長編20
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ピエロ ~復讐編~

最近、私の学校では”ある物”が流行っています。

それは”ピエログッズ”

ピエロのキーホルダーやピエロの鉛筆、

ピエロの下敷きにピエロの筆箱…

どこに目を向けてもピエロがいます。

私はどちらかと言えばピエロは嫌いな方だったので

その流行りには乗る事ができませんでした。

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「マイちゃん!これあげる!みんなお揃いなの!」

そう言って、小さいぬいぐるみを差し出してきたハルナちゃん。

「?」

しかしこのぬいぐるみ、変だ…

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顔の部分には

鼻しかついていない

独特の派手な衣装を着ているので、すぐにピエロのぬいぐるみだとわかりました。

「…ハルナちゃん、このピエロ、鼻しかついてないよ?」

「あ、気づいた?私のはね、目だけなの!ホラッ!!」

そう言って自分のぬいぐるみを見せてくれた。

「リョウ君は口だけで、ケンタ君は耳だけなの!」

なんて不気味なぬいぐるみでしょう…

しかし”いらない”なんて断るわけにもいかず、

私の分の、鼻しかついていないぬいぐるみをハルナちゃんから受け取りました。

私とハルナちゃんとリョウ君とケンタ君は親同士の付き合いもあり、いつも一緒につるんでる仲良し4人組です。

「これを持ってるとずっと一緒にいられるんだって♪」

そう言って、リョウ君とケンタ君にも一つずつあげています。

「俺ののっぺらぼうじゃん!」

ケンタ君が渡されたぬいぐるみを見て不満そうな顔をした。

「じゃあ僕のと交換する?」

優しい性格のリョウ君はケンタ君のぬいぐるみと自分のぬいぐるみを交換してあげました。

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ハルナ⇒目

私  ⇒鼻

ケンタ⇒口

リョウ⇒耳

「みんなのパーツを合わせると一つの顔ができるの!凄いでしょ?」

ニコニコ笑って、ピエロのぬいぐるみを眺めているハルナちゃん。

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そして私達はそのぬいぐるみをそれぞれの家に持ち帰りました。

ご飯を食べ、お風呂に入り、宿題をして

就寝したのは21時頃でしょうか…

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ポポーン    ポポポーン

ポポーン    ポポポーン

暗闇の中、突然変な音が聞こえてきた。

マリオがジャンプする時の効果音に似ています。

「!?」

突然目の前がパッっと明るくなりました。

「…ここは……」

見覚えがあります…

私が通う学校の体育館です。

「あれッ?マイちゃん?」

後ろから声がして振り向くと、そこにいたのはハルナちゃんでした。

「ハルナちゃん…?」

ハルナちゃんは私に駆け寄ってきて、

「リョウ君とケンタ君もいるんだよ♪」

そう言って、倉庫の方を指差しました。

「え?」

ハルナちゃんが指差した方を見るとリョウ君とケンタくんが倉庫からバスケットボールを持って出てきました。

「お!マイもいるじゃん!おーい!」

ケンタ君が私に気づいて手を振ってきた。

全員パジャマの姿で学校の体育館にいる異様な光景…

これは…夢?

それにしてもリアルすぎます…

「マイちゃん、ずっと一緒にいられるって、夜も夢の中で一緒にいられるからかな?」

ハルナちゃんは明らかに不自然なこの状況を楽しんでいる感じで、

リョウ君達の元へ走っていきました。

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ポポーン   ポポポーン

…さっきの音だ。

♪゜・*:.。. .。.:*・♪

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何だか楽しい感じの音楽が体育館に鳴り響いて、ステージの幕が突然開き始めました。

♦♫♦・*:..。♦♫♦*゚¨゚゚・*:..。♦

ケンタ「あ!」

リョウ「おお!」

ハルナ「すごーい!」

幕の後ろから現れたのはジャグリングをしながら玉乗りをしているピエロでした。

3人はステージのすぐ側まで駆け寄って

ピエロの芸に見入っています。

私は元々、ピエロは好きじゃないので、近寄らず、少し離れた所で観察していました。

ピエロはステージの上でコミカルな動きをしながら次々に曲芸を披露しています。

………。

なんか…、

さっきから…

こっちばかり見ている…?

私は3人とは少し離れた場所にいた為、

ピエロの視線が私に向けられている事にすぐに気づきました。

何故か…、背筋がゾクゾクする。

…頭が痛い。

ズキズキする…。

パチパチパチパチ!! ---

!?

