長編14
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俺の為の肝試し

「悪い啓太!今日俺の車使えなくなったからお前ので行く事になったわ」

玄関を開けた先にいた隼人の第一声は俺の予想の遥か斜め上のものだった。

悪いと言ってる割にはその表情から反省の色は見られない。

後ろにいる陽介と夏美の方が「申し訳ない」という顔をしている。

「まぁいいんだけどさぁ・・・。何が悲しくて「連れてかれる」立場の俺が自分の車でお前達を乗せて現地に向かわにゃならんのよ」

車のキーを部屋に取りに行きつつ、玄関に座り込んで待っている隼人に向かって悪態をついた。

「いや本当にすまん!お詫びに今回こそは凄いの見せてやるからよっ!」

そう言って隼人はニコニコと笑いながら俺の肩に手を回してきた。

気持ち悪いので「解った!解ったから!」と必死に拒絶しつつ、手を払いのける。

そんなやり取りを見て夏美と陽介はクスクスと笑っている。

いつもの事なので俺もすぐに怒るのをやめて、全員で近くの駐車場に停めてある俺の車へと向かった。

しかし、やはりどうも腑に落ちない。

何故「俺の為の肝試し」なはずなのに、俺がこいつらを連れて行く立場になっているのだろうか・・・

 

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俺が隼人達と始めて知り合ったのは大学に入って間もない頃だった。

ひょんなことから心霊サークルに勧誘され、あれよあれよという間に俺はサークルに入会させられていた。

別に嫌という訳ではなかったのだが、どうしても一つ引っかかる事があった。

「はあっ!?お前幽霊信じてないのにこのサークルに入ったのかよっ!?」

新歓コンパで隣の席になった隼人は俺がひっそりと話したセリフを店中に響き渡るような大声で広めてくれた。

「まっ、まぁあれだ。そういう奴が一人位いてもいいんじゃないか?むしろ俺らと違った見方とかも出来て面白いかもしれんだろ?」

慌てて俺を勧誘した先輩はフォローをし始めた。

心霊サークルといってもその実、怖い話を肴に飲めればいいというような人達の集まりだったので特に周りのメンバーは気にするようではなかった。

だが隼人だけは納得がいかないようだった。

酔ってるせいもあってか、それからコンパが終わるまでひたすら自身の心霊理論だかなんだかを永遠と聞かされるハメになった。

けれど隼人の語る話はどれもとても興味を惹かれるもので、不思議とオカルトを信じない俺も夢中になってしまった。

その日以来俺達は仲が良くなった。

同日にサークルに入った陽介と夏美も加え、大学に行けばいつも4人で集まるようになっていた。

結局俺は隼人の熱弁を聞いた後も幽霊の存在を信じるまでには至らなかったが、それでも今までよりは興味を持つようになった。

しかし隼人はそれでは納得がいかないようだった。

 

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ある日、いつものように大学の食堂に集まり4人で昼食を取っていた時の事だ。

