急に携帯が鳴ったそうです

それはいつもお世話になっている派遣会社からだったんです

こんな時間におかしいと思いながらも、一応電話には出たんですね

すると、派遣会社のよく知る社員の方だったんです

電話の内容は一人ウチの派遣が飛んで申し訳ないとの謝罪の電話だったんです

どうやら、0時位に今日行くはずだった派遣の子から連絡があったらしく、熱が出て寝込んでいて連絡が出来なかったらしいのです。20時開始で今更何電話してきてるんだと、かなり怒ったらしいですが、スグ担当の社員に連絡しなければと、電話があってからずっと携帯を鳴らしていたそうですが、圏外で繋がらなかったみたいなんですね

そこから15分おき位に電話し続け、ようやく2時を回って今さっき繋がったとの事なんですね

最初その話を聞いた友人は、あっ今日は元々3人で作業する予定だったんだと思ったそうです

すると、社員の方が青ざめた顔で言うんですね

あなたが連れて来た方は誰なんですか?

えっ?

社員の話している意味がわからないまま、社員は続けて話し始めました

私は今日2人しか呼んでいません。もし1人休みなら、あなたが連れて来た方は誰なんですか?あなたは誰と今まで病院内を見回ってたのですか??あのおじさんは誰なんですか!!

友人はスグ辺りを見渡したそうなんです

でも、一緒に降りて来たハズのAさんの姿が見当たらないんですね

そんなバカな…

驚く友人、そして座り込む社員

すると廊下の奥から何かが転がってくるんです

カタカタカタ…カタカタカタカタ…カタカタカタカタ…

最初は辺りも暗く何が転がって来ているのかわからなかったのですが、近づくにつれそれの正体がわかったんですね

それはAさんに渡した懐中電灯だったんですね

あぁ…あぁぁぁ…

友人は腰が抜けてしまいその場にしゃがみ込んでしまったみたいなんです

すると、急に友人の携帯が鳴り出したんですね

恐る恐る携帯の画面を見るとそれは派遣会社からだったんです

震えながら電話にでると、派遣会社の社員だったんですね

お前今どこにいるんだ!!

派遣会社の社員はかなり怒った口調で、友人に聞いてきたそうです

友人は◯◯病院ですよ!と今日来ている病院の名前を言いました

すると社員は怒った口調のまま、お前が行っているのはB塔じゃないか!?今日の派遣先はA塔だぞ!!B塔はもう解体作業が始まっているから、人は立ち入り禁止のハズだ!!派遣先から、お前が来ないって連絡がさっきあったんだ!もし、間違えているならすぐA塔に迎え!!

そう言うと派遣会社の社員は電話を切りました

えっ…?えっ…?何が起こっているのか訳がわからない友人が、ふと携帯の画面をみると、時計はまだ20時10分だったそうです

そうです、開始時間からまだ10分しか経っていないんですね

そんなバカな…

そして、しゃがみこんだまま辺りを見渡すと、そこにはさっきまでの綺麗な病院ではなく、あらゆる物が壊され、ボロボロのまさに廃病院の景色が広がっていたんですね

そして、友人が後ろを振り向くとそこには、警備員のボロボロの服が倒れたロッカーの下敷きになっていたそうです

その後友人は震える体で必死に出口を探しB塔のスグ後ろにあったA塔に迎い、あった事全てを話したみたいなんですね

ところがそんな話し信用してもらえるわけもなく、こっぴどくしかられたそうです

そして、友人が仕事をしていると、ポケットに何か入っているんですね

それは今朝Aさんから頂いたあのコーヒーキャディーだったそうです

後日談ですが、友人はその後霊障に悩まされる事はなかったみたいです

何かが見えるようになった訳でもなく、普通に暮らしているみたいです

ただ、それは勘違いかもしれませんがね

そう、本当は見えているのに気づいていないだけ…なのかもしれないんですから

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ネタバレ注意

【山口敏太郎2013年9月怖話アワード動画書評より】

2013年9月のアワード受賞おめでとうございます。当作品の山口敏太郎氏のコメントは以下から閲覧できます。(ネタバレを含むので未読の方はご注意ください)

他の作品の書評はこちら 
http://blog.kowabana.jp/126

おぉ、怖い…もしかしたら毎日
会っているあの人も…。
生きているかなんて確証がないんですからね

どこかで聞いた様な話でしたが独特の言い回しで面白かったよ。

鳥肌が立ちました…。

怖かったです。

オーソドックスな話ですが無駄のない文章で妙に怖かったです。