突然体育館に拍手が鳴り響いた。

ピエロはそれに応えるように丁寧にお辞儀をしています。

どうやら曲芸の披露が終了したらしい。

それと同時に楽しそうな音楽も消え

静寂に包まれた体育館。

ステージ上のピエロがライトアップされ不気味に静まり返った体育館にアナウンスが流れました。

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『ようこそ!道化の世界、Vダッシュ劇場へ♪』

♦♫♦・*:..。♦♫♦*゚¨゚゚・*:..。♦

再び楽しそうな音楽が流れた。

可愛いアニメ声のアナウンスに合わせてピエロがコミカルな動きをしながら3人を笑わせています。

私はとても笑う気にはなれません。

『君たちは選ばれた♪ここは時間もなければ大人もいない!!遊び放題、君たちの楽園なんだ♪』

ケンタ「本当?それすげーじゃん!!」

リョウ「好きなだけ遊べるんだ!」

ハルナ「学校は?」

ケンタ「あるわけないだろ?ここは夢なんだ!起きたら学校はあるけど、夢見ている間は学校はないよ!」

ハルナ「そっか!それ最高♪」

『気に入って貰えた所で…さぁ!始めよう♪』

そう言って、どこからともなくステッキを取り出したピエロはそれを軽く振った。

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ッ!!

その瞬間突然目の前が真っ暗になった。

ッ!?

そしてすぐ、再び目の前が明るくなり……

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…観覧車?

ジェットコースターやメリーゴーランド

コーヒーカップ…

一瞬で私達の目の前に沢山の乗り物が現れたのです。

私「…遊園地?」

ケンタ「すっげー!!ピエロって何でも出来るんだな♪」

リョウ「すごいなぁ!」

ハルナ「早く乗ろうよ!!」

3人とも全く疑う様子もなく、はしゃいでいる。

この景色…、この感じ…、

前にもどこかで……

『マイちゃん、…気に入ってもらえたかなァ?』

「ッ!?」

直接頭の中に、アナウンスの声が響いた。

そして背後に気配を感じ、恐る恐る振り返った。

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「ひッ!」

振り向くとすぐそくにピエロの顔があり、

 

あまりの近さに驚いて、心臓が飛び跳ねた。

無表情で顔は正面を見てるけど目だけは私をジッと見ているピエロ…

さっきまでの楽しそうな感じは一切ない。

背筋が凍りつくような恐怖…

?!

突然ニタァっと不気味に笑ったピエロは3人の方へコミカルな動きをしながら行ってしまった…。

!?

ピエロの後ろ姿…

みんなのはしゃぐ姿がボヤけはじめた。

視界が歪み、辺りが暗くなっていき、

意識が徐々に遠のいていく…。

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ジリリリリリリリ ---(目覚まし時計の音)

「ッ!?」

私は勢いよく起き上がった。

「…本当に……夢だったんだ、良かったー…」

目が覚めた私は、ただの夢だと分かり、ホッとしたのと同時に凄く疲れていた。

しかし

ホッとできたのはほんのつかの間だけでした…。

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先生「えー、今日はお休みの子が3人います。ケンタ君、ハルナちゃん、リョウ君です。3人とも風邪でお休みです。皆さん、うがい手洗いはしっかりするように!」

?!

3人とも風邪?

