中編6
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吹雪と夜の峠

その年は例年より早く雪が降り、“タイア”をスタッドレスに変えていなかった私は慎重に家路についていた…まぁ、雪国の生まれで雪道は慣れてはいるが…

「ちっ…最悪だ…」

吹雪に近い降り…

こんな時に峠(とうげ)を越えて家に帰らなければならないのか…しかし、それよりも明日の朝が心配だ…

降っている時はそれほど道は滑る心配は少ないが、その降り積もった雪がタイアに踏まれ、溶けて寒さで凍ると厄介なのだ…アイスバーンとなりノーマルタイアでは走行は困難になるからだ。

整備が進みそれなりに広く、昼間は車通りの多い道ではあるが…峠はカーブが多く事故も毎年相次いで起こっている…

私の仕事が終わるのは何時も遅い時間だ。

夜中になれば、峠を走る他の車の数は少ない。

その日も書類の整理などに時間がかかり時刻は深夜の1時を回っていたため、殆ど対向車とすれちがうことがなかった。

ゆっくりとカーブを曲がる…ノーマルタイアである事もさることながら急ハンドルは命取りだ、雪に足を取られれば道路がアイスバーンで無くともタイアが滑り、ガードレールに激突、最悪なら反対車線に飛び出し対向車と正面衝突は避けられない……と…まぁ、深夜で対向車が殆ど無いのは幸いではあるが…

峠の中間あたりまで来ると視界は最悪になって…いや、殆ど前は見えなくなってしまった。

「畜生…何も見えやしない…」

このまま走り続けると危険だと判断し、路肩に車を寄せる。寄せると言っても、視界はよくわからないため、なんと無くの位置まで寄せた。

天気予報では深夜には雪はやむとの予報がでていたため私は小降りになるまでその場所で待つことにした…

………

私はよくその日の様に残業などで、遅い時間に帰宅していた。

なので、時間のせいと言っても大概一台や二台は対向車や他の車を見かけていたが…

その日は全くと言って他の車両は見かけなかった…いや、もしかしたら、私と同様で視界が悪く足止めを食らっている車が居たのかもしれないが…

「チッ…全く…ついてないな…」

吹雪は更に酷くなるいっぽうであった。

………

仕事の疲れか睡魔に襲われる。

時間が遅いのも原因の一つと考えられるが…

しばらくシートを倒し眠ることにした…

……………。

ある音で目が覚める。

(コン…コン…)

窓をコブシで軽く叩く様な音だ…

何だろうと眠い目をこすりながら

窓の外を見やる…

…?

何もいない…

以前として雪は吹雪のごとく降り続け窓に雪が叩きつけられている…

風で何かが当たったのかもしれない…と私はこんな時のために常備していた毛布を頭まで被りまた眠りに着いた…が、また起き上がり天気予報を聴こうとラジオをつけた…

「ザ…ザザ…た…す…けて……ザザザ…」

不気味な声が流れる…

ラジオドラマか?

「助けて欲しいのはこっちの方だよ…」

と周波数を変える…

「ザザザ○…○地方を中心に降…続…てい…雪は…以前…ザ…ふ…続け明日の明け方まで降るもよ…で…ザザ…ザザ…ザーー…ザ…続いてスポーツ情報…す…ザザ…」

「なんだよ!さっきと言ってたことが違うじゃないか!明け方って?参ったな…仕方ない…何とかして帰るか…」

(コン…コン…)

ん?また窓を叩く音がしたので、外を見る…

やはり何もいない…

ラジオは以前なり続けている

「スノーボード世界大会、男子のじょ…報…す…ザザ…ザーーザザッ……た…す…け…て…」

「え?なんだ今の…」

周波数は変えたはずだ…なぜかまた、ラジオのドラマの台詞…いや…まさかな…

また音がする

(コン…コン…)