急に隼人がある提案をしてきた。

「今度の休みの日にさ。このメンバーで心霊スポットに行こうぜ」

隼人は俺達に嬉しそうに当日の予定を説明し始めた。

けれど俺は正直浮かない気分だった。

オカルト系の話に興味が出てきたと言ってもわざわざ貴重な休日に遠出をしてまで、いもしない幽霊に会いに行くのはどうも気が進まなかったのだ。

そんな俺の心の中を読み取ったように隼人は俺の事をビシッと指刺してこう言った。

「お前は強制参加だからな。拒否権はない!」

「はぁっ?」

思わず妙な声が出てしまった。

この中で一番幽霊に興味が薄そうな俺が何故参加を強制されにゃあならんのだ。

「これはな、お前の為のイベントでもあるんだよ。むしろそっちが本命?」

何を言っているのか理解出来ない俺に隼人は改めて今回の心霊スポット体験の目的を説明してくれた。

要は「幽霊を信じていない俺に本物の幽霊を見せてやろう」というのがこの企画の本当の趣旨らしい。

実際に本人がその目で見てしまえば、幽霊が存在するという事を疑う事も出来なくなるに違いないとか。

「つまりこれは、お前の為の肝試しな訳。主役が不参加じゃ意味がないだろ?な?」

右手に加え左手でも俺の事を指差し、両手でポーズを決めて俺に同意を求めてくる。

なんとも強引な話とポーズだったが、こういう時はいつも俺の方が先に折れるのは嫌というほどよく解っていた。

結局次の休日に俺達は心霊スポットに行く事が決定した。

と、ここまでの流れだと当日に恐怖体験の一つもあったような気がするかもしれないが、実際はビックリする位何も起きなかった。

他の3人はそれなりにワイワイ楽しくやっていたのだが、最後まで何も見る事のなかった俺としてはなんとも退屈な「壮大な散歩」になってしまったのだ。

隼人はそれが気に食わなかったらしく、すぐに次の心霊スポットを探して次の休日にリベンジを仕掛けてきた。

だが隼人の意気込みも虚しく、結果はこの前と変わらず。

それからは休みのたびに何処かの心霊スポットに赴く日々が続いた。

始めはこの肝試しに特に面白みを見出す事の出来なかった俺だったが、つまらなそうにしている俺の顔を見て心底悔しそうにしている隼人を見ているうちに段々と面白く感じ始めていた。

いつの頃からか、それは完全に俺と隼人の勝負のようになっていた。

「畜生~。次は絶対お前に女の子みたいな悲鳴を叫ばせてやるからな。覚悟してろよ!」

「あぁ、楽しみにしてるぜ。今日の場所は全然だったからな~」

煽り合いながらもお互いなんだかんだでこの勝負を楽しんでいた。

陽介と夏美の二人も嫌々付き合わされている訳ではなく、俺達の馬鹿なやり取りを楽しんでいるようだった。

なんとなく「このままこんな下らない事ばかりやってるうちに大学生活もあっという間に終わるんだろうな」とかその時は思っていたものだ。

 

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その日の肝試しも特に何の問題もなく終わるもんだと思っていた。