昨日はあんなに元気だったのに…

不審に思った私は先生にもう一度聞いてみました。

「3人とも本当に風邪なんですか?本当ですか?昨日はあんなに元気だったんですよ?」

興奮気味の私の肩に手を置いて

「落ち着いて!…本当に3人ともお母さんから電話があって、風邪で休むとしか言われてないの…。」

先生は本当に何も知らない様子でした。

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学校が終わると、私は走って家に帰りました。

「ただいまお母さんハルナちゃん達のお母さんから何か聞いてない?」

玄関を開けてすぐに息継ぎもせずに叫んだ私。

「あ、お帰り!今帰って来たからちょっと聞いてみるわ!じゃあまた後で…」

お母さんは誰かと電話をしていたがすぐに電話を切って私に駆け寄ってきた。

「マイ?ハルナちゃんとリョウ君とケンタ君、3人とも全然目を覚まさないんですって!マイ、何か知らない?」

「…え?……ピエロだ、ピエロのせいだ…」

ピエロと道化の世界っていう所にみんな行っちゃったんだ。

「マイ!?何か知ってるのね?…教えてくれない?」

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私はお母さんに

ハルナちゃんからもらった小さいピエロのぬいぐるみの事…

夢の中の出来事をできる限り詳しく細かく話しました。

お母さんはただ頷いて、最後まで真剣に話を聞いてくれました。

「…お母さん、信じてくれるの?」

こんな馬鹿げた話、小4の私でもきっと信じないだろう。

しかし、お母さんは私の話を信じてくれました。

「信じるに決まってるでしょ?私の娘の言うことだもん!」

そう言って、私をギュッと抱きしめてくれました。

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しかし、突然立ち上がってそわそわし始めたお母さん…

そして私の顔を泣きそうな顔でジッと見つめた。

「…マイ、少しここで待ってて?」

そう言って、お母さんはリビングを出て行きました。

不自然なお母さんの行動が気になった私は、そっとリビングから出て、お母さんを探しました。

リビングを出るとすぐにお母さんの声が聞こえてきた。

寝室の方だ…

お母さんにバレないようにそっと寝室に近づいて耳を澄ました。

「……、思い出した?そう、えぇ、マイが6歳の時に…その時のピエロ……」

お母さんが声を小さくしたのか後半がよく聞こえなくなってしまった。

私が6歳の時…その時のピエロ?