もう一度窓の外を見る。

真っ暗でもおかしく無い時間ではあるが、降り続いていた雪がだいぶ積もっていたせいなのかぼんやりと明るく外を照らしている。

……………………………何かがぼやりと姿を表す

!!!!っ

「うわぁああああ!!!!」

そこには顔面半分が崩れた血まみれの女性と思しき人が立っている…

口が何かを訴えようと動く…

ラジオドラマの台詞とリンクしているかの様に口が動く…

「ザ…ザザ…た……す……け……ぇ…て……ザザ…」

「ひぃ…!」

すると、それはフッと消えた…

恐怖で身体の震えが止まらない…

「クッ…クソッ…なな…なんだったんだ今の…」

しかし、何と無くヒヤリとする空気が車内を包む…エンジンを切った覚えもないしエアコンもついたままだ。

助手席に気配を感じ…

恐る恐る振り返る……

っっっ!!!!!

先ほど外にいた顔面が欠けた女が座っているではないか!!

私は完全にパニックに陥りシフトのレバーをドライブに入れ急発進!

当然タイアは空回りし進まない

いや、進んだとしても『ソレ』は助手席に居るのだ逃げることなど叶わない!

そんなことは私も馬鹿じゃあるまいし分かっていた。

しかし、この場所にいてはいけない!離れなければ!ということだけが頭を駆け巡っていた。

やっと車が発進したが、助手席を一切見ることができない…

窓の外の視界は先程よりはマシになり道路が見える…

以前…寒気が収まらない…

気配も残っている…

見なければいいのだが、こういう時は何故か目が言うことを聞かない…

助手席に目を向ける…

……

居ない…

居ないよな…?

「はぁ…はぁ…はぁ…たたた…助かった…はぁ…」

息をすることを忘れるほど混乱して居たのか私は大きく息を数回、吸い込んでは吐いて吸い込んでは吐いてを繰り返していた。

しかし、なぜだろう…

寒気と気配が以前残っている…

運転に注意しながら目だけで辺りを見渡す…

異常は見られない…

怖い話でよくある様に後部座席に『ソレ』が!!

みたいなことはないだろうな?と思いながらバックミラーを見る…

後部座席にも先程の女は居ない…

ホッとしてブレーキを踏もうと足をゆっくりレバーに掛ける。

「ダ…メ…」

!!!!?

先程の不気味な声がラジオからでは無く、耳元で聞こえっ!!

ブレーキを踏…っ

踏めない!

足首を何者かがつかんでいる感覚に襲われる!

足元を見る…

「うわぁあああ!!!」

先程の女?

身体が居様な形に折れ曲がり私とブレーキやアクセルの間にグニャリと挟まっている!

「やややや!やめてくれぇぇぇ!」

前方を見るとガードレールが見える!このままでは追突っ!?

いや、突き破って崖の下へ転落してしまう!

必死になってブレーキを踏み込むっ!

すると、女は諦めたのか手を離してくれた。

(ギキーズズズザザーーーー!)

ブレーキは踏むことはできたが、雪のせいでスリップし車は大きくスピンしながらガードレールに向かって行く!

(ドキャガガガッ!!!)

…………

「と…止まった…?」

ボンッ!!とエアバックが今頃ながら開く

ビクッと体を震わしたが、状況をすぐ呑み込み

「ここ…このオ…オンボロエアバックが…今頃開きやがって…」と安堵した。

…………

仕方なく電話で警察に連絡を取り事故処理をした…

本当の事を話しても信じては貰えないだろうと警察には「スリップをしてしまい」と話した…

しかし、一体なんだったのだろうか…あの女性は…

あとで調べたが、その近辺ではあまりに事故が多すぎるため、あの女性については知ることはできなかった…

後日、事故をした場所に細やかではあるが花と線香を手向けた…

。。。。。。

あの事故から十数年立ったが、未だに雪が降り始める時期になるとあの日のことが頭をかすめるのだ。

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upa様、コメントありがとうございます。今はあの頃の峠道はあまり通らなくなったのですが、私も今でも夜運転するのが怖いです

夜、車を運転するのが怖くなりました・・・
足回りとか見れないですー。。涙

匿名様 ご指摘ありがとうございます。タイヤですね…
忙しかったりしてタイヤ交換が遅れることってありませんか?あの時、雪の降るのがあまりに急だったためノーマルでした…今年もやけに早い積雪でしたので投稿しました。