「今度の場所はマジで凄いからな。覚悟しておけよ~」

助手席で手のひらサイズのメモ帳を軽くチェックした後にポンと閉じると、自身満々といった表情で隼人は俺に言った。

「・・・・別にいいんだけどよ。お前そのセリフ毎回俺に言ってるよな。帰りは「次は絶対~」だし」

「五月蝿いわ!黙って運転しとけ!」

驚くほどいつもと変わらないやり取りだ。

ただ一つだけ「いつも通り」ではない部分があるのに俺は少ししてから気づいた。

「おい、夏美大丈夫か?なんか苦しそうだけど・・・・」

後部座席に陽介と共に座っている夏美が少しうつ向きながら辛そうな表情をしていた。

いつもなら俺と隼人のやり取りを見てクスクスと笑っている場面だ。

「・・・・あ、うん、ごめん・・・・大丈夫だから」

言葉とは裏腹にその表情は全く大丈夫そうに見えなかった。

「夏美はこの中で一番霊感が強いからな。もしかしたらもう影響を受けちまってるのかも・・・・」

隣にいた陽介が夏美を気遣いながら言った。

不思議な話だが隼人が言うと嘘臭い言葉でも、メガネ男子で真面目な陽介が言うとなんだか本当のように聞こえてくるから困る。

途中何度も帰ろうかと言ったのだが、本人が執拗に「大丈夫だから」と言って聞かなかったので渋々俺達は車を走らせた。

結局その後も夏美の体調が良くなる事はなく、出発してから2時間程すると目的地の山奥の廃旅館へと着いてしまった。

「夏美着いたぞ。大丈夫か?」

車を停め、後ろの席に座っている夏美の方を覗き込む。

夏美はお腹の辺りを手で押さえながら相変わらず苦しそうな表情をしていた。

「なんだ?もしかして腹が痛いのか?」

「・・・・うん・・・・・ちょっとだけ、ね」

そう言われてかなり困ってしまった。

それならそうと早く言ってくれれば何処かトイレのある場所を探していたのに。

「・・・・やっぱり帰ろう。肝試しはまた今度って事にして」

「それは駄目!絶対駄目だからっ!」

急に顔を伏せていた夏美が俺に向かって怒鳴ってきた。

普段見せないような荒々しい態度に思わず体が仰け反る。

「・・・・まぁ俺も出来ればここまで来たんならやる事やってから帰りたいってのが本音だったりするんだが」

横で見ていた隼人も夏美の意見に賛成する。

言葉にはしないものの、表情からしてどうやら陽介も同意見のようだ。

なんとなく俺には3人が引けない理由の想像が付いていた。

「・・・・解った。じゃあ俺と隼人の二人でパッと行ってパッと帰ってくるから。二人は車の中で待機しててくれ」

いつものように俺がすぐに折れると夏美は要約落ち着いた雰囲気を見せ、小さい声で一言「ごめんね」と呟いた。

「いいよ。いつもの事だろ」

陽介に夏美の事を頼んでから車を降りると、俺と隼人は問題の廃旅館へと歩を進めた。

 

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その廃旅館は「いかにも」な風貌をしていた。

入口に立っただけで何か出そうな雰囲気がヒシヒシと伝わってくる。

「じゃあ頑張って行ってこいよ。俺はここで待ってるから」

「おう、ちゃんと何処にもいかず「待っとけ」よ」

隼人をその場に残してから俺は一人廃旅館の奥へと入っていった。

いつの頃からだろうか?

この肝試しが俺と隼人の真っ向勝負になってから、心霊スポットに入っていくのは俺一人だけになっていた。

「幽霊を見せる」よりも「俺を怖がらせる」事が目的となり始めた為、一緒に探検していたんじゃ怖がれないという結論に至ったのだ。

以来俺は心霊スポットに招待される度に一人で探索をするハメになっている。

だが実際のところは実は一人ぼっちという訳でもない。

これまたいつの頃からか、隼人はあらかじめ俺が通る場所に俺を驚かせる為の仕掛けを仕込んだり、幽霊のフリをして脅かすようになった。

仕掛けは「軽い物が落ちてきてビックリする」とか危険はないものだったので、俺は特に気にするでもなくむしろ楽しんでいた。

だが準備の為に3人はわざわざ前日に現地に赴き、下見や仕掛けを作ったりしているのだ。

さっき3人が帰るのを渋ったのも恐らくはその為ではないだろうか?

せっかくわざわざ用意した仕掛けをそのまま残して行くのは忍びなかったのだろう。

危険はないとはいえ、他の誰かがここに来てしまったら仕掛けが解除されてしまう可能性もある。

それならば多少我慢してでも俺にこの肝試しを体験してもらいたかったのだ。

だとしたら、とっととこの肝試しを終わらせてしまえば誰も帰る事に文句は言わなくなるだろう。

俺は気合を入れていつもの3倍速位のスピードで廃旅館を探索した。

基本的に何処まで見てくるかという明確な決まりはないが、隼人が後で中の感想を聞いてくるからズルは出来ない。

仕方ないのでなるべく急いで旅館中の部屋を見て行くしかない。

もはや肝試しというよりは宝探しでもしているような気分だった。

一階の客間をあらかたチェックし終わると、何処からかピチャンと水の音が聞こえてきた。

音の出元を探していくと、その先には大浴場と思われる場所への入口があった。

なんとなくだが・・・・そこだけは他の場所と違って何か危険な感じがした。

入ろうかどうか迷っていたその時。

「うおっ!?」

ズボンのポケットに入れていた携帯が激しく震えだした。

「畜生!隼人だな。いいタイミングで掛けてきやがって」

慌ててポケットに手を伸ばし、携帯画面を確認する。

「・・・・・なんだこれ、どういう事だ」

携帯の着信履歴には非通知の着信がたった今掛かってきたと表示されていた。

ただ、それだけではないのだ。

その前にも非通知着信が今から1時間程前から計5回、俺の携帯に掛かってきていたと記録されている。

しかし、ずっとポケットに入れていたのに着信のバイブレーションを先程以外一回も感じていないのだ。

俺がボーッとしていて気づかなかっただけなのか?

カ―――ン!