身に覚えのない話でした。

ただ一つ、ハッキリした事は、

あのピエロは良いピエロじゃないという事です…。

私はリビングに戻り、お母さんを待ちました。

ガチャ ---

しばらくして、青ざめた顔をしたお母さんが戻ってきました。

「マイ、ごめんね?待たせて…、今からお寺に行くわよ。」

「お寺に?」

「そう、ハルナちゃんに貰った人形が3人を夢の中に閉じ込めちゃっているかもしれないの。3人もご両親と一緒にお寺に来るから」

…お寺か…

「前に観光で行ったお寺?」

私が聞くと一瞬顔を歪ませたお母さん。

「…そうね、そのお寺よ」

しばらくするとお父さんも帰ってきて私達はすぐにお寺に出発しました。

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お寺に着くと既に3人は両親と一緒に到着していました。

3人は普通に寝ているようにしか見えません。

しかし私が名前を呼んでも全然起きる様子ない。

「いやはや、ようこそおいでくださいました…」

私達の前に住職が現れて、一礼をし、広間まで案内してくれた。

私達は横一列に並び3人はそれぞれのお父さんにおんぶされている。

「マイちゃん大きくなったの~、…観光の日以来じゃな?」

「はい、」

うっすらと住職のおじいさんの事は覚えている。

何年か前、家族で観光に来た時に親切にしてくれたおじいさん。

「…おやおや、やはりか…、ん~、そうか~、」

全員を見渡して、何かを悟ったように頷いた。

「…人形はあるかの?」

私達はそれぞれ持っていた人形を住職に差し出した。

「でも、ハルナがいつどこでこの人形を手に入れたのか全然分からないんです…」

ハルナちゃんのお母さんは既に泣いています。

「え?おばちゃんがハルナちゃんに買ってあげたんじゃないの?」

私は素朴な疑問をぶつけました。

「おばちゃんじゃないわ、一体どこでこんなものを……」

そう言って、両手で顔を覆った。

「…恐らく、ピエロ本人じゃな…。」

住職の一言に、みんな顔を上げて住職を見つめた。

そして住職はゆっくりと話し始めた。

「…何年か前にワシは一人の女の子に憑いたピエロを祓った事があってのぅ。

かなり手強い相手で、どうなるか分からんかったが、

その時はなんとか少女を守ってやる事が出来たんじゃが……。

あのような邪悪の塊の強い力を持った人形はいくら燃やしても黒くなるだけで燃え尽きたりはしないはずなんじゃ。

しかし、人形は跡形もなく燃え尽きた…。」

「…それってどういう…?」

お母さんが不安そうな顔で住職に聞いた。

住職は少し俯いて、ゆっくりと口を開いた。

「…恐らく、ワシが経を唱えながら人形を

燃やしている間に、魂を他に移したんじゃ。

ワシの経で力が弱まっていったピエロは少女を一旦諦め、

祓われたフリをしたのやもしれんなぁ。

ワシはピエロの存在を知っとるその少女か家族の”記憶”に魂を移したと思い、全員の”ピエロの記憶”を消した。

しかし、ご両親の記憶には細工をした。

「ピエロ」「夢」というキーワードで記憶が戻るように。

もし、ピエロが魂を別の場所に移していたらまた少女を狙うやもしれん。

そう思ったからじゃ。」

「…そんな」

お母さんは力なく呟いた。

「もしかして、その少女とご両親って…?」

お母さんの反応を見たリョウ君のお母さんが私達を見て言った。

お母さんとお父さんがコクンと頷いた。

「……え?その少女って私なの?」

私は住職に聞いた。

「そうじゃ。マイちゃんは恐ろしいピエロと勇敢に戦い、その時はピエロに勝ったんじゃ。

しかしピエロはまた力を付け、お友達をも狙っておる」

「私だけこっちに戻ってこれたのはなんで?みんなは目が覚めないのに…」

「それはマイちゃんがピエロを嫌っていたからじゃ。奴が作った幻想に惹かれず、楽しいという感情を持っていなかったからピエロはマイちゃんを引き止められなかったんじゃろ。」

「それじゃあみんなは?みんなはどうなるの?」

「うむ…。皆さんには酷な話を今からせねばなりません…」

そう言って住職は一人一人の顔を見渡した。

親たちは唾を飲み込み、住職の顔を力強く見つめ返した。

住職の話はようするに

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ピエロは4体の人形に自分の力を分離した。

そしてハルナの夢に現れて、みんなに人形を渡すよう指示して

人形の在り処を教えた。

ハルナ⇒目だけの人形

私  ⇒鼻だけの人形

ケンタ⇒口だけの人形

リョウ⇒耳だけの人形

夢の中で子供たちを思う存分遊ばせ、自分を信用させた所でそれぞれに渡した人形の一部をその子から奪う気でいると。

そして自分のパーツが全て揃ったらピエロの邪悪な力は再び復活してしまい、

恐ろしいことになると…。

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「Vダッシュ劇場と言ったんじゃな?ピエロは」

「はい」

「Vダッシュ劇場…部位奪取劇場…小癪な、小馬鹿にしおって…」

いつもにこやかで温厚な住職さんは眉間にシワを寄せ苛立ちを見せた。

ハルナちゃんやケンタ君のお母さんたちは泣き崩れている。

「…ただ、助かるかもしれん方法が一つだけある」

そう言って私を見た住職さん。

「またマイちゃんの力を借りねばならんが…」

「そんな…、ッ!?」

お母さんはきっと、「そんなことさせられない」とでも言いたかったんだろう。

しかし、ハルナちゃん達の身が危険に晒せている今、そんなことは言えずに言葉を呑み込んでお母さんはお父さんにしがみついて声を殺して泣いた。

「時間がない、ピエロがいつ子供たちに手を出すか分からん、マイちゃん、手伝ってくれるかのぅ?」

私の答えは決まっている。

「はい。私は何をしたらいいんですか?」

私の返答に3人の両親と住職は胸をなで下ろした。

お母さんとお父さんは下唇を噛んで小刻みに震えている。

「もう一度夢の中へ行っておくれ、そしてピエロが写ってる鏡を割ってやるのじゃ。

ピエロを鏡に誘導し、必ず写りこんでいる間に鏡を割るのじゃ、出来るかのぅ?」

私はコクンと頷き、時間がないという事で、すぐに寝る用意をしてもらい、

私はもう一度夢の中へ向かった。

お母さんのすすり泣く声を聞きながら…

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「きゃはは!あははは♪」

遠くの方から子供の笑い声が聞こえてきた。

多分ハルナちゃんだ。

戻ってきた…。私は意を決して目をゆっくり開いた。

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「ッッ!?」

目の前に無表情のピエロの顔があり、いきなりの事で私は腰が抜けて尻餅をついた。

それを見てケラケラ笑う仕草をするピエロ。

私が睨むと、手を差し伸べてきた。

私はその手には捕まらず自力で立ち上がった。

ピエロの表情はまた無表情になり、耳を澄ませろとジェスチャーしてきた。

私は言われた通り耳を澄ませた…。

『イヒヒヒヒヒヒヒヒヒ、大切なお友達の俺の事を忘れたのかい?』

ピエロはやはり無表情で口は動かしていない。

「お前なんか友達じゃない…」

私はピエロから目を背けず、真っ直ぐ睨んでそう言った。

ピエロは少し眉をひそめ、

『…よく戻った イヒヒヒ ちょうどお楽しみの時間だよぅ? ギヒヒヒヒ…』

 

正直私の足はもう立ってるのがやっとな位にガクガクで…

心が折れそうだった…。

可愛いアニメ声だけど怖い笑い方…

無表情のピエロの顔…

声は笑っていても顔は無表情…

 

想像してみてください。

無表情だけど笑ってるんです。

普通の人間がそんなことをしても怖いでしょう?

