中編4
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朱鞠内湖

昔の話、と言っても今から10年位前の実話です。

妻と付き合い始めて一年位だったでしょうか。当時、岬巡りが自分達の中で流行っていまして、北海道内の岬を休みがあれば遠い所まで足を運んでいました。

ただ北海道は札幌から最北端の宗谷岬と、東の果て知床までは、まとまった連休でもなければ行く気になれず、やっときたゴールデンウイークで「北の国からの」吾郎さんの家の富良野、旭川経由で最北端を目指す事になりました。

初日は吾郎さんの家見学とチーズ工場の近くのレストランで夕食を済ませ一日を優雅に過ごし、次の日に一気に旭川を抜け宗谷岬に行く予定でした。

当時はカーナビのついてない車での移動だったので、地図片手にドライブを楽しんでいました。

地図を見ると旭川から稚内までの途中にまだ行ったことのない湖を発見し、寄り道好きな自分達はそこに立ち寄る事にしました。

その湖の名前は朱鞠内湖(シュマリナイコ)

かなりユックリ走っていた為、その湖周辺につく頃には、辺りは夕日に染まっていて、金色に輝く湖を想像していました。

もう忘れましたが何かの像か慰霊塔のある場所に車を停め、取り敢えず使い捨てカメラで記念写真を撮りました。そこは湖に行く道はなく、草木は生い茂っていたのですが、なんとか掻き分ければ入れそうだったので、少し強引に湖畔に近寄りました。

思った通り雲ひとつ無く、夕方の太陽に照らされた湖面はキラキラと輝き綺麗でした。

でも、なぜか湖も湖の周りも全てセピア色に見えるのです。湖はとても綺麗なのに嫌な空気がして、落ち着かない。何故かここにいたらいけないと思ったのです。

妻がまだ草木を掻き分けてこちらに近づこうとしてるのを止めて、車に戻りました。妻には上手く説明出来ず、ただ「なんか良くない感じがする」とだけ伝えその場を後にしました。

その後ずっと空気が重く、周りの空間に違和感を感じながらも稚内に到着。

疲れもあったので駅の近くでカニ飯弁当を買ってすぐ、ラブホテルに入りました。

そこは特に内装が凝ってるわけでもなく普通の部屋でした。照明は蛍光色で薄暗かった事を覚えています。

入室して直ぐに小窓が開いていたので閉めました。窓下に付いてるレバーを捻り押して開けるタイプです。多分換気の為に開けておいたのだろうなと、その時は気にも留めませんでした。

買ってきた弁当を妻より先に食べ終わったので、一人でお風呂に入っていると、凄い勢いで妻が服を着たまま風呂に入ってきたのです。怯えている妻にどうしたのか確認すると、弁当を食べ終わった直後に、先程閉めた筈の小窓が勢いよく開いたと言うのです。上記でも述べたように、レバーを捻らなければ開かないタイプの窓が勝手に開く事など、考えられません。

妻の怯えように、身体も拭かず例の窓を見に行くと、全開に開いていました。妻をあまり怖がらせないように、「レバーの捻りが甘くて気圧の問題で開いたんだよ」と訳のわからない言い訳をし、今度は確認するよにしっかりとレバーを捻り風呂に戻りました。妻はまだ怖かったのか今度は一緒に風呂に入りました。暫らくして一人先に風呂から上がると、今度は照明が消えているのです。

ここを出ようとも思ったのですが、他の部屋もホテルも満室状態、時刻は10時を回っていたし、車中泊は五月の北海道はまだ寒く危険、燃料わずかで田舎のスタンドは閉まっている。八方塞がり…ここに居座るしか選択肢がなかった。

妻が風呂から上がる前に照明をつけ、平静を装いベットの上で妻を待つ事に。

部屋の中が静か過ぎて気を紛らわす為、テレビでも観ようとリモコンを手に取り電源ボタンを押しました。

ここがラブホだと忘れていて、突然テレビからは女性のいやらしい声が大音量で流れ始め、その音にかなりビックリしてチャンネルを変えようと再びリモコンを操作しようとした時です。先程閉めた窓がまた勢い良く「バンッ‼︎」っと音を立て開いたのです。一瞬思考が停止し、窓を凝視する事しか出来ませんでした。少し間を置いて、今度は閉まったり開いたりと繰り返したのです。