突然、大浴場の中から大きな音が鳴り響き驚きのあまりその場に転びそうになった。

なんというか木の風呂桶を浴槽に叩きつけたような音だった。

「・・・・・・また隼人の仕掛けかなんかだろ」

言葉では強がっていたものの、それが完全に決定打となった。

俺はその場で回れ右をすると廃旅館の入口へと向かって真っ直ぐ歩き出した。

 

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思えばその日は初めから何かがおかしかった。

じゃあ何がおかしかったのかと聞かれると困ってしまうが、とにかく何かが違ったのだ。

でなければ俺がこんな、ごくありふれた廃墟での真昼間の肝試しなんかで足が竦むはずがない。

うん、そうだ。

今日は何かおかしいんだ。

だが隼人は俺のこんな勝手な言い分を聞いてくれるはずがない。

このまま入口まで戻れば勝負はあいつの勝ちになるだろう。

「はぁっ・・・・」

思わず情けないため息が口から漏れた。

まさか幽霊を実際に見た訳でもないのに勝負に負けるとは思ってもみなかった。

隼人のあの忌々しい笑い声が今にも聞こえてきそうだった。

しかし、俺が旅館の入口まで戻ってきてみると、隼人の姿はその場に無かった。

付近を少し探してみたがやはり見つからない。

恐らく俺を驚かせる為に旅館に入り、何処かで待ち伏せでもしているのだろう。

仕方なしに俺は旅館の中に向けて精一杯の声を張り上げた。

「おーい!降参だぁーっ!俺の負けでいいから早く帰ってこいやーっ!」

ブ――ッ!

「うおっ!?」

まるで俺の今の呼びかけに答えるようにポケットの携帯が震えた。

タイミング的に隼人からの電話だと思って手に取った携帯の画面には思いもよらない人物の名前が出ていた。

「はい、もしもし?」

「おおっ!繋がった!」

「どうかしたんですか先輩?」

電話は俺を勧誘してくれた心霊サークルの先輩からだった。

「お前大丈夫か!?今生きてるか!?」

「えっ!?いや、はい、そりゃ生きてますけど・・・・」

いきなり何を言い出すのかと思ったが、先輩はお構いなしに早口で続けた。

「お前今何処にいるんだ?その・・・・・事故の事はもう聞いたのか?」

「事故?何かあったんですか?」

「・・・・そうか・・・・聞いてないのか。俺もほんの数時間前に知ったばかりなんだが、隼人と夏美と陽介の3人が昨日車で崖から転落したらしいんだ」

「・・・・えっ?」

一瞬先輩が何を言ってるのかが全く解らなかった。

理解出来ないでいる俺を放って先輩はなおも続ける。

「なんでも○○区○○峠の急カーブの場所でカーブを曲がりきれずにガードレールを突き破って崖から転落したらしい。80Mもの高さから落ちたらしくてな・・・3人とも[プツッ]」

「・・・・・・・えっ?あれっ?先輩?」

急に声が聞こえなくなったのに少ししてから気づき、慌てて携帯を確認した。

通話が切れている。

○○区○○峠といえばここのすぐ近くだ。

気が動転して間違えて携帯を切ってしまったのかと思い、かけ直そうとしたその時だった。

「よぉ、どうだ啓太?怖かったか?」

一瞬、背筋がゾクッした。

隼人の声だ。

すぐ後ろから、背中越しに聞こえた。

(そうか、今の電話も隼人の仕組んだ罠だ。なんだビックリさせやがって!なぁ、そうなんだろ?隼人!)

そう思って振り返ったその先には誰もいなかった。

辺りに人の気配は感じられない。

聞こえるのは木々の擦れ合う音だけ・・・・

気づいたら俺は車に向かって一目散に走っていた。

ただひたすらに。

がむしゃらに走り続けた。

やっとの思いで林道に停めてあった車まで辿り着くと、車内には夏美と陽介の姿はなかった。

俺は構わずすぐに運転席に座ると持っていたキーを回し急いでエンジンを掛けた。

「遅かったね」

心臓が止まりそうなほど驚いた。

今度は夏美の声が後部座席の方から聞こえてきたのだ。

恐る恐るゆっくりと後ろを振り返る。

だがそこに夏美の姿はない。

顔中からどっと汗が吹き出す。

(気のせいだ!きっと空耳か何かだ!)