相手がピエロなら尚更なんです…。

『…さぁてぇ、まずはどこからいただこうかなぁ…』

顔をカクンカクンと左右に交互に倒しながら

私に徐々に近づいてくるピエロ…

私は立っているのがやっとだ、

足は動かない…

 

ピエロの顔と私の顔の間はわずか10cm…

『…ギヒヒ、お前は最後だァ、たっぷり恐怖を味あわせ、恐ろしさのあまり顔が歪み、震え上がって泣き叫ぶ姿をみたいからなァアア… ゾクゾク♪ ゾクゾク♪  …ギヒヒヒ』

これが現実ならもはや漏らすレベル…

リアルな夢だけど…

これは夢。

私は下唇を噛み締め、必死に恐怖と戦った。

『キーマッタァ!  耳だァ』

目を見開いてそう言った瞬間ピエロの身体がグワンッと浮き上がり、

もの凄いスピードで飛んでいった。

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「ギャアアアアアア!来ないでぇぇぇえ!怖いよォォオ!嫌だぁああ!」

すぐに叫び声が聞こえた。

「ッ!?リョウ君だ…」

リョウ君は耳だけの人形を持っている…。

声はそんなに遠くない!

私は震えて動かない足を叩き、必死に声がする方を目指して走った。

…ッ!?

「リョウ君ッ!!」

必死に逃げているリョウ君を見つけた。

後ろにはふざけながらリョウ君を追い回すピエロの姿があった。

手にはサバイバルナイフを持っている…。

「うわぁあああ……」

「リョウ君ッ!!」

私はリョウ君達が消えた方に向かった。

「…ひゃッ…嫌……!!」

そこには無残に耳を削がれたリョウ君の姿があった。

リョウ君の前には血だらけのサバイバルナイフを持ったピエロが立っている。

『……聞こえるぞォォォオ  恐怖で震える声がぁぁあ』

頭の中にまたアニメ声が響いた。

そしてゆっくりと私の方に振り向いた…

返り血を浴びて、更に恐怖を駆り立てる姿になったピエロ…

私はその場にペタンと力なく座り込んだ。

『…まだだ まだ足りないよォォ?…ギヒヒヒ』

そう言ってまた顔をカクンカクンと左右に交互に倒しながら無表情で私の方に向かってくる。

『…次はどこがいい?…んー  目かなぁ?……』

そしてピエロの顔は私の顔の目の前でピタッと止まった…

『 ギヒヒ  口だぁぁあ…』

目をグワァッと見開いてまた凄いスピードで飛んでいった。

口…、ケンタ君!?

こんなところでヘタってる場合じゃない…

みんなを守るために戻ってきたのに…

私がこんなんじゃ、みんな殺されちゃう…

私はグッと下唇を噛み締めて…立ち上がりピエロが飛んでいった方に走った。

「うわぁッ!なんだよぉ!!やめろよ!」

!?

ケンタ君の声だ!!

!?