流石にこんな事は初めてで、恐怖で手がガクガク震えてしまい窓から目が離せずにいると、その光景を見ていたのか後ろから妻の悲鳴、その悲鳴でやっと窓から目が離せ、慌てて妻を連れそのホテルから出ました。

なんとか寒い中車で一夜を過ごし、スタンドが開店したと同時に燃料を補給、気分は最悪でしたが一応、ここまで来たのだからと宗谷岬に行き帰路につきました。

ほとんど宗谷岬の事は覚えていません。

帰りは、海沿いの一番早いルートにしたのですが最悪でした。

途中から強風、豪雨、高波と三拍子が揃ってしまい、慎重に運転するも見通しの悪い視界で樹木が片道を塞ぐ形で倒れてる事に気づくのが遅れ、衝突。

衝突してお互いの無事を確認しあった時に、二人で確かに聞こえたんです。大勢の男達の声が。

「もうくるな…」

他にも何か言ってる声が聞こえたのですが、大勢が一度に発言するような感じで、解りませんでした。

衝突はしたのですが、車はなんとか走る事が出来たので、帰ることが出来ました。

暫らくたってから、撮り溜めした写真を現像して見たんですが…写ってました。

朱鞠内湖で撮った写真に沢山の顔が…。

朱鞠内湖は戦争只中に作られた日本最大だった人造湖です。

冬はマイナス40度にもなるこの地で

の作業環境は、日本人のタコ部屋労働のみならず、朝鮮人、中国人に対するいわゆる強制連行ともいわれる動員も行われており、極めて劣悪であった。現在までに200名以上の犠牲者が判明しています。

多分もっと犠牲者はいるでしょう。

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欲求不満様 
連投するのはどうか?と考えておりますので頃合を見てリクエストにお答え出来ればと思います。
お互い道産子繋がりですし、楽しく怖話を盛り上げて参りましょう。

andy兄様

まだまだ逸話があるのですか⁉︎
知りたいです。とくに氷の穴から手が出てきた話、是非聞かせてください。いつも楽しく怖く拝見させてもらっていますので、是非‼︎

それにしても自殺も多くて、それが栄養なんて…あまり考えたくないですね。

私は闇の住人には会いたくはないですね。

コメント本当にありがとうございました。

欲求不満様 
朱鞠内湖はある意味良い所です。
悪戯に大きなダム湖なので釣れる魚も大物が多いんですよ。
遠浅ですがある所から急激に深くなることから自殺者も多いのです。
自然の摂理からいくと魚の餌となる訳ですが・・・
大きくなるのも納得ですね。
冬場はワカサギ釣りで賑わうのですが氷に開けた穴から腕が出てきたこともありました。
あのダム湖にはもっともっと逸話がありますし24時間いつでも闇の住人達と遭遇するチャンスがある場所です。
もっとも殆どの霊体は強い恨みの念を抱いており文中に出ておりました鎮魂の慰霊碑がある程度は効果を発揮している様です。
それでもそれなりの気構えで会いに行かねばなりませんが・・・
長くなりました・・・
すみません。

摩利支天様

いえいえ、ご指摘感謝しています。

龍悟様

興味をもってもらって嬉しいです。
ただスポット巡りはオススメしません、危険だと思いますから。是非、ただの観光でいらしてください(笑)

北海道にまだ行ったことがないのですが、かなり興味が出てきました。
もし機会があればスポットを巡ってみたいです…

欲求不満様

生意気に意見してすみませんm(__)m
地名といい、伝聞といい、何かしら神秘的な雰囲気が北海道のスポットにはテンコ盛りですね。自分の地元県とは、また一風違っていて興味をそそられます....。

赤煉瓦様

本当に嫌な雰囲気で、あそこで釣りはしたくありませんね…
読み…「しゅ」か、漢字だけじゃなく読みも間違ってました(≡Д≡;)
ありがとうございます‼︎

朱鞠内湖-しゅまりないこ
表向きは、観光や釣りの名所(虹鱒を筆頭にイトウまで釣れる)
朱鞠内湖の裏の顔を知ってしまったのですね…
あの嫌な雰囲気を思い出させる怖い作品ですね。

摩利支天様‼︎
ご指摘ありがとうございます‼︎
ずーーーっと漢字勘違いしてました(≡Д≡;)

恥ずかしい。

↓知名→地名の誤りでした。すみません。

知名、ちょっと違ってませんか....?
道人ではないですが、縁がある者です。北海道のスポット話は、何故だかとててもなく重苦しく感じるのは私だけでしょうか。