気を落ち着かせてハンドルを握った時に俺は見てしまった。

バックミラーに映っている夏美の姿を。

「うわああああぁぁぁぁっ!!!!!」

思わずミラーを手で払い除け角度を変えた。

すると今度は陽介の姿がミラーに映った。

「あぁっ!あっ!あああぁぁ!」

もう完全にパニック状態だった。

恥ずかしい話だが、その後の記憶はほとんど残っていない。

なんとなく、ラジオか何かを大音量で流しお経を唱えながら一心不乱に運転し続けたような覚えだけ微かだが残っている。

気がついた時には俺は自宅前の駐車場まで戻ってきていた。

自分がまだ生きている事を確認し、地獄から逃げ出す亡者のように車から這い出た時、また後ろで声が聞こえた。

「今回の勝負。お前の負けだな、啓太」

 

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それから俺は3日程家に閉じ篭った。

理由は自分でも解らない。

外が危険だとか家の中が安全だなんて考えてた訳じゃない。

何かよく解らないけど、唯々怖かったんだ。

けれど4日目にもなると次第に冷静さを取り戻し始めた。

落ち着いてきてまず最初に気づいたのは先輩からの電話だった。

あれから何度か着信やメールは届いていたが、何を言ったらいいか全く解らずずっと無視していたのだ。

しかしさすがにこれ以上放っておくのはまずい。

先輩からしてみれば、突然電話が切れてからもう3日も連絡がない状態だ。

俺はすぐに先輩の携帯に電話をし、近所のファミレスで事の次第を説明する事にした。

「おぉ、無事だったかぁ~。心配したぞおぃ~」

待ち合わせ時間丁度に店内に現れた先輩は、額の汗を拭う仕草をしながら俺の反対側の席に着いた。

「心配かけてすいませんでした・・・その・・・色々あったもので」

「・・・・いいよ別に。これから話してくれるんだろ?」

先輩の問いに無言で首を立てに振って頷く。

その後、俺はあの日の事を包み隠さず全て話した。

誰かに話したいという思いが溜まっていたのか、次第に俺の喋りには熱が入っていった。

先輩はずっと黙ったまま俺の話に耳を傾けてくれた。

「・・・・・・・それで俺は今日までずっと家に閉じ篭っていたんです」

話が終わっても先輩は変わらず俯むき黙ったままだった。

何か考え事をしているようだ。

「・・・・先輩?」

「・・・・今の話・・・・作り話じゃないよな?」

「はっ?」

耳を疑った。

真剣に聞いてくれていると思ったのに、まさかずっと疑われていたのか?

「全部本当の事ですよ!信じてくれないんですか!?」

「いや、すまん。違うんだ。その・・・・お前まだ俺に話してない事とかないか?」

先輩が何を言いたいのか解らなかった。

「本当に知らないのか?・・・・いや、だって出来すぎだろう、そんな話・・・・」

どうやら先輩は何かを知っているようだった。

あまりにも煮え切らないので執拗に問い詰めると降参してゆっくりと話してくれた。

「俺も人から聞いた話だから、実際どうなのかは知らないがな。あの3人の事故、相当酷かったらしいんだ。遺体もそりゃ酷い有様だったらしい。特に夏美なんかはその・・・・腹がえぐれてたらしいんだよ」

「えっ・・・・・夏美が・・・・・」

瞬時にあの日の映像が頭の中に浮かんだ。

 

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『なんだ?もしかして腹が痛いのか?』

『・・・・うん・・・・・ちょっとだけ、ね』

 

「な?出来すぎだろ?お前本当に知らなかったのか?俺を怖がらせようとしてるとかじゃないんだよな?」

俺は先輩の問いに何も答える事が出来なかった。

その後、俺は先輩と何を喋ったのかよく覚えていない。

一つだけ確かなのは、あれ以来俺がオカルトに関するものには絶対に近づかなくなったって事だけだ。

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なんか怖いというより、親友への最後のお別れみたいな話にとれて泣いた。
あちら側に引きずり込むとかそういう路線とは思いたく無い気分でよめました
バケオさんの話はどれも好きですわ