声のする方に向かうと、ケンタ君がピエロに追い詰められている所だった。

「え…?」

ケンタ君の後ろには建物があり、丁度窓を背中にケンタ君は行き詰っていた。

ピエロはケンタ君の正面にいる。

ここから見ると、ケンタ君の背中にある窓にピエロの顔が写りこんでいた…

そのピエロの顔には目も鼻も口もない…

耳は付いている…

異様な姿が映し出されていた…

ピエロが鏡に写りこんでいる間に壊す…

ピエロの顔が完成するまでに壊せば…

みんな助かるかもしれない…

「ケンタ君!逃げてぇええー!」

私の声に気づいたケンタ君は私の方を見て手を伸ばした…。

その瞬間、ピエロがケンタ君に襲いかかり、私の目の前でケンタ君の口をサバイバルナイフで削ぎとった…

「あ、…あぁ、ッ!?いや、…もぅ……やだ…」

私は目の前で起こっている非現実的な光景を見て、気が狂う寸前になっていた…

『イヒヒヒヒヒ  ギヒヒヒヒヒヒ、やぁぁっと戻ってきやがったァァ!俺の声がぁあァァ』

「!?」

さっきまでの頭に響いてくる声とは違い、

直接耳に突き刺さる不気味な気色悪い声…

口を手に入れたからだ。

徐々に力を取り戻しているんだ…。

私は傍に落ちていた石ころを拾い、窓に向かって思いっきり投げた。

カツン ---

「…ちきしょう…ッ!!」

所詮子供が投げた石ころなんかじゃ公共の窓は割れない…

『ギヒヒ、またクソ坊主に悪知恵を吹き込まれやがったなぁぁあ? ギヒヒヒ』

そう言って、更に返り血を浴びて、正面はもはや真っ赤に染まっているピエロ。

自分の身体が尋常じゃないほど震えているのが分かる…

この状況で平然としろと言うのが無理な話だ。

目の前で友達が耳と口を削がれ、

目の前には血だらけのピエロがゆらゆらと身体を揺らしながら立っているのだから…

再び顔をカクンカクンと左右に倒し、

私のもとへ近づいてくる。

「…もぅ、やだぁ、……怖いよぅッ…お母さん…」

私はもう限界だった。

しかしそんなことはピエロには関係ない。

むしろ私が恐怖で震え上がっているのを喜んでいる。

「…マイちゃん?…キャ!!…ケンタ君!?」

私の背後からハルナちゃんの声がした。

振り向くとハルナちゃんはケンタ君の無残な姿を見て

顔を両手で覆ってその場に力なく座り込んでしまった。

「ハルナちゃん!!逃げてーー!」

私の言葉はもはや聞こえていない…。

ハルナちゃんは、ブツブツと何かを言いながらその場を動こうとしなかった。

「私のせいじゃないいもん…私のせいじゃないもん、これは夢なんだよ…そうだ!夢なんだ!あはは」

完全にイっちゃってしまった。

ピエロはニタっと笑ってハルナちゃんのもとに一瞬で飛んでいった。

『ギヒヒヒ コイツ…イっちゃてるなぁああ、笑ってやがる、怖いもん見たからなぁ、でも大丈夫、ピエロさんがもう、怖いの見なくて済むようにしてあげるからねぇ?イヒヒヒ』

そう言って完全に精神崩壊しているハルナちゃんの頭をガシッと掴んで素手で目をくり抜き始めた。

「イヤアアァアアアッ!!ギャァァアア、痛いいイィいい!ギャァァアッ!!」

私はただ、何もできず、

ハルナちゃんから目を逸らし、悲鳴だけを聞いていた。

「!?」

フと、園内の地図と書かれた看板が目に入った。

私の視力は両目とも2.0。

「…鏡の屋敷……?」

今いる場所からそう遠くない場所に『鏡の屋敷』と書かれた建物がある。

私はハルナちゃんに心の中で「ごめん!」

とだけ言って、ピエロにバレないようにそっと鏡の屋敷に向かった。

背中から今もまだ聞こえるハルナちゃんの悲鳴…。

私は少しだけ見えた唯一の希望に全力で向かった。

私の鼻が取られる前に鏡を割れば3人も助かるかもしれない…。

それだけが私を動かす力だった。

「はぁ、はぁ…、鏡の屋敷…」

なんとかピエロに追いつかれる前に屋敷についた。

中に入ると、すぐに全面鏡張りだった。

ここならピエロが現れても……!?

…しまった

鏡に映ったピエロを破壊するなら、全面割らなければいけない…。

それに鏡を割るものなんて持ってきてない…。

『ギヒヒ いいとこ見つけたじゃねえかぁぁあ、だが、お前が全面割る前に俺が先にお前の鼻をもぎ取ってやる』

「!?」

もう追いつかれた…

「ひっ」

私の背後にはピエロの姿が写っている。

鏡に映るピエロの姿は鼻以外、全て揃っている。

『さぁ、どうするぅぅうう?  ギヒヒヒヒヒ』

…考えろ、考えろ私!!

!!

確か入口のところに消火器があったはず…、

私はピエロの隙を見て入口へ走った…。

『チッ』

ピエロの舌打ちが聞こえたがそんなことは気にしている時間はない。

「…あ、あった!」

私はすぐに消火器を持ち上げた…

重い…

何気に重量のあるこの消火器を振り回すのは困難だが、

これしかない…、

ガシャーン ガシャーーン ---

私はすぐに鏡を割り始めた。

「一枚だけ残せば…」

ピエロが来たら一枚だけ割れば済む…

そう考えたからだ。

「いッ、ッッ!?」

上の方から降ってくる鏡の破片が私の身体を切りつけた。

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最後の一枚にする頃には私の血で床が真っ赤に染まった。

『ギヒヒ  賢くなったなぁ、小娘ぇぇえ』

私はフラフラする身体を必死に支え、

消火器を振り上げたままの体勢でピエロの姿が現れるのを待った。

これを失敗したら、もう後はない…。

もう一度、違う通路の鏡を割る力、私には残っていない…。

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「はぁ、はぁ、私はここだよッ!捕まえてみなッ!!」

荒れた息を整えながら、ピエロを挑発する私…。

心臓の音がうるさく聞こえるほど

静まり返ったこの屋敷内…

捕まったら最後…

このチャンスを逃せば後はない…。

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『クソガキャァァ!  めんどくせぇえ事しやがってぇぇええ!』

しびれを切らしたピエロが怒り狂った鬼の形相で暗闇から姿を現した。

「っ!?」

まだだ!!

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!?

すぐにピエロの姿が消えた…

やはり、さっき感じた違和感。

幻覚だ…

本物のピエロはもっと背筋がゾクゾクする程恐ろしい…

『ギヒヒ 気づいたか。』

その後も幻覚と本物を入り混じらせながら何度も私の前に姿を現せたピエロ

!?

ゾクゾク…

いまだッ!!

ガシャーーーン --- 

私は勢いよく残る力全てを込めて鏡に消火器を投げつけた。

『なぜだぁぁああ…なぜわかったぁああ!?ギャァァアァァアアッ』

ピエロの体は、割れた鏡のように散り始めた…

その瞬間、

景色が歪み、徐々に視界が暗くなってきた。

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「…マイッ?マイ!マイ!」

暗闇でお母さんの声が聞こえた…。私を呼ぶ声…

『ギヒヒ  まだ終わってないからなぁああ…』

「きゃああ!!」

暗闇でピエロの声がすぐそばで聞こえて私はすぐに飛び起きた。

ハルナ「マイちゃん!!」

ケンタ「マイ!!」

リョウ「マイ、ありがとう!!」

 私 「…みんなぁ」

私は大粒の涙を流した。

みんな無事だったんだ…

目が覚めたんだ…

「マイちゃん、よく頑張ったのぅ…。怖かったろうに…」

住職が私の手をギュッと握って涙を浮かべてくれた。

「この子ら、目が覚めたとき、リョウ君は耳が聞こえない、ケンタ君は口が利けない、ハルナちゃんは目が見えない状態じゃった…。マイちゃんのうなされている声が止まってからこの子らの目、口、耳は治ったんじゃ…。今回もよう勇敢に戦ってくれたわい」

そう言って住職は深く頷いた。

3人のご両親からも深くお礼を言われた。

ハルナちゃんは住職の言ったとおり、ピエロから人形の場所を教えてもらったらしい。

3人とも夢であった出来事、全て覚えているとか。

無事に儀式も終わり、解散するとき私は住職の元へ駆け寄った。

「まだピエロは存在しています。目が覚める前に声が聞こえたんです」

お母さんやみんなを不安にさせないように、住職にだけ聞こえるように耳打ちをした。

「いやはや、やはりな…、奴を倒すのには時間がかかるわい…マイちゃんや、なにかあったらすぐにおいでなさい…」

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魑魅魍魎様、コメントありがとうございます!
返信が遅れてしまって大変申し訳ありません(´д`|||)
嬉しい言葉の連発に、『ピエロシリーズ』の後編も筆が進みます♪
そしてさりげなく宣伝、またまた感謝致します♪笑

今後も魑魅魍魎様のご期待に添えるような話を作りたいと思いますのでよろしくお願いいたします♪

いやー、このシリーズが1番好きですね!
怖いし映画のような展開や前の作品との繋がり!どれをとっても最高レベルですね!
これは映画などにしたら、凄い売れるの思いますよ!w
みなさん、怖話会員ならこれは読まなければいけまへんよ!w

那奈様、コメントありがとうございます!
『ピエロシリーズ』共々、いつもご閲覧、心から感謝いたしますヽ(;▽;)ノ
そしていつまでも眺めていたくなる心温まるコメント、ありがとうございます♪

そしてご指摘感謝致します!!
本当ですね!すぐに訂正させて頂きました!
まだまだ文章能力が低く、今後も誤字脱字あるかと思いますが、じゃんじゃんご指摘頂ければ幸いですヽ(・∀・)ノ

今後共よろしくお願い致します♪

ピエロシリーズ、とても怖く読ませて頂いております!
今回のもたまりませんね!
情景が頭に浮かび、まるで自分が体験しているかのような…

シリーズ最新作も楽しみにしております!

最後に指摘を少し…
マイちゃんが夢の中へ助けに向かう事を了承したシーンにて『肩をなでおろす』とありますが、正しくは『胸をなでおろす』じゃないかなと…(>_<)
肩から下ろすのは『荷(肩の荷をおろす)』になりますねσ(^_^;)

苦粗矢蝋様、コメントありがとうございます!
なるほど!!確かにその終わり方も怖いですね~。。
 
次回作に取り入れてみようかなと思います(´・ω・`)
貴重なご意見ありがとうございます!

大変参考になりました♪

面白かったですが、個人的には一度削がれた部位は元に戻らないほうがリアリティーあってよかったかなと…
まぁ怖話は自分がハッピーエンドを好まないんで、あまり参考にはなりませんが一つの意見としてコメントさせてもらいます。

彩貴様、コメントありがとうございます!
実は単発で終わらせようと思っておりました。。
 
しかし、まだピエロの話で怖さを追求できる、まだ足りないと思い、私が納得できる作品が書けるまでシリーズ化していこうと決めました。
 
今回の作品でも、まだ足りないと私自身思っておりますので、
こんな私ですが続編を書こうと思っています。

力不足の私ですが、次の作品も面白いと思っていただける様に精進したいと思いますのでよろしくお願いいたします(´・ω・`)

しば子様、コメントありがとうございます!
『ピエロシリーズ』は怖さを追求していこうと思っています!
 
ガ━━(;゚Д゚)━━ン!!

こんな話を読んだらピエロの人形怖いですよね…

続編すごいおもしろかったです!
このさらに後もあるんでしょうか?

本当に怖かったです´д` ;
家にピエロの人形あるんですけど、ちょっとしまおうかな…

死ん様、コメントありがとうございます!
 
嬉しすぎて思わず顔がニンマリしてしまいました(*゚▽゚*)

物凄く励みになる温かいお言葉、感謝致します!
 
また続編を書いてみる予定でございますので、その時も温かいお言葉がいただけるよう精進して頑張りますのでよろしくお願いいたします!

あれほどまでの話の続編が
またここまで凄いとは
恐れ入りました

ダレソカレ様、コメントありがとうございます!
そんなもったいないお言葉…。。

嬉しすぎて悶絶してしまいましたヽ(;▽;)ノ笑
上手く伝わるか不安でしたが、ダレソカレ様のコメントでホッと致しました!
感謝感激です!!
続編、気合入れて頑張りますのでよろしくお願いいたします!

このクオリティの長編の続編とは...。本当に尊敬致します。
更に続きがあると伺ったので、そちらも楽しみにしています。

ローザ様、コメントありがとうございます!
 
やはりありましたか、、誤字。゚(゚´Д`゚)゚。
ご指摘感謝致します!
早速訂正させていただきました。
何度も確認したのですが・・・まだまだですね。
ありがとうございます!

見に覚えのない話✕
身に覚えのない話○

ですね(*^^*)

§綾鷹§様、コメントありがとうございます!
 
ピエロはまだ存在しております…あぁ怖い…(;_;)笑

なるべく早く続きを投稿出来るよう頑張りますので今後もよろしくお願いします(´・ω・`)

続きあるんですか!?めっちゃ気になりますー(≧∇≦)

赤煉瓦様、コメントありがとうございます!
長い話、読んでいただけて感謝です!
今回の作品も赤煉瓦様の欲求を満たす事が出来るか不安でしたが良かったです!
 
続きは早めに出せるように頑張りますので今後もよろしくお願い致します(´・ω・`)

うわぁ~究極のピエロがまた現れた!
しかも、まだ終わってない……
早く、続きをお願いします。